オスカー受賞作もピカチュウの可愛さに勝てないのはなぜ―中国メディア

人民網日本語版    2019年5月17日(金) 19時40分

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中国映画市場では「アベンジャーズ/エンドゲーム」の勢いがなお続き、「ローマ」や「半辺天」などの芸術系作品も相次いで公開されたが、これらのいずれもピカチュウの可愛さに負けを喫している。写真はピカチュウ。

中国映画市場では「アベンジャーズ/エンドゲーム」の勢いがなお続き、ダークホース的な興行成績を上げている「存在のない子供たち」も興行収入3億元(1元は約16.0円)に向かって突き進み、「ローマ」や「半辺天」などの芸術系作品も相次いで公開されたが、これらのいずれもピカチュウの可愛さに負けを喫している。先週金曜日から世界的にも有名なキャラクター・ポケットモンスターのゲームを実写映画化した「名探偵ピカチュウ」の公開が始まると、3日連続で当日の興行収入の半分以上をかっさらい、「アベンジャーズ」をトップの座から引きずり下ろし、可愛さで観客の心をわしづかみにした。「北京日報」が伝えた。

▽ピカチュウの可愛さが観客の心をわしづかみ

「Mr.インクレディブル」と「ミニオンズ」に続き、「名探偵ピカチュウ」は「可愛さは正義」というこの世のルールを改めて証明してみせた。映画の中のピカチュウは米スーパーヒーローキャラクター「デッドプール」の中年男性の声でしゃべるが、多くの観客は毛がふさふさした外観、丸っこい頭、稲妻の形をしたしっぽを見て、思わず「可愛い!」と驚きの声を上げる。この可愛いさのパワーで10日の公開初日には興行収入が7497万元に達して、大陸部のトップになり、興行収入全体のうち56.1%を占めて、「アベンジャーズ」の16日連続首位の記録をストップさせた。12日午後5時現在、累計興行収入は2億5800万元に達し、オンライン映画チケット販売大手・猫眼微影は、「最終的に6億元に到達する」と予想している。

「アベンジャーズ」とレバノンの感動的な作品「存在のない子供たち」は公開からだいぶ経つが、まだその勢いは続いている。「アベンジャーズ」は先ごろ興行収入が40億元の大台を突破したが、大ヒットした「流浪地球(The Wandering Earth)」を追い越すのは難しいとみられている。「存在のない子供たち」は口コミで非常に評判が高く、累計興行収入は2億3500万元に達した。先週金曜日公開の「ローマ」や「半辺天」などの文芸路線は興行収入という点ではまったく振るわず、最高の「ローマ」でも300万元に達していない。

北京市の広安門電影院の張■市場マネージャー(■は品の口が水)は、「『名探偵ピカチュウ』が最も好調な原因は特撮効果の素晴らしさにあり、ポケモンたちの高いリアリティは、関連グッズのブーム到来を確信させる。『存在のない子供たち』は『アベンジャーズ』の隙を突いて生まれたダークホースで、勢いは相当なものがある」としている。

▽可愛さ以外は特に語るべきものなしとのコメントも

様々な姿かたちのポケモンが次々登場し、多くの観客が子供の頃に見た二次元のマンガアニメのイメージが、映画の中で立体的なキャラクターとして動き回っている。この卓越したキャラクターデザインこそ、「名探偵ピカチュウ」が大人から子供まで大勢の観客を獲得した大きな原因だ。

映画評論家の燕山刀客さんは、「ピカチュウというキャラクターが世界を席巻して数十年の間に、アニメ、ゲーム、玩具などどれも好調な売れ行きで、ないのは実写版の映画だけだったので、この『名探偵ピカチュウ』は空白を埋めたものといえる。映画は原作の雰囲気をしっかりつかんで、仮想と現実が混じり合い、生き生きとした実写版ポケモンの世界を作り出した。ピカチュウだけでなく、コダックなどのポケモンのデザインも非常に可愛らしく、大勢の女性観客は可愛いと思う気持ちを抑えられないだろう。(制作会社の)米映画会社レジェンダリー・ピクチャーズは今回は以前の『ウォークラフト』のようにゲームの映画化で大失敗するということにはならなかった。少なくとも100分間という限られた時間内でポケモンの世界観をよく伝えている」と述べた。

しかし可愛さ以外に、この映画には特に語るべきところはなく、子供向けのストーリーには粗さが目立つ。あるネットユーザーは、「この映画は最初から最後まで、ポケモンがメインのストーリーのスパイスになり、背景になっているだけの作品で、全体としてものすごくちゃちだ。始まってから10分でポケモンのゲームについて駆け足で説明するが、その後のストーリーはゲームの設定とは何の関係もない。ライムシティに行くくだりは(ディズニー映画)の『ズートピア』にそっくり。『名探偵ピカチュウ』はフィルム・ノワールのムードをたたえた探偵ストーリーで、ディストピアの陰謀の世界とみんながよく知っている可愛いキャラクターを一つに集めようとしたのだろうが、結果的にどの部分も語るべきものはない」とバッサリ切り捨てている。

▽オスカー受賞作もピカチュウの可愛さには勝てず

世界で賞を120個以上獲得し、「賞取りマシン」などと言われた「ローマ」だが、中国の映画館に登場すると業界関係者や映画ファンの間だけで人気になり、主流の観客クラスターの間でブームは起きていない。この映画の配給会社は世界的に有名なストリーミングメディアのネットフリックスで、海外では主にネットフリックスのサイトを通じて上映されたため、今回の中国市場進出では全国芸術映画放映連盟の独自の配給網でのみ上映されながら、スクリーンの割り当て数は世界最多になった。

映画評論家の韓浩月さんは、「この作品の最大の見どころはアルフォンソ・キュアロン監督の子ども時代の思い出をほぼ完全に再現したところにある。商業映画のスタイルながら周囲をぼかして表現したいものを際立たせる中国絵画の技法を重視したり、強いストーリー性を追求したりするのではなく、1人の子どもの視点で見たある家庭とその時代の思い出を描いている。このような作品はとても少ないし、優れた監督でなければ撮れるものではない。一連のカギを握るシーンは叙事詩のムードにあふれ、たとえば市内が車で渋滞した時の大きなクラクションの音、終わりの方で子どもたちが海でおぼれそうになるシーンなど、表現の手法は非常に古典的で、出会うことはできるが求めることはできない叙事詩のムードが押し寄せてくる」と評した。

しかし、芸術的に自己を追求し、善や美をつきつめようとすれば、大勢の観客を失うという代価を支払うことになりがちだ。暮らしを散文的に表現する「ローマ」は観客に高いハードルをつきつけ、観客は心を静め、全神経を研ぎ澄ませてこの映画を見なければならない。しかしストレスフルな社会において、多くの人は映画に気晴らしや娯楽を求めている。そのためピカチュウの可愛さがより多くの観客を引きつけることは間違いない。前出の韓さんは、「『トゥモロー・ワールド』や『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を撮ったキュアロン監督は商業映画を楽々と作り上げることのできる人だが、『ローマ』では映画の芸術性を極限まで追求する方法を選んだ。中国の観客がまだ監督のようなレベルに達していないだけで、これから観客を育てていかなければならない。また『グリーンブック』などのオスカー受賞作と比べても、『ローマ』はストーリーが平板で、中国の観客との接点はほとんどなく、こうしたことが人気の出ない一因になったと考えられる。中国の観客はやはりドラマティックで、激しいストーリー展開の映画を好むからだ」としている。(提供/人民網日本語版・編集KS)

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