<コラム>地球文明の国になれるか日本 その4

石川希理    2020年4月12日(日) 15時0分

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ハンチントンは、積極的な行為主体としての文明の中で、日本が独特のものであるということを言いたかった。

「孤立文明-日本」

アメリカ合衆国の政治学者サミュエル・P・ハンティントンが1996年に発表した『文明の衝突』という本がある。原題は『The Clash of Civilizations and the Remaking of World

Order』(文明化の衝突と世界秩序の再創造)。冷戦が終わって、文明と文明との衝突が今後の課題だという内容である。

現在、エマニュエル・トッドなどは、このハンチントンの文明という概念より、家族制度によって世界を分けている。ただ、私などはハンチントンの(精神)文明を基軸にした分類の方が面白い。家族制度は原始的な本能的な部分に、宗教的な価値観が入り込み、道徳・倫理の変化に晒される。しかも科学・経済・社会的な発展と社会構造の変化によって変質の度合いが極めて大きいと考えるからだ。

さて、元に戻って、ハンチントンが言うその文明とは、1.中華文明-儒教文明とも呼ぶ、2.ヒンドゥー文明、3.イスラム文明、4.日本文明、5.東方正教会(ギリシア・ロシアなど)文明、6.西欧文明、7.ラテンアメリカ文明、8.アフリカ文明、9.その他。エチオピアやハイチとイスラエルはどの主要文明にも属さない孤立国である。

孤立国はともかく、文明として彼が捉えて、ただ一国なのは「日本」だけなのである。2世紀から5世紀において中華文明から独立して成立した文明圏であるとして、これを孤立文明としている。分類には日本語に焦点が当たっているが、精神文化などもユニークだ。前に当コラムで触れたように「チョンマゲ文化」、或いは「パパはお坊さん」で触れたが、大乗仏教なども中国や朝鮮のそれとは完全に違ったものになっている。

ハンチントンは、積極的な行為主体としての文明の中で、日本が独特のものであるということを言いたかった。空白の国家は政治・経済・文化の行為主体として、独立していないと捉えられている。(日本は小さいなあ…)

ベトナムを除く東南アジアは図中には空白だ。

私はここを「上座部仏教文明」と考えている。ただ、ハンチントンの言うように、上座部仏教は政治・経済・文化の行為主体とはなりえない。宗教ではなくて、個人的行動指針であるからだ。上座部仏教は、釈迦の基本的な思考を受け継ぐ。それは釈迦の世界観を基底に持ち「理性」による「自己改革」を中心概念とする。絶対的な存在-神や仏、菩薩-を認めない。

世俗社会では、絶対的権力と、神や仏という宗教が対立、或いは融合する。が、個人の「理性・英知」の発現を目指す上座部の思想では、社会的行為主体として成立するには、あまりにも理想的・純粋すぎるからである。

中華文明は儒教文明で、ベトナムやシンガポール、台湾、そして朝鮮もその中に入るかも知れない。東アジアは仏教的には大乗仏教圏だ。しかし、唯物論の共産、社会主義国も多く、底に流れる精神文明的には儒教が強い力をもつであろう。

現代の朝鮮(大韓民国)はキリスト教徒が仏教徒を凌駕している。韓国は中国の冊封体制の中にあって、国の独自性を保とうと努めてきた国だが、『反日種族主義』などによると、「シャーマニズム」の影響が強いらしい。また、コロナウイルスの拡散で見られたように、キリスト教が強い力を持つ。

一方、スリランカ・ミャンマー・タイ・カンボジア・ラオスは主に「上座部仏教」である。

このユニークさについては前に少し述べたが、触れる機会があれば詳述したい。

さて、我が国が孤立文明と言うことは、淋しい気もするが、何処にも属さないが、何処へも影響を及ぼしうるユニークさも持っていると言うことである。世界に飲み込まれるのではなく、変化すべきは変化して世界に向けてその思想・行動を発信してゆけるとも言える。

日・中・韓と東アジアを捉えるけれども、先に書いたように、韓国は中国の冊封体制の中の国家である。文明的には中華文明・儒教文明に属する。ハングルなど独特の文字・言語を使用しているが、それは余りに強い中国から離脱したいという願いから来ているのかも知れない。「大韓民国」というように「大」をつけているのは、75年前の戦前の日本のような背伸びした精神のなせる業なのだろうか。だが結局は中華文明に完全に飲み込まれている。したがって、日本は中・韓とは違うことを、よい意味で世界に明示していくべきであろう。

◆ハンチントンの文明図の世界略図は、下手なのでご容赦願いたい。

1.メルカトル図法(球体の地球を平面にした地図)なので、南北の陸地は拡大されてしまう。

2.太平洋は本来はもっと面積が大きい。

3.世界的によく使われるのは大西洋を挟んだ地図である。大西洋を真ん中に描くと、日本が「極東」という意味がよくわかる。

◆大西洋の赤い矢印は北大西洋

海流、この海流は暖流である。そのおかげで日本の北海道より高い緯度にあるイギリスなど

でも暮らしやすい。


◆因みに、オーストラリアなどでは、下のような地図も使用される。このような地図で教育されると、ものの考え方が変わってくる。


つづく

■筆者プロフィール:石川希理

1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。

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