<直言!日本と世界の未来>次期政権、「IT後進国」脱却へ成長戦略を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年9月13日(日) 8時20分

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第2次安倍晋三政権の後を受けて、間もなく新政権がスタートする。次期政権にはアベノミクス「第3の矢・成長戦略」に向けた抜本的構造改革を期待したい。写真は東京・丸の内。

7年8カ月に及んだ第2次安倍晋三政権の後を受けて、間もなく新政権がスタートする。次期総理につながる自民党総裁選では石破茂元幹事長、菅義偉官房長、岸田文雄政調会長の3候補がテレビ出演や日本記者クラブ討論会舌戦を展開している。「アベノミクスの継承」を掲げる菅氏が多くの党内派閥の支持を得て有力という。

アベノミクスは異次元の金融緩和と積極的な財政政策が二枚看板だが、これだけではコロナ禍で疲弊した経済再興は難しい。アベノミクスでほとんど進展しなかった「第3の矢・成長戦略」に向けた抜本的構造改革が急務である。

日本の労働生産性は主要7カ国(G7)で最も低く、米国と比べると約6割の水準にとどまる。経済協力開発機構(OECD)加盟国36カ国中でも21位と低迷する。生産性向上は待ったなしの課題である。

菅氏は、新型コロナウイルスへの対応で遅れが明らかになったデジタル分野の強化が最優先課題と位置付け、「デジタル庁」の創設を検討している。IT(情報技術)行政の担当が内閣府や経済産業省、総務省などに分かれているため、迅速に対応しにくいのは事実。雇用調整助成金のオンライン申請など多くの分野で不具合が続出。医療や教育でもオンライン化の遅れが目立ち、日本はIT後進国ぶりを露呈した。

行政機関をはじめデジタル化の遅れを放置すれば、社会全体の足を引っ張り、経済成長の制約要因となりかねず、米中がデジタル覇権を争う世界からも大きく劣後してしまう。デジタル庁は各省にまたがるデジタル部局を集約する。予算も一括計上でき、各省のシステム規格も統一しやすくなる。さらに、コロナ収束までの時限的措置として特例的に措置しているオンライン診療も恒久化することも実現してほしい。

目下の最優先課題であるコロナ対策では、感染拡大の防止などに、政治がしっかりと責任を持つことも重要だ。雇用維持や事業継続などで今後も躊躇なく対策を講じる必要がある。最低賃金の引き上げや不妊治療の支援拡大など社会保障制度の改革に取り組み、再度の雇用調整助成金などで雇用確保に総力を挙げるべきだ。

さらに中小企業対策も目玉政策としてほしい。日本の中小企業は現在、小規模事業者を含め約358万社あり、企業全体の99・7%を占める。中小企業白書によると従業員1人あたりの付加価値額を示す「労働生産性」の中央値は大企業の585万円に比べ、中規模企業は326万円、小規模企業は174万円にとどまる。

少子高齢化により労働力はこの先、急速に低下する見通しだ。中小企業をテコ入れしなければ「地方の再生」といった目標も実現が難しくなる。合併などで企業規模を大きくすれば経営の効率化や生産性の向上、研究開発や投資の拡大などが図りやすくなる。中小企業であることで税制優遇や補助金などが受けやすい面もある。

菅氏は国の基本理念に「自助・共助・公助」を掲げる。「自分でできることはまず自分でやる。地域や自治体が助け合い、その上で政府が責任をもって対応する」と説明した。従来型の仕事でも、都市機能を分散し、地方を活性化すれば、大都市から地方に雇用機会が広がる可能性がある。

安倍政権の経済政策は金融緩和と積極財政に傾斜し、アベノミクス「第3の矢」である成長戦略はめぼしい成果がなかった。次期政権には、規制改革や構造改革など抜本的な成長対策を断行してほしい。

2030年、75歳以上人口は2278万人とピークを迎える。15年より4割も増え、医療や介護費の増加は確実だ。一方で、国・地方の借金残高は2020年度末の予測で対GDP(国内総生産)比216.4%。過去に200%を超えたのは第二次世界大戦末期だけというから深刻だ。巨額債務を前に、経済成長と財政支出の伸びを抑えながら、地道に「異次元の世界」から脱却し、「成長戦略につながる抜本的構造改革」を断行するしかない。

<直言篇131>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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