<コラム>デジタル人民元のテスト第二段階へ、ブロックチェーンに賭ける中国、日本は大丈夫か

高野悠介    2020年9月11日(金) 9時0分

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このところ中国メディアでは、デジタル人民元と、ブロックチェーンの関連ニュースが増えている。写真は中国人民銀行。

このところ中国メディアでは、デジタル人民元と、ブロックチェーンの関連ニュースが増えている。ブロックチェーン技術は、インターネット以来の「情報技術革命」とされる最新テクノロジーだが。中国は国家的取組みにより、この部門で世界をリ―ドしようとしている。日本と比較しつつ、今後を占ってみよう。

■ブロックチェーン関連カンファレンス

日本で8月下旬、ブロックチェーンのカンファレンスがあった。日中を比較してみよう。

金融庁と日経新聞が主催するBlockchain Global Governance Conference(BG2C)が8月末、東京で開催された。金融庁は2017年以来、ブロックチェーン・ラウンドテーブルを、金融庁と日経はこれまで4回Fintech&Regtech Summit(FIN/SUM)を開催している。今回はコロナの影響もあり、それらが合体した形のようだ。いずれにしろ日本メディアの扱いは小さかった。麻生財務相の「ブロックチェーンは、伝染病との戦いで解決策になり得る」という言葉が伝えられた程度である。

一方中国では、毎月のようにブロックチェーン関連のカンファレンスが予定されている。

8月8~9日 第6回世界ブロックチェーンイノベーション大会(海南省・海口)

8月20~21日 ブロックチェーン世界論壇・北京サミット(上海

8月22日 ブロックチェーン教育世界行・深センサミット(深セン)

8月28日 2020新区勢…ブロックチェーン科技金融サミット(北京)

9月17日 第23回科博会…2020中国ブロックチェーン発展論壇(北京)

9月28日 2020年ブロックチェーン新経済サミット(杭州

10月29日 ブロックチェーン世界論壇・北京サミット(北京)

12月10~11日 ブロックチェーン世界論壇・深センサミット(深セン)

盛況を極めている。日中の熱量差は誰の目にも明らかではないだろうか。

■中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)への道

デジタル人民元は2020年4月、深セン、蘇州雄安新区成都、及び2022年北京冬季オリンピック試験区内で、テストを開始した。それから4カ月、テスト拡大のニュースが伝えられた。これまでの経緯を振り返ってみよう。

2013年下半期、中国ではビットコインブームに火が付いた。中国人民銀行(中央銀行)は、同年12月に“通知”を出し、ビットコインの取引は合法だが、その貨幣性は明確に否定した。さらに金融機関や決済機関の参与を禁止した。その一方で、中国人民銀行は2014年、中央銀行デジタル通貨(CBDC=Central Bank Digital Currency)の発行へ向けた、研究グループを設立した。

■2017年、暗号資産の取引を禁止

次の動きは2016年である。人民銀行の周小川総裁(当時)は、1月のデジタル通貨セミナーにおいて、紙幣はやがてデジタル通貨に置き換えられると述べた。ここからCBDC発行計画は本格化する。

翌2017年は激動の年だった。1月人民銀行は正式に「デジタル通貨研究所」を設立した。4月には、杭州市が「世界ブロックチェーン金融サミット」を開催、同市に「ブロックチェーン産業園区」が設立された。

そして9月にメインイベントが起こる。人民銀行と政府7部門が連名で、IOC(Initial coin offering=暗号資産の発行、調達)を禁止した。その結果、国内の暗号通貨取引所は10月末までに順次閉鎖され、一部は国外へ逃れた。この措置でビットコイン価格は大暴落した。

2018年5月、CCTV(中央電視台)は3日にわたり、暗号資産とブロックチェーン関連の番組を放映した。ノーコインのブロックチェーンの“火”をともそう、と強調した。

暗号資産は認めず、CBDCの発行を目指す。そして各産業への応用では世界をリードする。中国のブロックチェーン戦略は明確だった。

■2020年、具体化へ前進

2020年は、これらの戦略が具体化していく。

中国国家電子政務外網管理中心は2020年4月、ブロックチェーンプラットフォームBSN(Block-chain-based Service Network)を公開した。BSNのメリットは、ブロックチェーンベースのアプリケーション開発を簡単にしたことだ。ブロックチェーンの世界的プラットフォームを作り、利用を促した。医療や貿易金融など、実践的プロジェクトもすでに動き出している。

そしてデジタル人民元は8月中旬、京津冀(北京・天津・河北省)長三角(上海デルタ)大湾区(珠江デルタ)及び中西部で条件の整った地域から試験に入る、と発表された。ネットメディアでは、具体的な使用方法や、AliPayやWeChatPayとの違いを解説する記事が多く、本番が迫ってきている感覚だ。

一方日本では、政府の2020年度「骨太の方針」に基づき、日本銀行が7月下旬に「デジタル通貨グループ」を設置した。中国に6年遅れのスタートだ。数少ないブロックチェーンのカンファレンスも、専門家以外、あまり注目していない。これで日本は大丈夫なのだろうか。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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