<直言!日本と世界の未来>トランプ大統領に「米国ファースト政策の是正」進言を=日米首脳会談で安倍首相に期待―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2019年5月26日(日) 7時0分

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トランプ米大統領が令和になって初めての国賓として来日。安倍首相は27日には11回目の首脳会談に臨む。トランプ大統領の「米国ファースト」政策は世界経済を混乱させており、「是正」を進言していただきたい。

トランプ米大統領が令和になって初めての国賓として来日した。安倍首相はゴルフや大相撲観戦でトランプ氏をもてなし、27日には11回目の首脳会談に臨む。強固な「日米同盟」を内外にアピールする絶好の機会となるが、果たして成果が伴うかどうか。トランプ氏の「米国ファースト」政策は日本や世界の経済を混乱させており、「是正」を進言していただきたい。

日米首脳会談は4月のワシントン会談、6月末に大阪で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議と合わせ、3カ月連続になる。

実業家出身で「ディール(取引)交渉のプロ」を自任するトランプ大統領は、外交でもトップ交渉重視のスタイルを貫いているようだ。不断にトランプ氏に連絡を取り、アピールを欠かさない安倍首相だが、多少の危うさも付きまとう。

米国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱、日本が切望した復帰は実現せず、対北朝鮮政策でも圧力維持を求める。日本の主張が完全に共有されているとは言い難い状況が続いている。

安倍首相はトランプ氏との蜜月ぶりを誇示しているが、トランプ氏は感情の起伏が激しく、安定性に欠けるというのが、もっぱら流布されている人物評。中国の習近平国家主席を「いいやつだ」と評価し、北朝鮮の金正恩委員長と「恋に落ちた」と語ったこともある。その一方で、これらの国々に対し厳しい経済制裁を科したり軍事圧力を強化したりした。同盟国のトルコも同様だ。トランプ政権下では、首脳同士の関係が2国間関係の現状を直接反映しないことの方が多い。

16年大統領選でトランプ氏は、対日貿易赤字や防衛負担を巡り日本を繰り返し批判したのは記憶に新しい。20年秋の大統領選が近づけば、対日圧力を強める懸念もある。

4月の日米首脳会談の後、トランプ氏は記者会見で「日米の貿易交渉は5月にも終了する」と“爆弾宣言”し、参議院選挙後に妥結させたい安倍政権を慌てさせたという。その直後に開かれた集会では、トランプは支持者に対して、トヨタなどの日本企業がアメリカの自動車工場に400憶ドル(4兆6千億円相当)の対米投資を行うと安倍首相が約束したと暴露している。

トランプ大統領の日米貿易協定を早期に妥結したいとの意向は、次期大統領選挙で勝利するために死活的に重要な中西部の農民票を獲得するための選挙対策として重要だったからではないだろうか。

「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領の保護主義的な政策は、世界のサプライチェーン網を破壊。世界全体の経済を混乱させ、日米欧・アジアの株式市場の下落につながっている。

今回の日米首脳会談では、安倍首相から自動車関税(通常車2.5%、トラック25%)の即時撤廃や鉄鋼やアルミに対して安全保障を理由として行った関税引き上げの撤回を要求してもらいたいものである。トランプ氏に行き過ぎた「自国ファースト政策」の見直しを直言することこそが真の「友人」というものだろう。

<直言篇88>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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