<コラム>勇の人は懼れず

海野恵一    2020年8月5日(水) 20時20分

拡大

今月は「勇の人は懼(おそ)れず」とは何かを解説しましょう。資料写真。

先月は「仁の人は憂えず」について話をしました。「仁」とは相手を思う心です。相手を思うということはどういうことでしょうか。いくら思っていても相手には伝わりません。相手を思うということは相手の言葉をそのままあなたが受け入れることだと言いました。そういう事を行えば、相手の人はあなたが相手の言葉とか考え方を理解してくれたとして誤解してくれます。それが相手を思う心なのです。その際に「I love you.」という言葉を心のなかで唱えてください。相手にきっと通じます。これが「仁の人は憂えず」の意味です。

さて今月は「勇の人は懼(おそ)れず」とは何かを解説しましょう。

勇の人は懼れず

この言葉は勇者が決断力を持ってあなたの考えを相手に確かめるという意味です。相手を思いやる心が相手に伝わらなければ意味がありません。自分の思っていることをそのまま言ったら、自分の置かれている社会的な地位、名誉、財産、交友関係が脅かされてしまうのではないかと誰もが危惧します。だから、本当のことを言うことが憚れるのです。

言葉とか態度とかに表さなければ相手はあなたの気持ちを理解していないかもしれません。人間関係の基本ですがそれが多くの場合できていません。特に日本人はそうしたことが苦手です。暗黙のうちにお互いが理解し合っているはずだと思っている人が多いのです。実は相手はそうは思っていないかもしれません。

中国の古典である戦国策に、「愚か者は物事が具体的な形になってもまだ気づかない。賢いものは、まだ形になって現れていないうちにあらかじめこれからの動きを察知して適切な対策を立てる」という言葉があります。身近だからこそ、最後の最後まで伴侶の気持ちに気がつかないのです。まさかと思っている人が多いのですが、定年離婚が多いのを斟酌しますと、あながちまさかでもないと思います。そうしたことは日頃からの勇気を持って相手に気持ちを打ち明けておくことが大事です。

心を通わせる事で、お互いの絆をより深いものにしなければなりません。それは自然とそうなるものではありません。絶えず、お互いを理解するように心がけなければならないのです。そうしていても、心は見えませんから、離れていってしまうことがあります。同床異夢という言葉がありますがその通りです。相手を一方的に信じるだけではだめなのです。あなたの気持ちを打ち明けることは恥ずかしいと思うかもしれませんが、ぜひ思い切って打ち明けてみてください。きっと、あなたが思っていたこととは違うことを指摘してくれるかもしれません。あなたの一方的な思い込みだったのかもしれません。でも、こうした意思疎通は大事なことです。相手の心は見えないからです。

■筆者プロフィール:海野恵一

1948年生まれ。東京大学経済学部卒業後、アーサー・アンダーセン(現・アクセンチュア)入社。以来30年にわたり、ITシステム導入や海外展開による組織変革の手法について日本企業にコンサルティングを行う。アクセンチュアの代表取締役を経て、2004年、スウィングバイ株式会社を設立し代表取締役に就任。2004年に森田明彦元毎日新聞論説委員長、佐藤元中国大使、宮崎勇元経済企画庁長官と一緒に「天津日中大学院」の理事に就任。この大学院は人材育成を通じて日中の相互理解を深めることを目的に、日中が初めて共同で設立した大学院である。2007年、大連市星海友誼賞受賞。現在はグローバルリーダー育成のために、海野塾を主宰し、英語で、世界の政治、経済、外交、軍事を教えている。海外事業展開支援も行っている。

著書はこちら(amazon)
facebookはこちら

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携