<コラム>中国企業が日本語教師に求める人材像から学べる教訓

大串 富史    2020年9月9日(水) 22時40分

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写真は2019年末に開催された早道ネットスクール主催の「第1回中日日本語オンライン教育交流会」。このご時世、中国の企業に雇われて日本でリモートワークをするという選択肢もまた確かに存在する。

「とにかく仕事だけはしなきゃなるまい」。全世界を席巻したコロナ禍における僕らの共通の関心事は、このご時世、一体どんな仕事にありつけるのか?ではなかろうか。幸いなことに、グローバル化とリモートワーク化が容赦なく進む昨今、選択肢はむしろ以前より多い。

たとえばの話だが、中国の企業に雇われて日本語教師のリモートワークをする、という選択肢もある。

待ったちょーっと待った!「お断りします」と仰る前に、まあ、まずは座して少し考えてみるのはどうか。

第一に、これまでのように仕事をしようとすれば、どんな仕事であれ大なり小なり感染リスクがある。次いで、そもそもこれまでのように仕事をして同程度の収入を維持すること自体がどんどん難しくなっている。第三に、日本は既に政府が音頭を取ってインバウンドをしなければならないほど、海外資本に依存している。第四に、コロナ禍はまだまだ終結しそうにない…

もちろん、僕たちは自分で自分を追い詰めようとしているのでは決してない。ただ思うに、コロナ禍を生き残るには、やはり新たな視点が必要なのだろう。

ここで言う新たな視点とは、日本人として外国のごくごく一般的な企業に雇われてリモートワークをする、という視点である。

改めて断っておくが、海外の有名企業からヘッドハンティングされてキャリアのギリギリまでジャーンプ!とか、海外転職して日本とおさらば!とか、そんな話ではない。

ただ、外国の人々が日本へ出稼ぎに来ているのと同じように、日本の僕らがリモートワークで海外にバーチャルな「出稼ぎ」ができるかどうかを視野に入れる、という話に過ぎない。

そんな時代になったのか、と正直僕も思う。そしてこう言ってはなんだが、「日本企業が外国人に求める人材像」については即答できても、「外国企業が日本人に求める人材像」で答えに窮してしまうとすれば、それって人として、ライフ値が実はそれほど高くないことを意味してはいないか。

そのようなわけで今回、日本人をオンライン日本語教師として雇っている某中国企業へのインタビューを敢行した。ご自身のライフ値の確認の一助になれば幸いである。

#以下は新型コロナ予防対策の一環として採用した、リモートインタビューの一部である。ご了承いただきたい。

――最初にお名前とポジションまた会社について少しご紹介ください。

楊海斌(ようかいひん)と申します。早道(はやみち)教育科技の総経理をしています。早道教育科技はインターネットを使った日本語教育(日本名:早道ネットスクール、以下、早道)のスタートアップで、日本でも「早道教育科技(中国)ネットで日本語教育: 日本経済新聞」という記事の中でご紹介いただきました。

――では、貴社は日本人を日本語教師として雇用するほか、日本向けにどのようなサービスを提供していますか?

早道では今のところ個別オンライン日本語レッスンのほか、多人数レッスン、日本留学、研修生派遣(日本企業との提携)など、日本の大学や企業および中国側の学生のサポートをしており、日本側の受け入れ先も引き続き募集中です。

――ですが、コロナ禍は中国でもまだ完全には収束していないと聞いています。中国での日本語学習のニーズにも影響があるのでは?

(コロナ禍に伴う)大きな影響というのは実のところあまりないですね。早道への中国側の学生からの問い合わせはいまだに多く、これは一つには早道が中国国内で(広告などにより)相応の認知と地歩を得ているからでしょう。もう一つの要素は早道が(コロナ禍以前から)提供する(中国全土に展開中の)オンライン教育という強味です。コロナ禍により中国側の学生はむしろ以前より積極的にオンライン教育を受け入れており、この集客の徹底とオンラインという強みにより、コロナ禍の影響は相殺されていると感じます。

中国の日本語学習者は500万人規模だと言われていますが、早道が提供する発音や単語を学べるアプリの無料会員は(華僑などを含む)世界的にはすでに累計約1300万回ものダウンロード総数に達しているんです。結果として、日本語のネット授業を受ける有料会員との合計会員数は現時点で中国2位になりました。約300人の中国人スタッフによる電話営業をかけており、3年後には有料会員を延べ1000万人まで伸ばして中国トップになることを目標にしています。

――なるほど。それでは早速ですが、貴社で求めている日本語教師像はどのようなものですか?

私たちは日本人の日本語教師の皆さんが、日本語を学んでいる中国人の学生たちに対して熱心で辛抱強く、責任感を持っていただきたいと強く希望しています。そして当然のことながら、教師としての豊富な経験を持ち、中国語を話すことができ、さらに日本語教育能力検定試験合格者また日本語教師養成講座(420時間)修了者であれば、さらに歓迎されています。

――率直に言って、日本人を雇うメリットとデメリットはどのようなものですか?

私が思うに、日本人の日本語教師の皆さんはとても責任感があり、かつ真面目で信頼できる。これは大きなメリットです。とはいえ日中の文化や習慣の違いのため、日本人とのコミュニケーションには往々にして中国人同士のコミュニケーション以上のより多くの労力が求められる。もっとも、これは仕方のないことではありますが。お互いのコミュニケーションは非常に重要ですから。

――最後に、中国企業で働く日本人に特にこれは気を付けてほしいと思うことがあれば、お願いします。

これだけはという話であれば、中国企業での仕事には大きな変化がつきものだ、ということです。中国で会社が発展するには、社則も仕事内容も何もかもが、恐らくは常に変化しなければならない。日本人はどちらかというと保守的で変化を望まず、中国の会社が絶えず変化を求められるということが理解しにくいかもしれない。ですのでこの点での心の準備をする必要があるでしょう。

「なんだ、思ってたより敷居が低いみたい」と思われたなら、あなたは中国企業が日本語教師に求める人材像にかなりの程度マッチングしている可能性が高い。つまりあなたは海外というステージでのライフ値がそれなり高いわけで、日本語教師はもとより、その方向に求職のターゲットを広げればいい。

一方で「なんだか難しそう」と感じられたのであれば、「テレワークで仕事ができない人は、もともと仕事ができていなかった | 日刊SPA!」というニュース記事の中で、600社以上のリモートワークをサポートしてきた株式会社クロスリバーの越川慎司氏による「これまで愛想や努力などでごまかしていた方々は、リモートワークでも周囲を巻き込むなど能力の出し方を身につけるべきです」との一言をご紹介したい。つまり日本というステージにとどまったとしても、今後は決して楽ではないのである。

では、中国企業が日本語教師に求める人材像から学べる教訓とは何か。このご時世、中国の企業に雇われて日本でリモートワークをするという選択肢もまた確かに存在する、ということにほかならない。

海外ステージ向けな人もそうでない人も、まず座って費用を計算しさえすれば、必要な代価はおのずと明らかになり、家族共々生き残るべく己が行くべき道もはっきりする。そう、こんなご時世でも、誰も決して座して死を待つ必要はない。

■筆者プロフィール:大串 富史

本業はITなんでも屋なフリーライター。各種メディアでゴーストライターをするかたわら、中国・北京に8年間、中国・青島に3年間滞在。中国人の妻の助けと支えのもと新HSK6級を取得後は、共にネット留学を旨とする「長城中国語」にて中国語また日本語を教えつつ日中中日翻訳にもたずさわる。中国・中国人・中国語学習・中国ビジネスの真相を日本に紹介するコラムを執筆中。

関連サイト「長城中国語」はこちら

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