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<コラム>奈良公園、コロナで鹿もStay Home

工藤 和直    2020年4月27日(月) 23時40分

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新型コロナウイルスの影響は外国人観光客の来ない奈良公園の鹿にも大きな影響を与えているようで、お目当ての鹿煎餅がもらえず公園の片隅でじっとうずこまっている姿を見ることが多くなった。写真は奈良公園の鹿。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は外国人観光客の来ない奈良公園の鹿にも大きな影響を与えているようで、お目当ての鹿煎餅がもらえず公園の片隅でじっとうずこまっている姿を見ることが多くなった。奈良に都ができた頃、藤原氏は氏神として神様を茨城の鹿島神宮から春日山に移す時に、神様は白い鹿に乗って来た。だから鹿は神様の使いとして神聖な動物として、奈良では大切にされている。

中国では鹿の肉を食べ、鹿の角は医薬品・健康食品として重宝されている。養鹿(鹿を養育する)といって国家経営されている。鹿の角は「鹿茸(ろくじょう)」と言って、非常に高価な物だ。奈良公園に来る中国人にとっては、ペットのように扱われている鹿の群れにさぞや驚きを感じているだろう。

近くにある奈良女子大(1908年創立、旧奈良女子高等師範学校)グラウンドで悠々と草を食う鹿を見ることがあったが、最近数匹の鹿が闊歩する姿を見かけた。Stay Homeに疲れ勉強に来る鹿かなと思ったが、食べ物探しに来たのだろう。

宝塚市の南西、仁川下流に“鹿塩”という里がある。この地には多くの鹿が住んで、奈良の春日大社の神の使いとして里と春日大社を行き来していたという。ある日、春日大社から2頭の雄・雌の鹿が使いとして供物を持って来た。村人から歓待を受け、やがて旅の疲れで雌鹿は眠ってしまった。その間に、雄鹿は友達に会いに出かけた。

しばらくして目を覚ました雌鹿は、雄鹿が居ないのに驚き、あっちこっちを探したが見つからない。神社の裏山に行き、水を飲もうと井戸をのぞき込んだら、そこに雄鹿の姿が見えたので喜びのあまり飛び込んでしまった。井戸の水に映った自分の姿を雄鹿と見間違えたのだ。哀れなことに雌鹿は溺れ死んでしまった。

里の人は悲しみ、雌鹿を井戸から引き揚げ、塩で包んで春日大社に丁寧に送り返した。その雌鹿に「かなしくも みるや雄鹿の みずかがみ」と歌が添えられた。一方の雄鹿は雌鹿の死を悲しみ自分の愚かさを悔やみ、井戸の周りから離れず、ついにこの場所で死んでしまった。

里の人は鹿の愛情の深さを思い、塚を立てて霊を弔った。そして、雌鹿がのぞきこんだ井戸は「鹿の鏡井戸」と呼ばれるようになった。地名の“鹿塩”は、鹿を塩漬けにしたことに由来する(宝塚の民話より)。この神社は熊野神社といい、阪急今津線の仁川駅と小林駅の中間地点にある。

熊野神社から東方向に阪神競馬場がある。今年のG1レース桜花賞は4月12日に新型コロナのために無観客で開催された。毎年、出走する馬の背景に満開に咲く桜花が映えるのだが、スタンドには観客もなく、ただ馬の足音だけが響いた。戦前、この阪神競馬場は「川西航空機」だった。紫電改などの戦闘機を製造、ちょうど熊野神社東に臨時の鹿塩停車場(今はホーム跡を残す)跡があった。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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