<朝鮮半島>今こそ「終戦協定」と「南北統一」に向け動くべき時だ―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年12月19日(日) 6時40分

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拉致被害者の家族も高齢となり、多くが再会を果たせぬまま次々に亡くなっている。歴代首相に続いて岸田首相も「条件を付けずに北朝鮮トップと会う」と強調しているが実現していない。写真は北朝鮮。

第二次世界大戦から80年近く経つのに、朝鮮半島は韓国と北朝鮮に分断されている。それどころか「終戦協定」も締結されておらず、この地域では今なお「戦争状態」が続いている。戦後の国連など国際社会では“民族自決”が普遍的理念である。いち早く30年あまり前に東西統一を果たしたドイツと同様に、一刻も早く「民族統一」が果たせるよう、温かく見守り支援したい。

文在寅大統領は2021年9月21日の国連総会で「朝鮮半島『終戦宣言』に向けて国際社会がもう一度促し、南北米の3者もしくは南北米中の4者が集まって、朝鮮半島での戦争が終了したことを共に宣言すること」を提案した。

この提案について韓国内の世論調査では「ぜひ必要」41%「ある程度必要」26%と約7割が評価している。南北通信連絡線が再開されたことについて韓国有力紙は「北朝鮮の最高指導者の意思が盛り込まれている点で意味がある」と論評。南北の融和と終戦宣言は国民に支持されている。

朝鮮半島の実情に詳しい専門家によると、北朝鮮は次の韓国政権が現政権の流れをくむ進歩派政権になることを望んでおり、3月の韓国大統領選で文氏の後継候補が有利になるように仕掛けてくる可能性があるという。2019年以降は正式な南北会談が開催されていないため、韓国の進歩勢力としても、実績を作っておきたいとみられ、22年2月の北京五輪で南北首脳会談が実現する可能性もありうるようだ。金氏の電撃的なソウル訪問も想定内という。

もともと韓国と北朝鮮は同じ民族。ところが、米国、中国、旧ソ連(現ロシア)など大国の思惑から、分断を余儀なくされた。かつて朝鮮半島を併合し、忍従を強いた日本にも大きな責任があろう。南北政治体制は異なっても、民衆の思いは同じである。

北朝鮮の金正恩総書記が父・正日氏の死去により権力を継承して、今月で10年となる。20代の最高権力者の登場に、当時は短命政権説も飛び交ったが、いまや権力基盤を確立し最高権力者として君臨する。

ところが経済状況は深刻なままで、米欧から制裁に新型コロナや災害に見舞われている。市場経済を一部に導入し、企業や農場が自らの創意工夫で経営できるよう改革。市場での売買が盛んになり、厳しい情報統制下ながらもスホなどの電子機器を利用する人が増えたという。

目標実現への最大の足かせとなっているのが、国際社会の声を無視して強行し続けた核・ミサイル開発。開発を急ぐのは、安全保障上の抑止力や米国との交渉能力を高めるとともに、国内的にも力を誇示する狙いもあるようだ。世界を驚かせた3回に亘る米朝首脳会談も事態を打開できず、核ミサイル開発も続行されている。

圧力を強めれば屈し、いずれ政権崩壊するだろうといった推論はことごとく外れた。北朝鮮の横暴さには厳格に対処しつつ、現状を冷徹に見極めて実のある交渉機会を探るしかない。

特に日本は拉致問題を抱える。拉致被害者の横田めぐみさんはじめ多くの被害者が拉致されてから相当の年月が過ぎた。被害者の家族も高齢となり、再会を果たせぬまま次々に亡くなっている。安倍、菅の歴代首相に続いて岸田首相も「条件を付けずに北朝鮮トップと会う」とアピールしてきたが、実現していない。一刻の猶予も許されない。今こそ日本が積極果敢に動くべきタイミングだろう。

<直言篇185>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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