中国のモビリティ革命を担う交通系シェア、電動アシスト自転車とカーシェアリングに明暗

高野悠介    2021年3月11日(木) 10時20分

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規制の厳しい日本では、交通系シェアエコノミーは発達していない。中国では役割分担が明確になった。1~3キロはシェアサイクル、3~10キロまではシェア電動アシスト自転車、10キロ以上はカーシェアリングだ。

規制の厳しい日本では、交通系シェアエコノミーは発達していない。中国ではすでに役割分担が明確になった。1~3キロまではシェアサイクル、3~10キロまではシェア電動アシスト自転車、10キロ以上はカーシェアリングである。

これらは無人運転と並び、モビリティ革命の最前線を担っている。それぞれの現状と問題点を探ってみよう。

■シェアサイクル…大手系の3つどもえ

中国シェアサイクル業界の栄枯盛衰は、実にダイナミックだった。2018年下半期の業界シェアは、ofo…70%、摩拜…25%、その他…5%と2強時代だった。今ではofoは夜逃げ、摩拜は生活総合サービス大手・美団に吸収された。ofo破綻の際、廃棄自転車の山や不良債権を抱えた自転車メーカー、保証金未返還の顧客など、多くの犠牲者を出した。

現在は、メンバーが入れ替わり、青桔単車(滴滴出行系)、哈囉単車(アリババ系)、美団単車(美団系)の3つどもえの戦いになっている。結局資金力のある大手系に集約された恰好だ。哈囉を取り上げよう。

哈囉単車…2016年に上海で設立。アリババの信用スコア「芝麻信用」650点以上の人に保証金を免除した。その他、臨時停車15分以内は、時間カウントしない、公共交通の終わった深夜は無料にするなど、次々に新基軸を打ち出した。そして上位2社が混乱する中、じわじわシェアを拡大、業界トップに立つ。現在の登録ユーザーは4億人、全国460都市に展開、累計走行距離は80億キロに達した。アント・グループが出資。直近では、シェア電動アシスト自転車、ライドシェア(配車アプリ)、買い物代行、生鮮食品ECにまで手を広げている。配車アプリトップ「滴滴出行」と全面対決するつもりだろう。2021年中の上場がうわさされている。

■電動アシスト付き自転車…好調もシェアサイクルの二の舞を懸念

中国の電動アシスト付き自転車の所有量(2019年)は、2.5億台という。別のメディアでは3609万台とあり、こちらの方が正確だろう。おそらく2.5億台には、原付クラスの電動バイクを含んでいる。

シェア業態は2017年から始まった。最新の定義(2019年4月)では、重量55キログラム以内、出力400ワット、バッテリー電圧48ボルト、最高時速25キロメートルである。販売価格は日本円で1万5000円から5万円くらい。普及の中心となっているのは、販売ではなくシェアである。

シェア電動アシスト付き自転車も、哈囉助力者、青桔電単車(滴滴出行系)、美団助力車という、シェアサイクルと同メンバーによる三つどもえである。2017年上半期、中小メーカーによる各地の動きがあった。成都合肥、北京などの都市で、当局との調整が続いた。中止命令を受けたケースもあった。本格化したのは同年9月、哈囉が「哈囉助力車」アプリをスタートさせてからだ。哈囉は先行者利益を享受し、現在もトップを走っている。全国400都市で展開、累計走行距離は80億キロ。

2020年6月の平均利用台数は、哈囉助力車400万台、青桔電単車300万台、美団助力車100万台だった。2020年中に、哈囉と青桔は100万台、美団は200万台を新たに投入した模様だ。これは一時のシェアサイクルを超えるスピードという。二の舞にならなければよいのだが。

■カーシェアリング…市場停滞、経営切迫

カーシェア業態は2015年、地域を絞ったテスト運用が始まった。その後200社もの企業が手を挙げた。当局は2017年、「汽車租賃業健康発展に関する指導意見」を制定した。これにより奨励策や管理規定が明らかになると、ベンチャー投資資金が殺到した。しかし2018年には、減少に転じ、翌2019年には早くも谷底へ落ち込んだ。身売り、撤退、経営悪化する企業が相次いだのである。業界トップ企業・GoFun出行の現在を見ていこう。

GoFun出行は、国有交通企業・首汽集団が2016年に立ち上げたGoFun科技の運営するカーシェアリングアプリである。業界各社が低迷する中、ファーウェイフォルクスワーゲン、奇瑞、威馬汽車などと提携し、極めて順調に見えた。北京、広州、成都など巨大都市を含む、全国80都市にまで展開した。そのうち40都市は直営車両で運営し、25都市で黒字化を達成したという。

2020年10月には、2017年以来のシリーズB融資を行い、カーシェアリング事業は新しいステージに入るとアナウンスした。個人ユーザーが車を貸し出すC2Cモデルを導入し、直営からプラットフォームへの移行を目指すとした。

ところが2020年になって、この資金調達の不調が明らかとなった。さらにCEOの辞任、従業員給与の遅配、レイオフが伝えられている。稼働都市は80から50へ減少、実際は12ともいわれている。経営は切迫してきた。

■モビリティ革命…シェアリングは直近の焦点

GoFun出行のC2Cモデルが実現すれば、配車アプリとの競合になるはずだ。マイカーという個人資源の使い道が多様化し、資本効率を高めることができる。

シェアモビリティは、中国モビリティ革命の、所有と使用に関するさまざま実験を実行中、と解釈できる。主役の自動運転はすぐに実現するわけではないため、シェアモビリティの課題は、直近の焦点といえるだろう。急成長の電動アシスト付き自転車と、ピンチに陥ったカーシェアリングに注目しておきたい。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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