内藤 康行 2022年1月31日(月) 20時0分
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中国環境部科学技術財務司と中国環境保護産業協会が共同で作成した「中国環境保護産業の状況報告書(2021年)」が発表された。資料写真。
中国環境保護産業協会と中国環境ニュースが共催するニュースメディアシンポジウムが17日に開催され、同会議では中国環境部科学技術財務司と中国環境保護産業協会が共同で作成した「中国環境保護産業の状況報告書(2021年)」を発表した。2017年から毎年報告しているレポートである。同レポートのデータは、生態環境部から委託を受け中国環境保護産業協会が2020年度全国環境保護産業重点企業調査と全国環境サービス業財務統計を実施し、得られたもので、サンプリングは約1万6000社の環境保護企業となっている。
1.生態環境保護産業の全体規模は拡大基調を維持、国民経済と雇用に一定の貢献
統計によると、2020年の全国生態環境保護産業(環境整備)の営業収入は約1兆9500億元(約35兆1300億円)で、2019年比で約7.3%増加、そのうち環境サービスの営業収入は約1兆2000億元(約21兆6000億円)で、前年同期比で約9.7%増となった。統計には、水、大気、固形廃棄物、モニタリング、騒音分野における環境保護営業収入は前年比でそれぞれ7.4%、2.3%、10.0%、6.9%、9.1%増加し、土壌修復分野における環境保護営業利益は前年比で4.8%減少した。
2020年の全国環境管理営業総収入はGDP比で1.9%を占め、2011年に比べて1.14ポイント増加、国民経済への直接貢献率は4.5%となり、2011年に比べて3.35ポイント増加した。生態環境保護業界に従事する人員は約320万人で国内の総従業員数の0.43%を占めており、2011年比で0.31ポイント増となった。昨年の統計はまだないが、予測として2021年には、環境整備営業利益規模は約2兆2000億元(約39兆6000億円)に達するとしている。「第14次5カ年計画」期間中、年平均成長率は約10%を維持し、2025年には環境整備営業収入は3兆元(約54兆円)を突破するとみられている。
2.パンデミックなどの影響で2020年は生態環境保護産業の成長率が大幅に低下、収益も小幅に低下
「第13次5カ年計画」期間中、中国の環境整備営業収入の年平均成長率は約14.0%で、このうち2016年から2018年までの前年比成長率は約18.0%と比較的安定していた。2019年以降、レバレッジ引き締めと新型コロナの流行で、収益の伸びは前年比で減少し続け、2020年に初めて1桁(10%未満)に低下した。2020年には、環境保護企業の収益は小幅に低下したが、資産運用能力は基本的に安定しており、企業の財務リスクは全体的に妥当な範囲内にあるものの、支払いや投資回収の問題は依然として突出している。
3.中国の環境保護企業は依然として中小企業が支えており、産業の集中度は低く、中小企業のリスク対策能力は劣っている
2020年の統計に含まれる企業のうち、中小企業が72.9%、大中型企業がそれぞれ3.1%、24.0%を占めている。その中で、大型企業は業界の営業収入と営業利益の80%以上を占めている。大中型企業の営業収入と利益は前年比で増加を維持したが、中小企業はともに減少傾向にあり、企業規模が小さいほど減少は大きくなっている。これは、中国の環境保護企業が依然として中小企業が主体で、産業の集中度が低いことを反映している。大中型企業と比べ、中小企業は新型コロナの流行と経済変動の影響を大きく受けている。
4.産業技術イノベーション力と技術レベルの継続的改善は汚染との攻防に重要な支援を提供
2020年、環境保護企業の平均研究開発費は前年比で16.8%増加し、研究開発費は営業利益の3.2%を占め、一定規模を超える産業企業の研究開発費の割合は営業収入を上回った(2020年(1.41%)。中でも、環境モニタリング分野の研究開発費が営業利益に占める割合が最多で、6.7%に達している。研究開発要員数は従業員数の17.1%を占め、前年比0.6%増加した。企業が獲得した平均特許件数は、2019年の4.5件から4.8件に増加した。
中国の環境保護技術と設備のレベルは継続的に改善されており、電気除塵装置、バッグフィルター、脱硫、脱硝などのガス処理技術は国際レベルに達している。都市汚水と従来の工業廃水処理は、すでにさまざまな成熟したプロセス技術と設備を組合したプラント化を形成している。汚水の高度処理、VOCs整備、固形廃棄物処理と資源化、および土壌修復分野における技術設備のレベルは急速に改善された。環境モニタリング技術は自動化、プラント化、インテリジェンス、立体化、および正確な監視サポートが確立しつつある。
5.華東地区の産業集積度は高く、華北、華中、華南各地区の産業収益が鮮明
統計によると、企業の約45%が華東地区に集中し、中国の環境保護収入の38%を占め、従業員は37%を占める。次点は華南地区で、企業数の14%が環境保護収入の18%、従業員の19%を占める。華北、華中、華南地区の1人当たり営業収入は、全国平均(105万2000元(約1895円)/人)を上回っている。華東、西南、西北、東北地区は全国平均よりも低くなっている。2020年のデータによると、広東、北京、湖北、浙江、江蘇、山東の6省・市の企業の営業総収入は1000億元(約1兆8000億円)を超え、6省・市の環境保護企業の総収入を占めている。全国の約3分の2を超える。長江経済ベルトの11省・市は、企業数の36.7%で、業界の収益のほぼ半分を占める。
6.4つの突出する課題が生態環境保護産業の質の高い発展を制約
一、環境保護プロジェクトは自身による造血能力が低く、政府の投資に過度に依存しており、環境整備のニーズを産業市場に転換することは困難。
二、価格と料金のメカニズムが不完全で、投資回収メカニズムが未整備か不完全のため、社会資本と金融機関の参画を難しくしている。
三、独立したイノベーション力はあまり強くない。基礎性、独創性、破壊的な技術革新が欠いている。ごみ浸出水処理、高塩工業廃水処理分野および一部の主要機器、機能材料、コアコンポーネント、ハイエンドの機器や計器などの技術力等が欠如している。
四、業界の集中度が低く、市場の標準化を強化する必要がある。
■筆者プロフィール:内藤 康行
1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。
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