中国のZ世代は、潮玩市場を創造、シェアエコノミー、ファストフードを好む“新人類”?

高野悠介    2021年2月19日(金) 16時20分

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中国で世代を表す最初の表現は“80后”だった。日本の“新人類”同様、世代間ギャップの象徴として登場した。資料写真。

中国で世代を表す最初の表現は“80后”(1980年代生まれ)だった。日本の“新人類”同様、世代間ギャップの象徴として登場した。その後90后、00后と続き、○○后という言い方はすっかり定着した。一方世界共通の、千禧一代(ミレ二アル世代)、Z世代も並行して使われている。このほど調査機関iiMediaは、Z世代の消費動向分析を行った。その内容は示唆に富み、未来の中国を考えるヒントになっている。以下、具体的に見ていこう。

■Z世代消費の特徴…精神的充足を求める

・実体商品消費から精神的な消費へ

Z世代とは、1995~2009年生まれの約1億5000万人を指す。彼らは貧しさを経験していない、デジタルネイティブだ。そして通常、既存の権威を恐れず、社交と自我実現を望む。月間の可処分所得は中国平均より50%近く高い。特徴は以下の3点。

1、SNSによる社交を“偏愛”する…特定の製品を推奨して、シェアし、他人の購入意欲を刺激する“種草”文化、シェアエコノミーなどを好む。消費とは社交のための“貨幣”と捉えている。

2、精神的充足感が重要…精神的価値が実体消費の駆動力となっている。感情移入できる商品、例えば、スター周辺のファン行動やフィギュアなど。

3、顔値(美顔レート)は高いほどよい…顔値の追求は正義。顔値を上げるためのあらゆる消費は正しい。

以下、彼らの行動ぶりを市場別に見ていこう。

■潮玩市場…Z世代が作り出した新市場

・潮玩市場は転変を繰り返す

Z世代の創造した潮玩市場、その潮玩とは何か?おもちゃと芸術作品の間、芸術性と設計思想が消費者の希望に沿う実体を指す。一緒に外出し、写真を撮りSNSにアップする。自ら個性と生活スタイルを体現する存在だ。そこには独特の美学があり、収蔵性もある。それらを行為まで含め“潮玩”と呼ぶ。具体的には、フィギュアだけでなく、Eスポーツ、コスプレ、盲盒(福袋またはガチャ)などの関連商品を含めることが多い。さらにこの概念は環境により、細かく転変していく。要するに若者が開拓した新消費市場である。

市場は急成長している。2017年の83億8000万元(約1400億円)から、2020年には294億8000万元(約4800億円)に伸びた。2023年には約2倍の574億6000万元(約9300億円)になると予想されている。

そして市場シェアの40%をZ世代が占めている。いくらまでなら使いますか?というアンケートには、23.6%の人が500元(約8100円)以上の出費をいとわない、と答えている。

■シェアエコノミー市場…環境負荷を考慮

・外出は配車アプリなど、シェアエコノミーを積極利用

中国では2012年、配車アプリ(ライドシェア)の登場以来、2010年代を通して、タクシー業界、規制当局と三つ巴の激しい攻防戦が展開された。現在、役割分担はほぼ決着し、落ち着きを見せている。

Z世代は、消費にこだわるうるさ型イメージとは異なり、移動手段に関しては、新しいシェアエコノミーを積極的に受け入れる。実際、配車アプリを他の世代より高い頻度で使用している。Z世代は環境意識の高いことも一因とみられる。iiMediaの調査では毎日1回以上利用するヘビーユーザーが8.8%、毎週3回から6回利用する準ヘビーユーザーが23.6%、毎週1~2回が19.2%、必要な時だけ48.5%となっている。

またZ世代は、運賃の値上がりをすんなり受け入れやすい、という特徴もある。5元(約80円)以内の値上がりなら41.2%、6~15元(約100~240円)高くなっても、39.7%は受け入れると答えた。値段交渉を生きがいにしてきた中高年世代とは、明らかに変わっている。

■ファストフード市場…Z世代の購入頻度は高い

・便利な生活の象徴、スナックやファストフード

Z世代がインスタント食品、スナック、ファストフードを買う頻度は、いつも買っている37.3%、ときどき買う52.1%、不定期8.5%、まったく買わない2.1%だった。

これらの食品を買う理由は次の通り(複数回答)

新しいものに対する興味 57.4%

購入が便利       47.9%

品質          39.4%

口コミ         37.2%

ブランド知名度     35.1%

産地          31.9%

価格          30.9%

安全性         28.7%

栄養          23.4%

■Z世代…消費の主力へ前進

・未来消費の導き手

Z世代の消費コンセプトと消費習慣が明らかとなってきた。彼らは未来消費市場の導き手である。ますます多くの企業やブランドが、ここへ焦点を合わせるに違いない。

iiMediaのアナリストは「消費者こそ市場の中心テーマであり、その立体的研究が、市場シェアの確保、営業成功のカギ」という。

そのために、「Z世代をはじめ、高齢者、大学生、母親グループ、新しい父親グループなど、複数のグループの形成過程や消費行動を研究し、市場分析の基礎を提供したい」と語っている。

いずれにしろ1億5000万人のZ世代が、消費の主力へ躍り出ようとしている。彼らは従来の中高年とはかけ離れた価値観を市場へ持ち込んだ。西欧的生活スタイルを送る一方で、国産品への信頼を強めている。中高年は、中国的生活スタイルながら国産品に信頼を置かない。中国Z世代は“新人類”でまちがいなく、互いの感性はあらゆる面で衝突している。今後は、中国人イメージを、ひとくくりに表現するのは難しく、付き合い方もより困難を増しそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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