<コラム>韓国のチョ・グク法相が辞意を表明、相反する2つのデモ

木口 政樹    2019年10月15日(火) 21時40分

拡大

韓国では今、2つのデモが行われている。1つはチョ・グク氏を支持するデモであり、1つはチョ・グク氏を糾弾するデモである。まったく反対方向のデモが連日とまではいかないけど、3日に1度くらいの割合で行われている。写真は韓国大統領府に掲げられた韓国国旗。

韓国は今、大規模市民デモが華やかなりし時である。2つのデモがある。1つはチョ・グク氏を支持するデモであり、1つはチョ・グク氏を糾弾するデモである。まったく反対方向のデモが連日とまではいかないけど、3日に1度くらいの割合で行われている。

しかもその規模がまたすごい。チョ・グク法相を支持するデモは200万人という発表があるかと思うと、チョ・グク氏を糾弾するデモは300万人という発表。実数のほどは両方ともよくわからない。警察も把握していないもようだ。しかし、ニュースの画面で日本でも伝えられているかと思うけど、人人人の海はあの2002年のワールドカップの時よりもすごいことは一目瞭然だ。見ものというしかない。

チョ・グク氏については、本コラムでも書いた。現在は、彼の妻ジョン・ギョンシムが検察の取り調べを受けているという状況である。取り調べの結果がどう出るのかは今のところわからない。どうもあまり芳しい結果が出ないんじゃないかと世間では騒がれている(つまりお縄となるような決定的な証拠がつかめずに終わるんじゃないかということ)。娘の表彰状偽造に使われたと疑われるノートブックが見つからないようだし。当然本人のジョン・ギョンシムがどっかに隠しているわけだけど、証拠物件がないことには、検察としてもにっちもさっちもいかないわけだ。

とにかく、チョ・グクという男は、法学部の教授だけあって、ありとあらゆる法の抜け道を利用して自分には罪が降りかかってこないようにしてあるようだ。この人が今法務大臣としての任命を文大統領から受けたのだ。なぜこの者を法務大臣にしたかというと、前々から韓国の検察改革について本を書いたりしゃべったりしていてそれが文氏の心をつかんだらしい。同じ釜山出身というのもあるのかもしれない。

韓国の検察のどこをどういうふうに変えたいのか、筆者には今のところわからない。韓国の検察には、どうも強圧的な部分があるらしい。そんなところを改革しようっていうのだろうか。でも、検察ってところは、悪を取り払うのが目的の部署だから、悪に対してはあくまで強圧的でもいいんじゃないのかと筆者などは素人考えとしてはあるんだけれど。

文大統領の就任期間中にやりたいことのうち重要な柱の一つがこの検察改革であるらしい。それを推し進めるにふさわしい人間がこのチョ・グクという人間のようだけど、彼の所属するソウル大の学生でさえ、チョ・グク反対デモを最初にやったくらい、この人は偽善者としての烙印を大々的に押されている人間だ。こういう人間を法務大臣にするってこと自体、正気じゃないとわたしには思われるのだけれど。

しかし、ここがまたわからないところなんだけれど、2019年9月9日、チョ・グク氏が法務大臣の任命を受けてすぐくらいの週末、検察庁の前の道路を出発点として、あるデモ隊(デモ隊発表で200万人)が長く道を埋めたのだが、それがなんと「チョ・グク支持」デモだった。このときには筆者もたまげてしまった。前日までソウル大や高麗大などで大学生の「チョ・グク糾弾」デモが大々的に報道されていたため、デモ隊のニュースを画面で見たときは、「ははあ、やっぱりチョ・グクはだめじゃないか」と思いながら見ていたのだけれど、よく見るとなんと「チョ・グク支持」デモだったのだ。開いた口が塞がらないとはこういうことをいうのだろう。

これじゃ、保守の自由韓国党はもう終わりだなと筆者も思わずうなだれてしまった。決して筆者は自由韓国党支持ではないのだけれど。あれだけ不正に取り巻かれているチョ・グク氏を糾弾しようという党がこの党だからだ。学生らももうなんの力もなくなってしまったのかと冴えない気持ちで1日、2日過ごした。すると次の週末くらいに、今度は検察庁の前ではなくてソウルのグァンファムン(光化門)の道路を埋め尽くしているデモ隊がテレビの画面に映っているじゃないか。これが300万人と報道された「チョ・グク糾弾」デモであった。安心した。不正に対して断固示威を示した学生や市民、そして自由韓国党などが中心となって不正糾弾デモを繰り広げていたのだ。

韓国を二分していたチョ・グク事態。しかしこれも10月14日午後2時、チョ・グク氏が法務相の辞意を表明したことである種の落ち着きが来ることになりそうだけれど、すぐには収まりそうにない。チョ・グク台風が残していった爪痕はそれほどに深い。

話は変わるが、クールジャパンとは、すしとか自販機とかお祭りとか相撲とか、外国の人が日本の断面を見てナイス!と感じるそんな文化のことである。クールコリアという使い方はまだ韓国では一般化してはいないけれど、筆者が思うに、韓国のこのデモの文化はクールコリアのナンバー5以内には入るはずだ。はじめにも書いたように、連日とまではいかないにしても3日おきくらいに両方のデモが行われていたし、これからもまだ続きそうだ。韓国のデモについてそのルーツから探ってみようと思う気持ちもあるので、韓国のデモの源流について、次回に書いてみたい。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

著書はこちら(amazon)

Twitterはこちら
※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携