<コラム>デモで一転、ツリーが消え、異例尽くしの香港のクリスマス

野上和月    2019年12月19日(木) 23時20分

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例年なら12月の香港は、街中がクリスマス飾り一色でクリスマス商戦もたけなわ、お祭り気分が高まっているはず。しかし今年はデモのあおりを受けて、飾り付けを縮小するショッピングモールや小売店が少なくない。

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例年なら12月の香港は、街中がクリスマス飾り一色で、今頃はクリスマス商戦もたけなわ、お祭り気分が高まっているはず。しかし今年は、どうも盛り上がりに欠けている。6月から続く政府への大規模抗議デモのあおりを受けて、飾り付けを縮小するショッピングモールや小売店が少なくないのだ。せっかく飾った巨大ツリーを撤去したり、若者がSNSで消費を控えるよう呼びかけたりと、一年で一番華やかで消費が活発なこの時期が、一転して異例の展開になっている。

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香港のクリスマスシーズンは実に華やか。毎年11月に入ると、商業ビルやオフィスビル、小売店やマンションなどでクリスマスの飾り付けが始まる。クリスマス後も、西暦新年を祝うカウントダウン、旧暦新年を祝う春節と、年をまたいでお祭りモードが続く。

一昔前は、夜空を彩る高層ビルのイルミネーション見物が人気だったが、今では香港各地のショッピングモールが人気のスポットだ。趣向を凝らした巨大な飾り付けやイベントで話題を振りまいているからで、週末ともなれば、クリスマス飾りを見ようと多くの子供連れの家族やカップルなどでにぎわう。飲食店は、値段が張るクリスマスメニューを設定するが、早い時期から予約でいっぱい。この時期は、市民の財布の紐は緩みまくりで、店にとって一番のかきいれどきなのだ。

ところが今年は違う。クリスマス飾りが目につくようになったのは、12月に入ってから。しかも、複数のショッピングモールがデモ隊の抗議活動の場になった経緯もあり、派手な飾り付けはせずにガランとした空間のままの所もある。あるモールで巨大ツリーがデモ隊に燃やされたことを受けて、一度飾ったツリーを撤去する商業ビルが出るなど、お祭り気分とは程遠い状況だ。

数十万香港ドル(1香港ドルは約14円)から百万香港ドル規模で計画されていた商業ビルのイベント活動も、10月にデモが一段と過激になると、景気の先行き不安や保安上の理由で相次ぎ中止になった。

一方、市民も外出を控える傾向が続いている。頼みの観光客も10月-11月上旬の来港客数は前年同期を40%以上下回る激減状態。飲食店の12月の売上高は、例年は普段より1割-2割多いが、業界では今年は、昨年の同じ時期より2割程度落ち込むと悲観視している。

消費の主役である若者は、「クリスマス気分ではない」(33歳男性)とか、「景気への不安よりも、政府への抗議の意味で消費を控える」(29歳女性)と低調だ。SNSでも買い物を控える呼びかけが発信されているという。デモの逮捕者は6000人を超え、大規模な過激デモは鳴りを潜めたが、抗議活動は形を変えて続いているというわけだ。

高さ18メートルのツリーが点灯すると言われていた香港島・セントラルの公共広場には未だツリーの姿はない。新年のカウントダウン花火も実施されるか不透明で、異例づくしのクリスマスシーズンとなっている。(了)

■筆者プロフィール:野上和月

1995年から香港在住。日本で産業経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務。1987年に中国と香港を旅行し、西洋文化と中国文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中国返還を見たくて来港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執筆。読売新聞の衛星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、写真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」(幻冬舎ルネッサンス刊)を出版。

ブログ:香港時間
インスタグラム:香港悠悠(ユーザー名)fudaole89

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