如月隼人 2018年9月14日(金) 5時20分
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少数民族問題について語ろうというのではありません。あくまでも「ニュース中国語」の話です。写真はチベット・ラサのポタラ宮。
少数民族問題について語ろうというのではありません。あくまでも「ニュース中国語」の話です。
さて、その前に、中国の「行政区画」についてご説明します。中国の行政区分に「省」というものがあるのはご存じですね。「四川省」とか「広東省」とかです。省の政府が置かれている都市を、日本では「省都」と言ったりしますが中国では<省会:sheng3hui4>の語を使います。
<会>の文字の原義は「人と会う」ですが、「多くの人が会う場所」、つまり「大きな街」との意味も持つようになりました。そこで「省」で最も重要な街を<省会>と称するようになったわけです。
中国には「省」と同格である行政区画があります。中央直轄市と少数民族の自治区です。中央直轄市は北京、天津、上海、重慶の4市です。ちなみに、中国では省の下に置かれる「地級市」、さらに「地級市」の下に置かれる「県級市」があります。同じ「市」でも、3種の「格式」があるわけで、なかなか複雑なのですが、そのあたりはいずれまた、ご紹介することにしましょう。
さて、少数民族自治区政府の所在地は何というか。「省」ではありませんから<省会>とは言えません。よく使われているのは<首:shou3fu3>という言葉です。日本語の「首府」は「首都」と同義ですが、中国語の<首府>は、「トップの都市」程度のニュアンスです。
中国語で「首都」は<首都:shou3du1>です。この場合には「都」の文字を使っているので「国の首都」です。中国人の言葉に対する感覚を観察していると、日本人と比べて「文字そのものが持つ意味」を重視している場合が多いようです。この場合、「都」と「府」の意味は違うのだから「首都」と「首府」は違って当然、という感覚のようです。
あ、<都>には「~は皆」という使いかたもありますが、その場合は発音が<dou1>で異なるので注意してください。<他們都来了。Ta1men0 dou1 lai2 le0>(彼らは皆、来た)といった具合です。
中国語の<首都>と<首府>の使い分けですが、中国人自身がどの程度の違いを感じているか確認したく思っていました。ある時、中国国際放送というラジオ局のアナウンサーと雑談をする機会があったので、さっそく尋ねてみました。すると、「首都は国の首都、首府は地方の中心都市」と、感覚的に全く異なるとのことでした。だから、「チベット自治区の<首府>はラサ」といった言い方になるわけです。
彼女はついでに、ひとつのエピソードを教えてくれました。あるアナウンサーが誤って、生放送中にラサ市のことを「チベット自治区の首都」と言ってしまったそうです。もちろん単純ミスで、政治的意図は全くありませんでした。しかしそのアナウンサーはただちに解任されたそうです。政治的に重大な誤解を招くミスをしたと、結果責任を厳しく追及されたとのことでした。
ちなみに、日本ではそのころ、民放テレビの女子アナウンサーで「ルックス重視で採用されている」なんて批判が強まっていました。中国ではどうなのかと質問すると、彼女は「ありえないことです」ときっぱり。でも実際に、中国のテレビの女子アナウンサーの「美女率」は相当に高い(個人的見解ですが)。
そう告げると彼女は「もちろん、外観がよければ有利。でもその前に、アナウンサーとしての技術がしっかりしていなければ問題外。技術力も外観も備えている人はたくさんいる」とのことでした。中国のテレビで全国放送に抜擢されるアナウンサーは、エリート中のエリートなのだなあと、改めて実感した次第です。
お断わり:本コラムでは、中国語を<>の中に日本語の常用漢字の字体で表示します。ピンインについては、ローマ字表記の直後に声調を算用数字で添えます。軽声は0とします(例:<東西 Dong1xi0>)。
■筆者プロフィール:如月隼人
1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。 Facebookはこちら ※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。 ブログはこちら
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