<パンデミック感染症対策の課題>ワクチン接種で考えたこと―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年6月6日(日) 6時20分

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典型的な高齢者である私にも、コロナ・ワクチン接種の番が回ってきて、何とか済ませた。心なしかコロナに打ち勝てるような気になるから不思議だ。写真は新型コロナPCR検査センター新橋店。

新型コロナの流行を収束させ、日常を取り戻すうえで、鍵を握るのがワクチンの普及である。 典型的な高齢者である私にもワクチン接種の番が回ってきて、何とか済ませた。心なしかコロナに打ち勝てるような気になるから不思議だ。

国内で新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した人は、現時点で1164万人を超えたという。1日あたりの接種回数は約53万回で、ペースは1週間で1割強アップしたとされるが、世界先進国の水準にはなお遠いようだ。

この半年余り、欧米など先進国で新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化。普及が進むイスラエルや米国などでコロナ禍以前の生活が戻りつつある一方、供給不足に直面する国では依然として感染拡大が続き活動が制限されるなど、ワクチンをめぐる格差が広がっているという。

英オックスフォード大研究者らのデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」の集計によると、6月2日時点で世界全体の接種回数は累計20億回を超えた。少なくとも1回の接種を受けた人の割合は、主な国別に、イスラエル(63%)、カナダ(58.97%)、英国(58.31%)、米国(50.45%)など。日本は8.69%で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の中で最も低い。接種ペースを上げるために、国、地方自治体、民間企業が総力を挙げて取り組んでいるが、さらなる接種拡大を期待したい。

地域別では北米が37.62%、欧州は32.36%だが、アフリカは1.87%にとどまる。世界保健機関(WHO)は、アフリカ全体の感染者数が増加傾向にあるとして、接種が進んでいる国に対し、「ワクチンを供与し、アフリカの最も弱い人々が重症になるのを防いでほしい」と呼び掛けている。

こうした中、政府はワクチンの国家戦略を策定した。次の感染症のパンデミック(世界的大流行)に備え、外交・安全保障の観点からも、国産ワクチンを速やかに実現できる開発・生産体制を築くという。

感染症の大流行は国民の命や健康を脅かすだけでなく、経済や社会に大きなリスクとなることがコロナ禍で判明した。ところが国産ワクチンはまだ実現していない。ノーベル賞級の研究者を多く輩出している科学立国・日本として残念なことである。

ワクチンの開発・生産体制が一般の治療薬と同じだと実用化で後れをとってしまうとされる。今回、海外製ワクチンを導入する際にも国内での治験にこだわり、審査・承認が長引いたという。国家戦略では柱の一つに薬事承認プロセスの迅速化が盛り込まれた。法改正など制度改革に早急に着手してほしい。

今回の国家戦略では世界最高レベルのワクチン研究開発拠点の整備も掲げられたが、当然のことであろう。大学や研究機関が持つ研究成果やバイオ技術を調べ、産官学が一体になって実用化につなげる仕組みこそが重要といえよう。

生産を担う製薬業界の協力も欠かせない。ワクチンは薬価制度の枠外で企業にとって投資リスクが大きい。米国や英国が実施したように国が買い上げを約束し、開発段階から資金を支援する手法が参考になろう。

<直言篇160>

■筆者プロフィール:立石信雄 1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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