<コラム>蒙古斑-あらら同じ人種?

石川希理    2020年7月26日(日) 14時50分

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生まれたときから尻の上辺りに見られる青い痣は、「蒙古斑」-もうこはん-といって、黄色人種・モンゴロイドに特有のものである。5、6歳から10歳くらいで消えるのが一般的だ。資料写真。

我々が生まれてすぐは、お尻に、青い痣がある。


「ほほう、ケツが青い話でんな」

「お前なあ、品性下劣か?」

「あらら、ケツはいけまへんか」

「お尻といいなさい」

「おケツは?」

「だめ!」

「オイドは?」

「ワン、おまえ何歳だ? もういまごろ使う人はあんまり見かけないぞ」

「ワワーン」

余談だが、「オイド」は吾輩が子どもの頃、明治生まれの祖母が話していた言葉だ。調べてみると「御居処」と漢字で書いて、女性が用いた(広辞苑第7版)丁寧な言い方らしい。現代では主に西日本の方言だとあるが、そこの住人である吾輩の場合、もう余り聞いたことはない。

「青い痣の話でしたな」

「そう」

生まれたときから尻の上辺りに見られる青い痣は、「蒙古斑」-もうこはん-といって、黄色人種・モンゴロイドに特有のものである。5、6歳から10歳くらいで消えるのが一般的だ。他の場所に出来る場合は色素異常で治療が必要な場合があるらしい。

この痣、胚の発育の段階から現れるが、では、なぜ、黄色人種に性差なく現れるのかは、「原因不明」である。「蒙古斑」という名前からして、類推すると、モンゴルも中国も朝鮮も日本もルーツは同じらしい。

「でも、言語も習慣も違う異民族になりましたんや」

「うん。ルーツは同じと言っても、我が国の場合は大陸、南方、北方の民族が渡ってきて、混血を重ねて日本人が完成したらしい」

「完成したんでっか」

「あらら、失礼。一応ね。これからは移民もドンドン増えるし、変わっていくだろうね」

「遠い世界でんな」

「いやいや、吾輩やワンは無理としても、10代、20代の若者が高齢者になる時代には、相当変化しているかも判らんね」

「どないなりまんの?」

「さあ…。日本だけでなく世界全体で考えると予測は立てやすいらしい。学者によると、未来の人類は、ヒューマンブラウンになるという」

「あらら、黄色人種、黒人、白人の混血でんな」

「そう、まあ、どんどん、グローバル化が進み、人々の移動が盛んになり、移民が増えると、素人でも、そうなると思うね」

「犬は、なりまへんなあ」

「そうだねえ。なぜだろう…。もとは、オオカミの亜種で、人間がいろいろと作り出したからねえ…」

「そうか、ワテも作り出されたんでんな…、ワワーン」

犬はともかく、人間の変化は案外早いかも知れない。例えば、吾輩の身長は168センチである。170センチだったのだが、72歳になって縮んだ。

「縮むのでっか?」

「老人になるとみな縮む」

「背が?」

「そう、骨や椎間板が、すり減るらしい。ほら老人になると股関節の動きが悪くなり、ここにボルトを入れる人もいる。まあ何から何まで老朽化する。知ってるか」

「そりゃあ、そうでっしゃろな」

「目玉も縮む」

「へ?目玉まで?」

「うん、とにかく総て縮み、下手をすると痛みが出る。ほら、膝が痛い、腰が痛い、肩が凝る、首が痛い…、それだけやない。内臓もみーんな、くたびれる」

「えらいことでんな」

「そう、そして、だーれも、そこから逃れられない」

元に戻って、吾輩の身長は高校時代にグンと伸びて、二十歳頃には170センチだった。この170センチというのは、団塊の世代では高い方に属していた。厚労省の調査だと半世紀前の平均は165センチ前後である。ところが現在は20歳男性の平均身長は172-3センチだ。

「50年前から7、8センチ以上も伸びてまんのか」

「そう。経済の高度成長と栄養・生活の変化。栄養は劇的によくなったし、椅子式の生活も、スポーツの普及もいいと言われている」

中韓も急速に伸びている。中国の身長が、日韓より低いのは、経済成長が国全体にまだ行き渡っていないことが要因と考えられるらしい。さらに韓国の男性の身長が我が国より高いという統計が出て驚いたが、これも原因はよくわかっていない。おもしろい原因説としては、韓国では肉などの大食習慣、また背が高いことがステータスシンボルとしての意味が大きいという文化的背景があげられている。

もっとも、アメリカや北欧などの白人圏からみると、背の高さという点ではまだまだの感がある。「きょ、巨大な鼻!」と、子どもの頃、内心でひっくり返った覚えがある。なにせ吾輩が子どもの頃というと、第二次大戦後数年~10年だ。1950年代。「外人」(差別的意味があるので、いまは外国人という)を見かけることは希だった。

なにせ、外国に出かけるには、ドルも十分に得ることが出来ず、飛行機は、とんでもない手段だった。1ドル360円の固定相場制だった。いまは1ドル108円とか107円とか、ドンドン変わるけれども、当時は日本は貧しく「円」の力は貧弱だった。貿易の決済はドル建てだから、ドルがないと海外から物が買えない。ドルは宝物みたいだから、持ち出せる金額が決まっていた。

貧しいので、海外旅行なんぞ、まず一般の人には縁がなかった。また、海外旅行ではなく「洋行する」といって、船旅が中心だった。この「洋行」というのは、現在ではほとんど使われない。因みに会社名にはある。

吾輩は港町で国際都市の神戸で育ったが、一般の人がウロウロする街中で白人も黒人も見かけることはほとんどなかった。それがたまたま出会った。その時の印象は、背が高いと言うことより、その高くて大きな鼻だった。


鼻を下から見た図だが、気温や湿度と関係があるらしいとこれは聞いたことがある。冷たく寒いと、空気をダイレクトに吸い込みにくい。だから白人の鼻は大きくて高いらしい。そういえば白人でもスペインやフランス南部、イタリアなどの「ラテン系民族」は黄色人種に近いという。この鼻、これもゆっくりだが、エアコンの普及などで変化していくのだろうか…。

蒙古斑という共通の遺伝的要素を持ちつつ、しかし、その民族的特質に大きな差が見られる東アジアの国々。中華文明の影響を受けつつ、反発したり、完全に換骨奪胎した文化を持つ国々。政治経済体制も異なる国々が、その特質を保持しつつ、平和裏に共存できる道は、まだまだ遙かに遠い。

問題が噴出しているが、「尻の青い」仲間どうし、ヨーロッパ共同体のような仕組みの、アジア型共同体-東南アジア諸国連合の発展型-への研究が必要だろうと思いつつコラムを終える。

■筆者プロフィール:石川希理

1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。

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