<コラム>問題企業を告発するCCTV「315晩会」、今年は新型肺炎の余波で放映延期に、焦点はコト消費

高野悠介    2020年3月28日(土) 23時10分

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中国中央電視台は、毎年世界消費者デーの3月15日、「315晩会」という番組を放映する。今年は新型肺炎の余波を受け、放映延期となった。しかし、マスコミは、推測記事を流している。

中国中央電視台(CCTV)は、毎年世界消費者デーの3月15日、「315晩会」という番組を放映する。1991年に始まり、今年は30回目を迎える。消費者権益を侵害する行為や現象を取り上げ、報道している。翌日には、新聞メディアが一斉に取り上げ、公開処刑のようにも見えた。ところが今年は新型肺炎の余波を受け、放映延期となった。しかし、マスコミは、推測記事を流している。おそらく内容を把握できているのだろう。以下315晩会について考察してみたい。

■日系企業と製品、過去の事例

かつては日系企業の“採用率”が高かった。以下のようなケースが“記録”されている。

2010年、ソニー、液晶テレビの保証期間順守義務違反。

2013年、吉野家、器具等の不消毒。

2014年、ニコン、一眼レフカメラのサービス規定順守義務違反。

2015年、日産合弁企業「東風日産」過剰修理による消費者の権利侵害。

2017年、無印良品、イオン、カルビーが、中国国家質検総局指定の汚染地区に指定7県の産品を販売。しかしこれは、濡れ衣だったことがわかっている。

2018年、韓国製歯ブラシを使用の女性が出血。韓国製、日本製歯ブラシを検査した結果、60%が不良品。この件を「外国崇拝の罠」として放映。

2019年、日系企業には何事もなかった。中国企業9項目の事例が紹介されたが、いずれも悪質な内容だった。政治情勢に寄り添うように、外資企業を取り上げるような例は影を潜め、しっかりした報道ぶりに見えた。そこで2020年はどのような内容になるか、注目していた。

■2020年の焦点1.保険業界

315晩会には、毎年キーワードがある。2018年は「共建秩序、共享品質」、2019年は「共治共享 放心消費」と消費財に関わるテーマだった。それが2020年は「凝聚你我力量」という抽象的なワードに変わった。どうやら実物商品以外に焦点が当たりそうだ。

某メディアは、保険業界に注目している。保険業界は“短兵急”かつ“野蛮”な発展を遂げた。2018年の保険料収入は3兆8000億元(58兆円)、2012~18年までの年平均成長率は、16%に達する。なお中国の保険商品は、日本に比べ、貯蓄の色彩が濃い。

2019年10月、中国銀行保険監督管理委員会は「中国銀保監会辯公庁関干開展銀行保険機構侵害消費者権益乱象整治工作的通知」を発表し、消費者権益の保護について、警鐘を鳴らした。特にネット保険会社に関しては、名前を挙げた。

ネット保険は、商品説明が不十分、不明確どころか、意図的に混同しやすい単語を使用し、保険責任を曖昧にしている。具体的な名が上がったのは、テンセント系ネット保険会社「微保」である。国民的SNSのWechat、QQを通じて、保険購入、紹介、保険金請求まで、微々先1つでできる。そのため、自動更新に関する問題が頻繁に発生しているという。

■2020年の焦点2.騒擾(迷惑)電話

別メディアは騒擾(迷惑)電話を取り上げている。艾媒網(iiMedia Reseach)の調べによると、中国の2018年、迷惑電話の本数は延べ500億本に上った。また昨年のアンケートでは調査対象の69.7%が迷惑電話を受けたことがあると答えている。

その頻度は2~4日に1回37.2%、1日に1~5回21.5%、5~7日に1回18.2%、

1週間に1回以下14.6%、毎日5回以上8.5%だった。

内容は、ローン勧誘71.4%、保険勧誘50.3%、不動産仲介42.9%、詐欺情報33.3%、商品営業20.4%などである。

そして83%がこうした電話を嫌悪していて、49.6%は受け取った直後に切る、と答えている。またこの1年、こうした電話が増加したと感じた人は43.1%、減少した16.6%だった。

さらにネットユーザーの40%以上が、こうした迷惑電話は通信事業が責任を負うべきと考えている。さらに90%近くの人は、対策が不十分と見ている。

対策としては、個人情報を入力しない53.1%、第三者のセキュリティソフト40.3%、公共WIFIをなるべく使わない27.0%となっている。

■まとめ

このように、315晩会の対象も、モノ消費からコト消費へ移行している。昨年は指摘された9項目のうち、薬剤師・医師資格証の貸借、銀行によるカード盗刷リスクの黙認、短期高利貸しなどの3つがコト消費関連といえる。また智能騒擾(自動迷惑電話設備)というハードウエアの販売も指摘された。

中国では、犯罪もイノベーションを遂げつつある。315晩会もそれに伴い、内容を変化させていた。もうかつての日系メーカーたたきに戻ることはなさそうである。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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