Record China 2013年11月27日(水) 21時0分
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失脚した薄熙来(ボー・シーライ)が名誉主席を務める至憲党の成立が2013年11月9日に報じられ、ちょっとした話題となった。
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発起人は北京経済管理幹部学院の王錚副(ワン・ジョンフー)教授。2012年には呉邦国全人代委員長(当時)に、「法に基づき薄熙来との面会を求める」との書簡を送り、拘束された経歴もあるという。ばりばりの薄熙来支持者、左派のイデオロギーなのかとおもいきや、そうじゃないというのが面白い。
12日付ロイターは「左派のほとんどは新党を知らず」「(薄熙来)元書記の著名な支持者らは、至憲党に参加しておらず、興味もほとんどないとしている」と報じた。
実際、至憲党の綱要や王錚副教授の主張を見ると、薄熙来や左派とはあまり親和性がなさそうだ。11日付BBC中国語版に掲載された王副教授のインタビューを見ると、至憲党という名前は憲法こそ至高無上の存在という意味だと話しており、中国共産党に憲法遵守を訴えている。新政党の設立も憲法に則ったもの。一方で共産党が唯一の執政党と憲法に明記されているので政権は狙わないともコメントしている。
また薄熙来との面会を求めた時も「面会は法に認められた権利」と主張している。つまり、憲政と法治こそ王教授の求めるものであり、普遍的価値を重視する右派に近いような気もするのだが…。
王教授によると、憲法には中国の政治制度は社会主義と規定されており、社会主義の本願は共同富裕。なのでそれを重慶で行った薄熙来はえらいというロジック。薄熙来は一方で「打黒」(汚職官僚・マフィア撲滅)の名の下、一般企業家を拘束しては財産を没収していたのだが、それはいいのだろうか。
至憲党はこのまま誰にも相手されることなく忘れ去られる可能性が高いが、それはそれとして法治と憲政の左派、「中国共産党は憲法どおりに社会主義しろ!」という主張はなかなか興味深い。
現在、習近平が推進する左派的政治キャンペーンでは、憲政は中国を転覆させる西側の陰謀ということになっている。右派=憲政推し、左派=その反対という構図ができていたのだが、憲法遵守左派という新たなポジションが生まれるのならば、至憲党は十二分に役目を果たしたのではないか。
▼中国義勇軍を結成、監獄から薄熙来を救出せよ
この至憲党絡みではもう一つ、ちょっと話題になったトピックがある。「中国至憲党、軍事委員会主席第1号令を発布」というのがそれだ。
中国義勇軍を組織。天下の豪傑を集めて突撃隊を結成し、監獄から薄熙来を救出せよ。ついでに我が党の幹部である王立軍(ワン・リージュン)、徐明(シュー・ミン)、谷開来(グー・カイライ)らも助けよう。参加者には賞金を与える。
支払いは徐明の担当。海外からの参加者には米ドルで支払い、薄瓜瓜(ボー・グアグア)が担当する。現在、毛新宇(マオ・シンユー)少将を中国義勇軍の司令に任命。周永康(ジョウ・ヨンカン)を軍事情報局大将局長に任命する。
監獄を襲撃して薄熙来を助け出せ、というなかなか楽しい提案だが、これは100%のネタ記事だろう。至憲党軍事委員会主席・劉剛(リウ・ガン)の名前で出された文章だが、この劉剛という人物は天安門事件の学生関係者。1996年に米国に亡命している。中国ジャスミン革命の黒幕の一人を名乗り、ネットで中国をおちょくる文章を量産しているようだ。「私は壁と卵のどちらかに与するならば卵を選ぶ。今の弱者は共産党だ。共産党にアドバイスしたい」といった村上春樹ネタをまじえた文章には笑わせてもらった。
というわけで今回もはやりのネタを使ったジョークをぶっ込んできたわけだが、「憲政と法治を掲げる人物が薄熙来新党成立を宣言」という元ネタのレベルが高く、いまいち見劣りすることは間違いない。
▼筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)
翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。
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