工藤 和直 2019年5月9日(木) 20時20分
拡大
朝鮮王朝時代から発展を遂げたソウルであるが、1910年(明治43年)韓国併合以降の36年間にソウル市内に多くの日本企業・政府が近代建築物を作り、その多くが現存している(地図1)。(表1~4)に今と昔の日本の建造物を写真で比較してみた。
(1 / 6 枚)
京城府(けいじょうふ)は、朝鮮王朝の漢城府に引き継いで置かれた日本統治時代の行政区域、現在のソウル特別市にあたる。1394年11月26日、朝鮮王朝の太祖“李成桂”は開城から漢陽へ遷都、1395年(太祖4年)6月6日に漢陽府を改め漢城府とし、以来およそ500年にわたって首都となった。1910年(明治43年)の韓国併合後、朝鮮総督府地方官官制に基づき「京城府」に改称された。朝鮮半島においての「府」は日本の「市」に相当する。誤って京城市と呼ばれるが、京城市という市は、歴史上存在しない。
【その他の写真】
大韓民国が独立した1948年(昭和23年)には首都「ソウル特別市」が誕生した。“ソウル”は朝鮮固有語では“みやこ”を意味し、朝鮮民族はこの地を“ソウル”と呼んできた。李朝時代までは漢字で“京都”と書いて“ソウル”と読んでいたが、現代の韓国・朝鮮語では漢字の訓読が廃止されているため“ハングル”のみで表記する。
京城の玄関は京城駅であるが、赤煉瓦駅舎は今も使われている。かつて駅前に路面電車が走っていた(写真1)。南大門(3)から北の総督府に向かう太平通り(太平路)、三越百貨店から鐘路にかけての南大門通り(南大門路)、三越と京城郵便局(11)の間の繁華街である本町通り(忠武路)、今のロッテ百貨店から右折すると黄金通り(乙支路)、もう一本北の鐘路通りをそのまま東に行けば東大門に到る。地下鉄4号線になる退渓路は三越以東が昭和通りと呼ばれ、戦後になってソウル駅まで延長された。
日本人観光客が宿泊・ショッピングしているロッテ百貨店やロッテホテルは、戦前は朝鮮殖産銀行と半島ホテルであった。そのロッテの対面には、京城電気(韓国電力公社19)や三井物産京城支店(20)が今も残っている。ソウル銀座とも言える“明洞”はかつて“本町通り”と言う一番の繁華街であった。10数年前は日本人観光客が多く見られたが、現在は中国人観光客も多い。
現在も使われている建物としては、三越百貨店(新世界百貨店8)、隣の朝鮮貯蓄銀行(スタンダードチャタード銀行10)、その対面の朝鮮銀行(韓国銀行1)、京城府庁(ソウル市庁18)、京城電気(株)(韓国電力公社19)や明洞にある明治座(明洞芸術劇場7)などがある。10年前にあったスカラ座(若草座)はStay-Bホテルとなっている。朝鮮殖産銀行跡はロッテデパートになり、半島ホテル跡はロッテホテルになっている。朝鮮ホテルは現在、ウエスティン朝鮮ホテル(2)となった。京城郵便局は今、ツインビルのソウル中央郵便局(11)となっている。
名門京城中学(4)は元々の慶煕宮に戻り、京城第一高女(5)は整地されているが、写真中央にある大きな木は昔からあったであろうと想像できる。この貞洞には多くの外国大使館があり、ロシア領事館跡もその一つである。両班の子女が通っていた梨花女子高(6)もここ貞洞にある。
明洞ソウルプリンスホテルから南山小学校南山手にあった東本願寺(17)は、現在ソウルボランティアセンターとなっているが、周囲に残る石柱(玉垣)に昔の寺院跡を残す。芸術洞にソウルユースホステルがあるが、この北に日本公使舘(韓国総監官邸)があった。その玄関付近に韓国併合の裏工作を担当した会津藩出身「林権助」の銅像があったが、今では架台が逆さに埋め込まれ、日韓の負の歴史をまざまざと感じる。韓国併合前、南大門路の三越百貨店(8)の場所に在京城日本領事館(1896年創建)があった。
■筆者プロフィール:工藤 和直
1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。
この記事のコメントを見る
Record China
2019/4/10
2019/3/14
2019/3/6
2019/2/6
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る