<在日中国人のブログ>マスクに込められている礼儀と利他精神を忘れないで

黄 文葦    2020年3月3日(火) 23時20分

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日本人とマスクの関係が深いと私はずっと思っている。写真はマスク売り切れの貼り紙。

日本人とマスクの関係が深いと私はずっと思っている。花粉症の季節、マスク姿の日本人をよく見かける。風邪をひいた時、他人に移さないために、マスクを着用する。マスクは自粛と礼儀の象徴になる。また、マスクには一種の神秘感がある。人と人の間に、適度な距離を保つ効用がある。かつて知人が「朝、化粧する時間がない時、マスクをつける」と教えてくれた。なるほど、マスクでも一つの「化粧」、真の顔を覆いかぶせる。

因みに、代表作「東京都北区赤羽」を持つ漫画家清野とおるさんには、マスクは個性的な「印」になっているらしい。清野さんとマスクの関係性がおもしろい。ネットで、このような映像を見た。清野さんが階段に座って、体を後ろに向け、こっそりマスクを外して、お酒を飲んで、またマスクをつけて、感想を述べる。このようなお酒の飲み方を何回も繰り返す。マスク姿の清野さんを羨ましく思った。いつもマスクをする理由の一つは「笑ってから普通の口に戻るまでの過程を見られるのがすごく嫌」。恥ずかしがり屋の日本人には、マスクはお守りのような存在であるだろう。

ところで、2020年、マスクに対する感覚が大きく変わった。昨年末から、中国の武漢から広がったウイルスが世界中の人々に恐怖と不安な思いをさせた。そして、日本だけではなく世界中に急にマスク姿の人があふれた。現在中国では公共場所でのマスク着用が求められている。商業施設でマスク着用を拒否して引きずり出されることもあった。マスクがかなり高価になった。先日、上海の友達が100元(約1570円)でマスクを3枚しか買えなかったと言っていた。日本でも、1月下旬から、どこでもマスクの品薄状態が続いている。ネットで、マスクが信じられないくらい高い値段で転売されている。コンビニでたまに、残り1枚のマスクを発見したら、宝くじに当たった気分になる。

最近、マスクが醜い人間性を曝けだす残念なニュースを続々と出た。ドラッグストアの前でマスクを奪い合う人たちの映像もネットで流された。2月中旬、神戸市中央区の神戸赤十字病院で、保管していた医療現場や医療用に使用される「サージカルマスク」6000枚が盗まれていた。このたいへんな時期、病院でこのような犯罪事件が起きて非常に残念だ。人間の心のウイルスも怖い。

日本と中国の間に、マスクが流れて回っている。肝心な時に日中協力を一層深めた。それはありがたいことである。ところで、ある在日中国人がマスクを爆買いし、転売で2000万円をボロ儲けした。それは「恥」ある商売だと思われるだろう。また、一部在日中国人が街頭に立ち、無料でマスクを配っている。そういう気持ちと行動力は称賛に値するが、やはり、結果として個人で買い占めるという行為は賛成しかねない。皆が「普通」にすればいいんだ。皆が必要な分を買えばいいんだ。厚生労働省は市販マスクの不足を受け、予防のために買い占めることを控えるよう訴える啓発メッセージをホームページで公表している。マスクは「風邪や感染症の疑いがある人」が使うことが重要だと呼びかける。

医療従事者を除いて、風邪をひく普通の人々にはマスク着用することは、他人に細菌を移さないためである。マスクに込められている礼儀と利他精神を忘れないでほしい。マスクが奪い合う対象になるのは悲しい。

今は、皆がウイルスを避けるマスクを着用するらしい。マスクさえあれば、安全だと思い込む人が少なくないのではないか。世の中、マスクは精神安定剤になっているのではないか。外の世界にはウイルスが漂うと意識しなくてはならないだろうか。マスクに過剰依存しないで、手洗い、うがいなどほかの科学的に根拠のある予防策もしっかり取ったほうがいい。

ネットで見たタレント辻希美さんの手作りマスクは素晴らしい。そうだ、マスクはファッションの効用もある。「今後オーダーメイドマスクを作ったらどうだ」、私は友人のファッションデザイナーに助言した。ウイルスを退散させた後、一人ひとりの顔に合わせるファッションマスクが世の中を輝かせて、マスクが人間の想像力を生み出す日はいつ来るだろうか、と期待せずにいられない。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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