<コラム>韓国が先に譲歩しなければならない

木口 政樹    2019年7月25日(木) 23時20分

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今回ご紹介する内容は、韓国、中央日報に載っていたもので、梁三承という法曹人とのインタビュー記事である。資料写真。

前号では、「徴用工裁判は日本の最高裁の判断が基礎になっている」というタイトルのもと、 国と国とでは請求権の問題は解決されているが、個人的には請求権が残っているから個人で解決するようにという日本の最高裁の判決があるという内容をご紹介した。

今回は、これと180度違った内容である。いろいろの立場があるということである。それだけこの問題は微妙、ということであろう。今回ご紹介する内容は、韓国、中央日報に載っていたもので、梁三承(ヤン・サムスン)という法曹人とのインタビュー記事である。

以下の内容は、この梁三承さんの述べた話をもとに筆者の文章でお届けする。

この人は、2005年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府が作った「韓日会談文書公開の後続対策関連の官民共同委員会(以下、官民共同委員会)」の共同代表を務めた人である。共同代表のもう一人というのは、現在韓国与党・トブロ民主党の党首をしている李海瓚(イ・ヘチャン)氏である。

2005年、「官民共同委員会」が、「個人の請求権は1965年、韓日請求権協定に反映された」つまり個人の請求権はすでに解決済みという発表をした。この発表に対して、2012年5月、韓国の大法院(最高裁判所)がこれを覆す判決をし、2018年10月にさらに大法院がこれを確定する判決を出すや、2019年7月1日、日本政府は韓国に対する一部品目の輸出規制策を出した。

梁三承さんは、「大法院の判決は尊重すべきだ」としながらも「日本企業の財産差し押さえに走っては困る。韓国政府は早急に日本政府と会って外交的に解決しなければならない」と強調する。

梁三承さんの基本的なスタンスは、1965年の韓日請求権協定に関して、賠償問題は解決済みという考え。ただし、1965年の韓日請求権協定では、日本軍慰安婦、サハリン朝鮮人、朝鮮人原爆被害者問題の3つの項目は除外されていて、これが問題をこじらす元凶になっているのではないかということ。

ただし同協定に対して法律的・合理的にアプローチするならば、1965年協定当時、強制動員された人たちの私的請求権まで解決されたと見るのが正しいというのが支配的な考えだったという。2005年の決定当時、委員会内で葛藤はほとんどなかった。異見や論争もあまりなかった。

梁三承さんはその後も、強制徴用などの問題に関して関心を持ち続け、2010年12月、日本弁護士連合会ととともに韓日政府の日本植民地支配期の被害問題の解決を促す共同宣言を発表したりもした。

そうしたなか、韓日両国政府と企業が共同で基金を作ろうといういわゆる「2+2」解決策を提案したこともある。「2+2」というのは、日本政府+日本企業(2)、韓国政府+韓国企業(2)の「2+2」である。

今は、「1+1+α(韓国政府)」というアイデアもある。これは日本企業(1)、韓国企業(1)、それに韓国政府(α)の「1+1+α」である。でもこの案は、今の日本政府に届きそうにない。後々、両国関係が好転した時に提示できるだろうということ。

この難問の解決は、外交と国内問題のツートラックで解かなければならないと梁三承さんは考えている。

1960年代のキューバミサイル危機をみてみよう。当時アメリカとソ連がただちに核戦争でも起こるかのように一触即発の状況だった。その一方でケネディ大統領は水面下で自分の弟をソ連に送りソ連と交渉させた。ソ連からキューバミサイル基地撤収の約束を得るや、米国はトルコのミサイル基地を撤収させた。外交とはそういうものだ。

今度は韓国が先に譲歩しなければならない。韓国が10の損をして日本は5程度損をした後、受け入れられれば、次は韓国が5の損をして日本が10損するというように。お互いに気持ちを和らげながら、一段階一段階解いていかなければならない。内部的には韓国政府が被害者を尋ねて十分に補償しなければならない。被害者らは「金がほしいのではなく日本の謝罪がほしいだけだ」としながらも、大法院の判決を土台として強制執行に乗り出そうとするだろう。(すでにそうやっているけれども)

そのときは、韓国政府は、「皆さんの気持ちはわかる。本当にすまない。私たちも謝罪してもらいたい。しかし現実的に難しい部分も理解してくれ。私たちがまず最初に補償するからこれで気持ちを落ち着けてくれ。我々が必ず日本政府を説得し解決していく」となだめるべきだ。そのように国内問題を解決していけば、日本も韓国側の誠意を見て努力するだろう。その道しかない。

韓国政府は最近「義兵」だの「チュクチャンガ(竹槍歌)」などの単語を用いながら反日、抗日に乗り出すことを促しているが、これは非常に遺憾だ。下手中の下手、最も低級だ。一部の国民は痛快だろうが、国政運営では一番低劣なやりかただ。そんな方向で押し進めては実効もない。韓国の中で日本商品不買運動が広がっているが、これもいいとは言えない。気分は晴れるかもしれないが、実際に日本に及ぼす経済的打撃は微々たるものだ。韓国で日本ビールを飲まずユニクロで買わなかったら、本当に日本経済が苦しくなるだろうか。反対に日本から同じ方法でやられれば、韓国が受けるダメージ(不利益と損害)の方がはるかに大きい。強気だけの姿勢は、韓国にとってはいい結果をもたらさない。韓国が先に譲歩しなければならない。梁三承さんはそう考えている。

鬼の首でも取ったように日本製品不買、不買と叫んでいる人々の陰にはこういう落ち着いた考えをもつ韓国の人もいるということを、日本の我々は忘れてはならない。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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