<日本人が見た中国>タカリ役人への対処法=罰金も値切れる!―北京市

Record China    2013年11月2日(土) 10時0分

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ある暖かい春の日の昼下がりだった。電話も鳴らず、当社の社員たちは黙々とそれぞれの仕事をしていた。その静寂を破ったのは、突然、当社に入ってきて何も言わずに会議室の椅子にどっかと腰を下ろして「おい、責任者出せや!」と言い放った、屈強な5人組の男たちだった。

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それは、ある暖かい春の日の昼下がりだった。

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電話も鳴らず、当社の社員たちは黙々とそれぞれの仕事をしていた。その静寂を破ったのは、突然、当社に入ってきて何も言わずに会議室の椅子にどっかと腰を下ろして「おい、責任者出せや!」と言い放った、屈強な5人組の男たちだった。

私は最初、ヤクザが当社に難癖をつけてタカリに来たのかと思ったのだが、話を聞いてみると彼らはある役所の役人だった。彼らは当社の財務資料などを次々に要求、3時間にも及ぶ重箱の隅をつつくような査察の末、当社の営業に条例違反の部分がある、という理由で巨額の罰金を言い渡した。

私たちがその罰金の金額の大きさに驚いていると、今度ははっきりとは言わないものの「そちらの出方によっては、本日の査察はなかったことにしてやっても良い」というような内容のことを話し始めた。相手はヤクザではなかったが、「当社に難癖をつけてタカリに来た」という意味では、私の直感は当たっていたのだ。

中国に進出している日本企業は、こうした事態に陥ったらどう対処するべきなのだろうか?

答えは「きっぱりとお断りする、しかし、丁重に」だ。一度こうした要求に応じてしまうと、一度では終わらない可能性があるし、特に日本企業はコンプライアンス上の問題があるので、絶対に賄賂を渡してはいけない。そして、その日はお引取り頂いて、翌日からその役人の上司につながる人脈を全力で探すのだ。

当社も後日、うまく人脈をたどることができ、交渉した結果、言い渡された金額の1/10の罰金を支払うことで話がついた。日本ではありえない話だが、中国ではモノやサービスだけでなく、罰金も値切れるのだ。

中国ではなぜこんなことが起こるのか?

それは、中国では法治国家化が進んでいるといっても、まだまだ非常に曖昧だったり、逆に非現実的に厳しすぎたりする法律が多く、その法律を「解釈」する権限が現場の役人に与えられているせいだと私は思っている。場合によっては、この会社が法律に違反しているかしていないか、罰金を1万元にするか10万元にするかは、役人の胸ひとつで決められるのだ。

そんな大きな権限を持っている中国の役人だが、「為人民服務(ウェイレンミンフーウー、人民の為に奉仕する)」を党是とする中国共産党の党員なので給料は安い。すると、中には「この大きな権限を、うまく現金化できないか」と考えて、タカリに走る輩が出てくるのだ。

こうしたタカリ役人を根絶するためには、中国は法律をより現実的なものにして、現場の役人から法律を「解釈」する権限を剥奪、日本のように役人を「法律を厳格に執行するだけの存在」にする必要があると思う。

しかし、中国がそうした理想的な状態になる前に、会社にタカリ役人が来てしまったら、賄賂は丁重にお断りした上で、合法的なあらゆる手段を使って罰金を値切るのが、現実的な対処法なのではないかと思う。

■筆者プロフィール:柳田 洋

永豊有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。現在は中国での会社経営経験を生かし、中国に積極展開しようとしている日本企業の社員を対象に、講演、助言などのサポート活動を行う。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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