<コラム>中国海軍の要となるレーダーを米軍に売却、軍事技術の流出が止まらないウクライナ

洲良はるき    2018年9月29日(土) 22時10分

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先日、ウクライナの企業が、アメリカ空軍に対して、中国海軍の鍵となる一連の「バンドスタンド」艦載多機能レーダーシステムを引き渡したという。写真は中国海軍。

先日、ウクライナの企業が、アメリカ空軍に対して、中国海軍の鍵となる一連の「バンドスタンド」艦載多機能レーダーシステムを引き渡したという。ウクライナメディアがリークした、と中華網(2018年9月19日付)が報じている。

今回ウクライナがアメリカに提供した「バンドスタンド」レーダーは、旧ソ連が開発した艦船用多機能遠距離観測レーダーだ。中国が1990年代にソ連から2隻購入した現代級駆逐艦には、「バンドスタンド」レーダーが採用されていた。中国軍は「バンドスタンド」レーダーに出会って、非常に深く感銘したという。そして「バンドスタンド」レーダーを中国が国産化したのが「366型」レーダーだ。国産化にあたっての主な変更点はデータ交換システムと操作卓だったといわれる。

「366型」レーダーは、中国最新の054型フリゲート、および052D型駆逐艦に採用されているもので、水平線以遠を観測する能力がある。巡航ミサイルはレーダーに探知されにくくするために海面すれすれの高度を飛ぶが、そのような巡航ミサイルを20キロメートル~30キロメートルの距離から探知できると言われている。

中華網の記事によると、アメリカがウクライナから購入した「バンドスタンド」レーダーシステムはたった1台だけだという。アメリカの目的は明確で、レーダーをテストし、分解して、性能や弱点をチェックするためだという。記事では、漏洩(ろうえい)した情報により中国やロシア海軍の主力艦は、危機に直面するとしている。

ウクライナの中国への技術流出が懸念されつづけてきたことは、これまでのコラムにも何度か書いた。かつてウクライナは、ソ連時代の一大重工業地帯で、ソ連の多くの軍需産業を担っていた。しかし、ソ連崩壊から、ウクライナ危機に至って、ウクライナの軍需産業はロシアという大きな市場を失った。ウクライナ軍の規模は小さく、内需だけでは限界があり、ウクライナの軍需産業は国外に新たな顧客を求めることになる。

現在のウクライナは非常に複雑な立ち位置にある。今年6月には、ウクライナの立法府(一院制の最高会議)で、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との関係を深める新しい法律が通過した。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、法律制定がウクライナとNATOの軍事技術協力を促進するだろうとし、ウクライナの戦略の中心が西側との連携にあることを再確認した、と言ったばかりだ。しかし、ウクライナがNATO陣営へと歩み寄ろうとする姿勢を見せる一方で、ウクライナは中国との関係をも深めている。

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