バチカンが年内にも台湾と断交か、香港カトリック教区「中国と10月までに交渉妥結も」―台湾メディア

Record China    2018年9月14日(金) 21時10分

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バチカンが年末に中華民国(台湾)と断交し、中国と国交を樹立するとの見方が出てきた。香港カトリック教区が、中国とバチカンの交渉が9月末までに妥結する可能性があるとの見方を示している。写真はバチカンのサン・ピエトロ広場。

台湾メディアの中字電子報は14日、バチカンが2018年末に中華民国(台湾)と国交を絶し、中華人民共和国(中国)と国交を樹立するとの見方を示す記事を発表した。香港カトリック教区の週報である「公教報」が、中国とバチカンの交渉が10月1日の国慶節前に妥結する見込みがあると論じたことを受けた。

バチカンは規模が極めて小さい国でありながら、カトリックの「総本山」であるために、世界全体に対する影響力は極めて大きい。中国とバチカンが外交関係を持てなかった最大の理由は、ローマ法王(教皇)による司教の任命権という、双方にとって「大原則」にかかわる問題があったからだ。

ローマ教会は歴史上、世俗権力との激烈な争いを繰り返して司教の任命権などを確立した。司教とはローマ教会が布教や信者の管理などのために設けた「教区」の責任者だ。司教の任命は教皇の専権事項だ。

一方の中国は、宗教の信仰の自由を保証すると同時に、事実上は宗教活動を国家の統制下に置いている。また、憲法には「宗教団体及び宗教事務(宗教実務)は、外国勢力の支配を受けない」(第36条)と明記しており、「外国勢力」であるローマ教皇による中国国内のカトリックの教区の司教の任命を認めることは、国家統治の大原則に反することになる。

中国が宗教関連で「外国勢力の支配」を忌避するのは、19世紀から中華人民共和国の成立まで、キリスト教組織が欧米列強による中国侵略の手引きをしたという「歴史のトラウマ」にも関係している。

香港カトリック教区の「公教報」が論じた中国とバチカン側の交渉とは、中国国内の司教任命問題を巡るものと考えてよい。これまでのところ、中国側が示した「候補者」の中からバチカン側が選び、任命するなどの方式になるなどの見方が出ている。

バチカンは欧州で唯一、台湾との国交を維持する国だ。中国はこれまで、自国と外交関係を樹立するにあたり、相手側が台湾と断交することを大原則としてきた。バチカンに対しても同じ方式を求めることはまず間違いない。

2016年5月に民進党蔡英文政権が発足して以来、台湾と国交を断絶した国は5カ国に達した。しかも、台湾と断交した国は16年と17年にはそれぞれ1カ国だったが、18年には3カ国に達するなど、中国の外交攻勢の成果達成は加速している。台湾と現在も国交を維持している国は17カ国で、バチカンは欧州で唯一、台湾と国交を維持している国家だ。世界における影響力が大きいバチカンが台湾と断交して中国と国交を樹立すれば、台湾および蔡英文政権にとって衝撃は極めて大きい。

中国はこれまで、国内に中国天主教愛国会という団体を設立させてカトリック信者の統括をしてきた。つまり、中国のカトリック信者は「カトリック信者でありながらローマ教皇とはつながりがない」という、信仰の上で極めて異常な状態に置かれていた。

中国国内のキリスト教徒は6000万人で、当局が認めない「地下教会」に所属している信者は4000万人程度との見方がある。一方、公認の中国天主教愛国会の信者数は約500万人だ。2013年に就任したフランシスコ教皇は、中国と公式な関係を築いた方が、中国国内のカトリック教徒およびその他のキリスト教徒の信仰の自由を保護しやすいと考えているとされる。

中字電子報の記事は、中国人民大学国際関係学部教授で、中国政府の政策立案・提言組織である国務院参事院のメンバーでもある時殷弘が「バチカンが台湾と断交するのは時間の問題」と述べたと紹介。ただし時氏は、米国が最近になり蔡英文政権が発足した以降に台湾と断交した中南米のドミニカ、エルサルバドル、パナマの3カ国の自国大使を召還したことを指摘し、米国の動きがバチカンの決定に影響する可能性もあると指摘した。

中国にとってバチカンとの正式な関係を樹立できれば、「自らの正当性」を国際的に強くアピールする材料になり、台湾内で蔡英文政権に対する不安や不信を高める効果も大いに期待できる。

ただし、中国とバチカンの国交が樹立されれば、ローマ教皇が中国の諸政策を批判した場合、さらに大きく注目されることになる。中国がバチカンの容認できない政策を断行した場合、国交再断絶とまではいかなくとも、「大使の一時引き揚げ」など、バチカン側が講じることのできる選択肢はより増える。その場合、世界における中国に対する「違和感」はさらに大きくなり、中国当局は国内外に向けた説明に苦労すると予想される。(翻訳・編集/如月隼人

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