<接待問題>改めて問われる「政と官」の関係―立石信雄元オムロン会長

立石信雄    2021年2月28日(日) 5時30分

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官僚が利害関係者から接待を受ける不祥事が相次いでいる。20年ほど前に決別したはずの行政と業界の癒着の構図。総務省と農林水産省の幹部らが、国家公務員倫理規程違反で処分を受けた。写真は東京。

官僚が利害関係者から接待を受ける不祥事が相次いでいる。20年ほど前に決別したはずの行政と業界の癒着の構図。総務省と農林水産省の幹部らが、国家公務員倫理規程違反で処分を受けた。許認可権を握る省庁の幹部と関係業者の旧態依然とした馴れ合いに驚く。

総務省は、放送事業会社「東北新社」の幹部である菅義偉首相の長男らから接待を受けていたトップ級高級官僚11人を処分した。山田真貴子内閣広報官も同省総務審議官時代に、長男らとの会食で7万円超の接待を受けていたという。

農水省は鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループを巡る汚職事件に関連し、事務次官ら6人を処分した。当時の吉川貴盛農相に誘われ、アキタ側から接待を受けたとされる。吉川氏は自民党総裁選で菅首相の選対幹部を務め、首相の側近という。

近年、官僚は首相官邸の意向をうかがう傾向が強く、国民を向いて仕事をするという基本を踏み外していると思う。「政と官」の関係が歪められているとの厳しい見方もあるようだ。

国家公務員倫理規程は、1998年の旧大蔵省の接待汚職を契機に作られた。当時は官僚側の驕りが原因だったが、最近は政治への過度な恐れや従属が背景にあるのではないだろうか。国家公務員倫理法は旧大蔵省の接待汚職などを契機に2000年に施行された。倫理規程は利害関係者による接待、ゴルフ、旅行、金品の贈与などを原則禁止する。政府はルールを逸脱した事例が他にないかどうかを徹底調査し、再発防止策を講じる責任があろう。

筆者も関わった経団連ではかねて「公正かつ自由な市場経済の下、民主導による豊かで活力ある社会を実現するためには、企業が高い倫理観と責任感をもって行動し、社会から信頼と共感を得る必要がある」と提唱してきた。1991年に企業行動憲章を制定し、企業の責任ある行動原則を定めた。この中で「公正な事業慣行」との項目を立て、「公正かつ自由な競争ならびに適正な取引、責任ある調達を行い、政治、行政との健全な関係を保つ」と謳っている。企業側としても、利害関係者として監督官庁への接待はご法度。政策提言や要望は公正かつオープンの場で行われなければならないのは大前提である。

問題を起こした省庁や企業が責任を問われるのは当然だが、単なる官民スキャンダルに終わらせてはならないと考える。

<直言篇152>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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