<コラム>あいみょん『マリーゴールド』PVロケ地は抗日ドラマの聖地

岩田宇伯    2019年9月28日(土) 20時40分

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日本と中国で俳優活動をしている黒木真二氏のツイッターをフォローしているのだが、ある日、「つい最近あいみょんのことを知りました。マリーゴールドのPV、上海の松江の映画村で撮影してたんですね!!!」とTLに流れてきた。

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●『マリーゴールド』PVが撮影された上海影視楽園

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日本と中国で俳優活動をしている黒木真二氏のツイッターをフォローしているのだが、ある日、「つい最近あいみょんのことを知りました。マリーゴールドのPV、上海の松江の映画村で撮影してたんですね!!!」とTLに流れてきた。

このPVロケ地、中国は上海市松江区にある上海影視楽園という撮影所は、いままで数多くの抗日ドラマが撮影され、現在もなにか撮影されているという、いわば抗日ドラマの聖地みたいなものなのだ。あいみょんファンは単なる古い町並みのセットに見えたかもしれないが、PVエンドロール(00:05:07-)に抗日ドラマでよく見る国民党軍のトラックが登場したことにお気づきだろうか?(画像1 『マリーゴールド』PVより)

実は上海影視楽園で『マリーゴールド』PVのロケが行われたことは、昨年時点で、たまたま見た芸能ニュースで知っていた。が、この黒木氏のツイートをきっかけに、あらためて『マリーゴールド』PVの撮影ポイントを検証してみようと、筆者のHDDに保存してある抗日ドラマフォルダの動画ファイルを漁ってみた。フォルダ内には抗日ドラマだけでも作品数で数百、それぞれ30話から60話とかなり多く話数がある。中国にはここ上海影視楽園のほか、無錫、長春、さらに「中国のハリウッド」と称する横店など様々な撮影所がある。多くの撮影隊が利用する浙江省の横店らしきセットは大体わかったのだが、抗日ドラマフォルダを3時間ほどランダムに漁っても、さっぱりPVと同じ風景を見つけることはできなかったので途中でイヤになってしまった。私、まったく根気はありません(笑)。「さすがに無理あきらめた」、とツイートしたところ、当の黒木真二氏より、自身の出演作『王大花革命的生涯』はこの上海影視楽園でもロケが行われたと教えていただいた。

●あいみょん、海外は台湾に続く上海公演

先日、ビルボードジャパンより、シンガーソングライターあいみょんの『マリーゴールド』、単曲でのストリーミング再生数が1億回を超えたと発表された。このニュースによるとこれは日本国内アーティストでは初ということ、さらにストリーミングだけではなくプロモーションビデオの再生も1億回越えというヒットぶりである。また、昨年末には『NHK紅白歌合戦』でもこの『マリーゴールド』を披露。普段あまりJ-POPと接点のない筆者のような者でも、曲と名前ぐらいは知っているというほどなので、今を代表する若手シンガーソングライターの大物だ。

2019年7月には昨年の台湾に続き、2度目となる海外公演を中国大陸にて行う。中国大陸初の会場に選ばれたのはPVを撮影したロケ地、上海。公演セットリストを見るとアンコールに『マリーゴールド』を持ってくるという、PVロケ地、上海のファンを意識した気の利いた演出となっていた、さぞかし盛り上がったことだろう。

ライブ終了後、あいみょん本人が『マリーゴールド』PVそのままの姿でスケートボードに乗り、出待ち集団の前に登場、最後までファンサービスした。(画像2 出待ちファンの動画より)

●『マリーゴールド』PVに登場する抗日ポイント

そこで『マリーゴールド』PVに登場する上海影視楽園のポイントを検証してみた。上海影視楽園の地図を見るとおもに延安路と南京路で撮影されたようだ。いちおう撮影所のメインストリートは第1次オープンよりある南京路となる。延安路は2012年の拡張工事により完成した新しいエリアだ。最近のニュースではまた拡張を行うと発表され、2020年5月めどに1000平米を越えるスタジオを3棟増設、他の撮影所ともコラボできるよう最新のハイテク設備に投資するという話しだ。

広い撮影所といえども、いろいろな撮影チームがロケをしているため、上記2か所が『マリーゴールド』PVの撮影ポイントに割り当てられたようだ。もっとも多く尺があるのは、2番のサビから始まるあいみょんがペニーボードに乗るシーンに代表される延安路。次に新世界ビルのある南京路と西蔵西路の交差点となる。この民国時代の繁華街を模した南京路は多くの抗日ドラマに登場する。(画像3 地図上PVのタイムテーブル)

前述の『王大花革命的生涯』では、上海ではなく遼寧省大連の設定であるが、日本軍と東北抗聯スパイの水面下の戦いに南京路のセットが大活躍している。(画像4 『王大花革命的生涯』より憲兵隊木戸課長役黒木真二氏)。この『王大花革命的生涯』、中国ではコメディ女王といわれるヤン(闫)妮主演の通り、抗日ドラマといえどコメディ仕立てとなっており、派手な銃撃戦やアクションはあまりなく、トンデモ抗日ドラマとは一線を画す良質な作品なので、ぜひご覧いただきたいと思う。(画像5 『王大花革命的生涯』より主人公が歩く延安路)

そのほか、サルベージできた作品としては超超超トンデモ抗日ドラマ燕双鷹シリーズの国共内戦版『飛虎神鷹』、魔術師が魔都上海でヤクザの大親分&革命戦士に昇り詰める『魔都風雲』などといったいずれも上海が舞台の作品群。もちろんそれらの作品でも、あいみょんの『マリーゴールド』PVに登場するポイントがはっきりとわかる。(画像6 『飛虎神鷹』より)(画像7 『魔都風雲』より)

●篠田正浩監督『スパイ・ゾルゲ』でも

この『マリーゴールド』PV抗日ポイントをツイートしたところ、フォロワーの方から日本映画の『スパイ・ゾルゲ』(2003)もここでロケをしたと教えていただいた。さっそくDVD

を購入し、検証してみた。00:17:20から00:34:15までの昭和6年上海でのシーン、やはり上海影視楽園のメインストリート、南京路「先施公司」、「新世界」交差点周辺での撮影だ。そのほか、江南の田舎町を再現した「浙江路橋老街」でのシーンも登場した。15分ほどで上海シーンは終わりモスクワシーンに移ってしまうのだが、エキストラの数も多く、気合の入った撮影となっている。(画像8 新世界交差点シーン)

普段日本映画を観ないのだが、この上海衛視楽園でロケをしている点では、変な親近感がわく。00年代以降の昭和戦前の中国が登場する日本映画は、抗日ドラマ、いや、中国ドラマ、中国映画ファンは要チェックだ。もしかしたら、そのシーンはいつもyoukuや愛奇芸で観ている作品と同じく、中国で撮影されたものかもしれない。

■筆者プロフィール:岩田宇伯

1963年生まれ。景徳鎮と姉妹都市の愛知県瀬戸市在住。前職は社内SE、IT企画、IT基盤の整備を長年にわたり担当。中国出張中に出会った抗日ドラマの魅力にハマり、我流の中国語学習の教材として抗日作品をはじめとする中国ドラマを鑑賞。趣味としてブログを数年書き溜めた結果、出版社の目に留まり『中国抗日ドラマ読本』を上梓。なぜか日本よりも中国で話題となり本人も困惑。ブログ、ツイッターで中国ドラマやその周辺に関する情報を発信中。

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