<中国TPP加盟申請>ハードル高いが日本はじめ多くの国にとってメリット多大―米国の復帰促せ

立石信雄    2021年9月19日(日) 6時30分

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中国がTPPへの加盟を正式に申請した。高水準の自由貿易ルールを受け入れられるかなど、加盟のハードルは高いようだが、実現すれば、貿易立国の日本はじめ加盟国にとってメリットは多大。写真は中国・深セン。

中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。現在加盟する11カ国の実質国内総生産(GDP)は世界の1割超にとどまるが、中国が加わると3割に拡大するという。高水準の自由貿易ルールを受け入れられるかなど、加盟のハードルは高いようだが、実現すれば、貿易立国の日本はじめ加盟国にとってメリットは多大。「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」と併せ、自由貿易圏に拡大に繋がる。

昨年11月に習近平国家主席が加盟の意向を表明してから、中国は加盟国への地ならしを始めたとされ、既にニュージーランド、シンガポールをはじめとする加盟国との話し合いで進展があったという。中国と領土問題を抱えるベトナムも、経済分野では対立を望んでいないとされる。コロナ禍で経済が打撃をうける中、各国とも成長の種を希求しているようだ。

TPPを離脱した米国のアジアでの存在感が低下する中、中国にはTPP加盟を通じて経済圏の拡大とアジア太平洋地域での影響力を強める狙いがあると報じられている。TPPを外圧として国内改革のテコに使いながら、米国抜きのアジア経済圏の枠組みを主導する思惑もあるという。

一方で、TPPの高い自由化の水準を中国がクリアできるか、懐疑的な見方も根強い。TPPの協定では、国有企業と他の加盟国の企業を差別してはならないとするが、中国は国有企業に補助金を投じるなど様々な形で優遇。政治と経済が密接不可分の政治体制のもとで、国有企業の改革も容易ではないようだ。

ただ中国がこのような「体質」から脱皮し、国際ルールに従えば、世界経済の発展に向けメリットは多大。日本にとって最大の貿易投資国・中国の「脱皮」は、人口減少と低成長に直面する日本の経済界にとって歓迎すべきことである。

TPPにはもともと中国を牽制し、日米でアジアの通商ルールづくりを主導する狙いがあった。ところが、米国がトランプ前政権時代に離脱。現在のバイデン政権にとっても、国内世論が激しく割れるTPPへの復帰反対論が多い国内世論の中で「復帰」を打ち出すのは難しく、身動きが取れない状況にあるという。米国のサキ大統領報道官も、中国正式加盟表明後に「TPPに復帰しない、というバイデン大統領の姿勢はずっと明確だ」と話し、TPPへの復帰は難しいとの考えを示している。ただ世界の成長センターであるアジア太平洋地域における米国の存在感のさらなる低下に繋がるとの見方もあり、「復帰」を促したい。

こうした中、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は9月13日、経済担当相会合をテレビ会議形式で開催。共同声明で、昨年11月に署名したRCEP協定に関し、来年1月までの発効を目指していくことを明らかにした。RCEPは関税削減や統一ルールを通じて自由貿易を推進する協定。日中韓3カ国やASEANなど計15カ国が署名し、各国が発効のための国内手続きを進めている。

RCEPはアジア中心で柔軟だが、TPPよりはるかに大きい世界最大の国際経済連携協定であり、日本やASEAN諸国にとってメリットは多大だと思う。

<直言篇173>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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