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<コラム>滝のある世界遺産の蘇州庭園「獅子林」と、ひっそりと住宅街にある宝塚「丁字ヶ滝」を訪ねて

工藤 和直    2019年8月8日(木) 23時40分

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中国四大庭園とは、中国にある四つの歴史を有する庭園で、いずれもユネスコ世界遺産に登録されている。そのうち何と半分が蘇州にある。

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中国四大庭園とは、中国にある四つの歴史を有する庭園で、いずれもユネスコ世界遺産に登録されている。北京「頤和園」、承徳「避暑山荘」、蘇州「拙政園」、蘇州「留園」、前二つは華北の皇家園林(中国皇帝所有の庭園)、後の二つは江南蘇州の私家園林(中国の貴族・高位官僚や富裕な商人・地主所有の庭園)である。何と半分が蘇州にある。

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蘇州には1997年に登録された四大庭園(拙政園・留園・網師園・環秀山荘)以外に、2000年に追加登録された5ヶ所の庭園(滄浪亭・獅子林・芸圃・耦園・退思園)、あわせて9ヶ所がユネスコに登録されている。

中国庭園の大きな特徴は、池・石・木・橋・亭、五つの要素を組み合わせて、世の中に存在しない仙土・桃源郷を現実化させることである。いわゆる“神秘的”要素が重要であるがゆえに、太湖石のような奇妙な岩石を多く使い、多彩的でカラー色が強く“派手”である。その反面、日本庭園は唐時代に中国を模倣した庭園がスタートであったが、仏教思想の浄土、その後禅文化による“わびさび”から来る“象徴的”要素が強く、太湖石を使わずに石灯篭・手洗石などの石物を用い、モノクロ色で“地味”であることを強く表す庭園が多くなった。その意味で日中庭園は対照的である。

筆者は庭園鑑賞には、“彩色”以外に“音響”の要素を重要視している。日本庭園によくある滝(瀑布)などの水の音に非常に興味を持っている。中国は日本と異なり大地が平面であり降水が少ないので、どうしても“池”はあるが岩から落ちる“滝”は少ない。中国各地にある数多くの庭園の中で、滝があるのは獅子林(元代1342年創)と環秀山荘(清代1807年創)である。蘇州城内北部にある蘇州博物館から南に200m下った獅子林を頻繁に訪れ、“水の音”を楽しんだものだ(写真1)。滝は獅子林の北西「聴涛亭」横にある。獅子林は高所から六段の岩を下って自然落下させる5mほどの滝であり、現在は池からポンプアップしているが、創建当初は聴涛亭の南にある問梅閣の屋根に人工池(雨水と人力で水を運ぶ)を作り、そこから水樋を通し上部から流したという。環秀山荘は高所の湧水を岩の中を落下させるものだ。

宝塚の自宅近くに一後川(いちごかわ)という小川がある。この川が武庫川左岸に流れ込む河口対面に、花崗岩でできた見返り岩がある(写真2右)。この岩の左奥(県道337号線の山側)に、まったく見えない「丁字ヶ滝」が住宅市街地の中にひっそり存在している。

戦前から宝塚温泉は有名であったが、「宝塚温泉八景」の一つとしてこの滝があった。阪急宝塚駅から徒歩20分程度であるにもかかわらず、まったく訪れる人もなく見捨てられた高さ10m程の滝である。県道脇から昔の階段跡(写真2左)を下り、足元の悪い川面から奥に20mも行けば滝の音が聞こえる。昔は“長寿亭”というお茶屋もあり、丁の字のように水が落ちるので“丁字ヶ滝”といった(写真3左)。お茶屋の横に涼み用の隧道(写真4)があり、その中で宝塚炭酸水を飲みながら納涼ができたという。現在は鬱蒼と茂った木々の中に、その姿を確認することができる(写真3右)。ユネスコ文化遺産の滝も“好し”、住宅街に隠れた茂みの中の幻の滝も“好し”である。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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