<直言!日本と世界の未来>厳寒下、最高齢大統領の力強い演説に感銘―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年1月24日(日) 6時30分

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民主党のバイデン氏が第46代大統領に就任した。地球規模の緒課題は、米国抜きでは解決できない。新型コロナのワクチン供給や核軍縮の交渉でも米国の責任は重いと思う。写真は米議事堂。

民主党のバイデン氏が第46代大統領に就任した。78歳という史上最高齢でのスタートだが、長寿社会の中で年齢は関係ない。重要なのは実際の年齢より健康年齢である。就任式の一部始終をテレビ中継で観たが、厳寒の外気の中で力強く演説する姿に励まされた。副大統領には初の女性・黒人・アジア系のハリス氏が就いたことも好ましい。

ただ連邦議会議事堂周辺は閑散とし、パレードを見守る観衆は皆無。熱気にあふれたこれまでの就任式の光景からはほど遠かった。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、1月6日の議事堂乱入事件で行事は大幅に縮小された。2万5000人といわれる州兵が市中を警戒し、さながら戒厳令下のようだった。

就任式にはトランプ前大統領の姿はなかった。就任式を欠席した大統領は南北戦争後の1869年のアンドリュー・ジョンソン以来というから驚きを禁じ得なかった。

トランプ氏の「米国を再び偉大に」をスローガンにした政策は移民や難民を排斥し、差別を助長。民主的で寛容な社会に深い分裂を招いた。「米国ファースト」の下、国際社会の利害を顧みない独りよがりな外交でひたすら自国の利益を追求したが、逆に米国の分断と衰退を加速させたと思う。コロナ感染リスクを軽視した結果、全米の死者が40万人を超えた。

バイデン氏は「分断ではなく団結を」と就任演説で再三強調した。「団結しなければ平和はなく、恨みと怒りがあるだけだ」と述べ、危機へのチャレンジをアピールした。

しかし団結を追求するバイデン大統領の行く手は険しい。企業が潤えば従業員もやがて恩恵を受けるという長年の経済政策はほころび、グローバル化による産業空洞化で困窮した。 富を独占する富裕層と時代に取り残された中間層の格差は数百倍に達するという。こうした不満がトランプ氏を大統領に押し上げ、昨年11月の選挙で過半に近い7400万票を獲得した背景となった。

筆者は1970年代後半から~1980年代にかけて、立石電機(現オムロン)の海外担当として米国に度々出張、長期滞在したほか、日米の政財界人が参加した会議にも出席した。当時米国では、産業人も文化人も一般市民も明るく協力的だった。あの頃の米国は世界一の超大国として光り輝いていた。バイデン政権が国際協調と経済的な繁栄を取り戻し、民主主義の主導国として真価を発揮するよう期待したい。

就任式でバイデン大統領は連邦施設でのマスク着用の徹底を呼びかけた。すぐに気候変動対策のパリ協定復帰の大統領令などに署名。世界保健機構(WHO)にとどまることを表明した。

地球規模の緒課題は、米国抜きでは解決できない。新型コロナのワクチン供給や核軍縮の交渉でも米国の責任は重い。前政権が拒んできた国際協調も重要である。日本としても積極的に連携し、国際秩序の立て直しの一翼を担うよう期待したい。

<直言篇147>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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