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<コラム>外からの気づき

矢野浩司    2020年1月22日(水) 13時40分

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中国で16年間生活し、気づかされた事、沢山ありました。日本の常識が世界の常識では全然なくて、むしろ「違うんじゃないの?」と懐疑的に思うこともあります。

イチローさんが、自身が長年関わってきた少年野球大会「イチロー杯」で表彰式に出席した際に少年達に最後のメッセージを送りました。「自分自身は自分で鍛えてほしい」ということと「外を体感してほしい」ということ。

詳しくは「僕が27、28の歳にアメリカに渡って大リーグに挑戦したわけなんだけれども、外に出て初めてわかること、調べれば知識としてわかることであっても、行ってみてはじめて分かることってたくさんあって。。。やっぱり外に出て、傷つくことだってあるし、楽しいことももちろんいっぱいある、勉強することはいっぱいありました。それを知識として持っておくのではなくて、体験して感じてほしい。それで自分なりに解釈して、自分が育った日本という国は素晴らしいということを外に出ればすごく感じると思う。そういう経験を、できれば将来、みんなにはしてほしいな、というふうに思います。今まであった当たり前のものというのは、決して当たり前ではないというふうに気づく」。

私も中国で16年間生活し、気づかされた事、沢山ありました。日本の常識が世界の常識では全然なくて、むしろ「違うんじゃないの?」と懐疑的に思うこともあります。

日本では、撮影現場で先輩俳優が、スタッフから用意された椅子に座らず、ずっと立っているということをたまに聞きます。その状態で居心地が良ければそれでも良いと思います。でもずっと立っていることが、イコール、真剣にこの作品に向き合っているということには決して繋がらないのではと思います。真剣に真面目に取り組んでいる姿勢は、座っている、座っていないで測るものではないと思います。

後輩の俳優には「先輩が座っていないから、自分も座れない」という雰囲気を作ってしまうこともあるかもしれません。余計な緊張感が生まれます。

中国では、自分のシーンが終われば、「次のカットの準備があるので、休んでて下さい」とスタッフからすぐ促される。段取りをわかっている俳優なら、自分のカットが終われば、スタッフに確認して、自分の休憩場所に戻る。自分のシーンの撮影がなければ、椅子に座って次のシーンの台本を見て自分の中で状態を作っておくのが、効率的という考えが定着している。

逆に自分の撮影シーンもないのに突っ立ってると、「何かあるの?」とスタッフが余計な心配をしてしまうぐらい。逆に現場の邪魔にもなりますしね。用がなければ自分の待機場所に戻る、出番がくれば呼ばれる。ごく簡単な流れなんです。座ることが、『楽してる』という感覚はないです。

これは外国での撮影を何度も経験しているから感じること。日本にずっと居ては気づけないことです。

私達は日本人ですから、外国で感じる「日本人としての誇れる事」というのは自分の中で持っていればいいと思うんです。ただ、大事なのは外国にいて、そして外国の人と交流することによっての「気づき」です。これは自己見識を拡げます。

イチローさんが仰ってるように、外に出る、外国の人と繋がるということは、教科書で得られる知識よりも、実用的です。「外国語を勉強しよう!」と一念発起して沢山参考書を買ったところで、そういう書物は、実際、現地の日常生活であまり使われない固いフレーズばかりです。それと同じで、その国の言葉を学ぶなら現地で学ばないといけない。

私は常に「気づき」を欲しています。だから、今でも日本に居ながらにして、中国の皆さんとも繋がっている。

今年も内から、そして外から学んでいきます。

(本コラムは矢野浩二オフィシャルサイト http://www.kojiyano.jp/ からの転載です)

■筆者プロフィール:矢野浩司

1970年1月21日生まれ。大阪府出身。俳優。1991年に上京し、森田健作の運転手兼付き人を8年弱務める。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人」の出演を機に中国での活動を開始。現地で数々のドラマやバラエティー番組に出演し、「中国で最も有名な日本人俳優」と呼ばれる存在になる。2016年から日本での活動も始める。2020年4月スタートの連続ドラマ《警視庁 捜査一課長》でレギュラー出演。現在も日中で数々のドラマや映画、番組に出演し活躍している。
矢野浩司オフィシャルサイト:http://www.kojiyano.jp/

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