<直言!日本と世界の未来>残念な東証システム障害、再発防止に万全を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年10月4日(日) 7時0分

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東京証券取引所の売買が、システムトラブルで丸一日止まるという異例の事態が起きた。資本市場の心臓部ともいえる取引所の障害による影響は甚大。原因究明と再発防止に総力を挙げてほしい。写真は東証。

東京証券取引所の売買が、システムトラブルで丸一日止まるという異例の事態が起きた。資本市場の心臓部ともいえる証券取引所で全銘柄が終日取引できず、全ての銘柄で値がつかなかった。上場企業の経営者として長年東証に深く関わってきただけに、私にとって残念な出来事だった。原因究明と再発防止に努め、取引の空白を長引かせないための仕組みに改善の余地がないか、検討する必要がある。

今回の事態は市場の信頼性を損ない、国際的な取引所間の競争における評価にも疑問符が付きかねない。取引所は市場経済のインフラであり、上場企業に適切な行動や情報開示を求める立場にもある。根本原因はまだ分かっていないというが、原因を早期に特定する必要がある。さらに、一部の機器の故障が終日の売買停止につながったことの検証も求められる。

本来、1つのシステムが動かなくても、別のバックアップシステムが補う仕組みが用意されているはずだが、なぜ今回それが機能しなかったのか不可解である。

具体的な調査や再発防止を着実に進めると同時に、丁寧な説明を通じて信用を取り戻してもらいたい。その上で責任を明確にし、2度とこうした事態を招かぬよう再発防止策を作り、万全を期してほしい。

東証のシステムダウンの影響は甚大である。システム全体の設計や、市場参加者も含めた運用方法などを改めて点検する機会にすべきだろう。売買停止により、個人投資家のほか、年金など巨額の資金を動かす機関投資家まですべての市場参加者が取引する機会を奪われた。いまや東証の日本株売買の3分の2を海外投資家が占めており、影響は世界に及んだ。

株式などの価格形成が公正になされ、円滑に流通する市場であってこそ、安心して取引できる。同時に取引の高度化・高速化へシステム対応の要請も強まる一方だ。東京はロンドン、ニューヨークと並ぶ世界有数の「国際金融センター」を目標としているが、根本的なインフラに不安を残すようではその道はおぼつかない。

<直言篇134>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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