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<コラム>韓国がサッカーで金メダル、でも韓国人学生の顔はどんよりしていた

木口 政樹    2018年9月5日(水) 17時20分

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アジア大会が終わった。日本が何位であろうと韓国が何位であろうとどうでもいいことだけれど、今回ここで取り上げようとするのは、韓国の「兵役免除」問題である。写真はアジア大会のサッカー韓国代表。

アジア大会が終わった。日本は総合で中国に次いで2位という良き成績だった。韓国は日本に次いで3位。こういう順位付けは筆者としては非常に嫌いなのだが、世の中がみなそういう流れなので、いたしかたなくそれに従う。

日本が何位であろうと韓国が何位であろうとどうでもいいことだけれど、今回ここで取り上げようとするのは、韓国の「兵役免除」問題である。これは日本では全く実感のない問題なのだけれど、韓国ではある意味、死活問題といったニュアンスがあるくらい非常にナーバスでシビアな問題なのだ。

特に問題になっているのが韓国の野球、そしてサッカー。メダル圏に入ると兵役が免除されるという規定だと思っていたら、金大中氏(DJと略すこともある)のときは、16強に入れば兵役を免除してやるぞと壮行式のとき選手たちと握手する場でそれこそ「思いつき」で決めたという話も伝わっている。

16強であれば兵役免除の時代もあったみたいだけれど、今回は金メダルであれば免除という規定のようだ。野球もサッカーも決勝戦の相手は日本だった。そしてどちらも韓国が勝ち、金メダルを取った。筆者はちょうど9月1日に釜山に行く用事があり、その帰りにバスの中で日韓戦を見ることになった。

学生たちと同じバスだった。ゼロゼロで迎えた延長前半。イ・スンウの一蹴りで均衡が崩れる。続いてすぐにファン・ヒチャンがヘディングで入れる。2対0。このときは、バスの中の女子学生からは歓喜の黄色い声。ところが男子学生からは、歓喜の声もある中でブーイングも聞こえる。

どうしたことかとそばの学生に聞いたら、「これで彼らは兵役を免除されるんですよ」と憤懣(ふんまん)やるかたなしといった風情で教えてくれるではないか。

そうなんか。金を取れば、まだ兵隊へ行ってない連中は免除の恵みに浸ることができるのか。ソン・フンミンなどがその話題の中心だった。本人だけじゃなく所属のプロチームも嬉しがることはあろうけど、ここ韓国の地では、それほど「拍手」が聞こえてこないという現実があり、筆者としてはかなり驚くことになる。

韓国が点を入れ勝ってくれれば(韓国の学生らが)うれしいのは当然だが、兵役のことが頭にちらついた瞬間、彼らの表情は雲がさしたようにどんよりとしたものになるのだった。

国会でもこのことが問題になっていて、ある国会議員は、「防弾少年団(バンタンソニョンダン)のほうをむしろ兵役免除したほうがいいんじゃないか」という国民の声もあるんだと口から泡を飛ばしていた。

なぜ、兵役を免除するのか。国益ゆえ、というのが国の言い分。国益に寄与するからというわけだ。国益という観点なら、むしろ防弾少年団のほうが上位にランクされるんじゃないの、というの筆者の考えでもある。

ともあれ、日本は2対0と2点もリードされたあと、ヘディングで1点返すという気迫を見せた。結果は2対1で韓国の優勝となったけれど、モチベーション自体が天と地ほども差のある状況で日本のあの1点は、値千金のゴールであった。あの気合いに筆者は少し落涙。日韓戦は常に緊張もするし勝ってほしいという思いも強い。

しかし勝っても負けても、日本には韓国が、韓国には日本がいるというそのこと自体が本当に有難いことなんだなあと、最近はつくづく思う。このライバル関係があるからこそ、お互いに切磋琢磨できるし、近い将来、世界にいってもいずれ通用するレベルにもなろう。汚い反則もなくきれいに戦ってくれたことも、感謝だ。

普通は、韓国選手が日本選手に悪意のタックルを決めることが結構見られるのだけれど、今回はモチベーションの割には、韓国選手はきれいに戦ってくれた。拍手を送りたい。兵役問題がどうなるかは、韓国に任せるしかないけれど、芸能人にないならば、運動選手にも「なし」とするのが公平というものだと声を小にして(あくまで大ではない)言いたいところではある。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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