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<中国ビジネス「時流自在」9■中国富裕層の落とし方(3)ネット通販の光と陰<上>言葉と国際物流のカベ

Record China    2012年7月30日(月) 7時33分

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中国内ネットショッピング市場は、2011年に前年比で72.9%も増加するなど急拡大。しかしヤフーショッピングと楽天市場が、中国ネット通販事業から相次いで一時撤退を表明した。写真は2010年6月1日、ヤフーとタオバオのネット通販提携発表。

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中国新浪科技「2012年中国ネットショッピング消費者調査報告」(2012年5月2日付)によると、2011年の中国内ネットショッピング市場規模は前年比で72.9%もの増加を見せ、取引総額8090億元(約10兆円相当)を突破し、中国国内の小売総額の4.4%を占めるに至った。特にファッション業界の成長が著しく、2011年のファッション系市場規模は2670億元、前年比成長率93.5%という驚異的な伸びを見せている。

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昨年のネットショッピング利用者数は2億1200万人、ネットユーザー全体の41.5%に達している(「Record China」2012年5月4日付)。同じ新浪科技の報告によると、米国ボストン・コンサルティングは2015年には中国のネット通販市場規模が2兆元(約25兆円相当)に達し、米国を凌いで世界一となると予測している(「Record China」2011年11月25日付)。

 今やインターネット利用人口が世界最大となり、銀聯カードという代金決済デビットカードの発行枚数も20億枚を突破し、カード業界でも世界最大規模となった中国。2011年のネット決済件数は前年比77%増の151億件、金額ベースでは33%増の695兆元(約8687兆円)にも達している。今では120の中国金融機関がインターネットバンキングサービスを取扱い、一日あたりの処理件数は64万件(「RecordChina」2012年6月17日付)。

さらに中国ではアイホンなど「智能手機」と呼ばれるスマートホンが2011年以降急速に普及しつつあり、携帯電話を利用した中国最大の「淘宝網」ネットショッピング取引額は2010年の18億元から11年には一気に118億元までに急成長。スマートホンによるネットショッピング利用者総数は1億人を突破した(「Record China」2012年6月5日付)。

以前から存在する全国的な郵便配達網に加えて、高速道路や高速鉄道などの全国物流網も整備されつつある「追い風」環境下で、国土の広大さと人口の多さゆえにインターネット通販の利便性、比較優位性が爆発的に広まりつつあるのである。

 しかし、その一方で今年5月に入り、日本の最大手サイトであるヤフーショッピングと楽天市場が、中国ネット通販事業から相次いで一時撤退を表明した。

ヤフー・ジャパンは中国ネット通販サイト最大手「淘宝綱(タオバオ)」との共同運営で平成22年6月に中国内に開設した「淘日本(タオ・ジャパン)」を今年5月17日付で閉鎖。楽天も同様に中国の検索サイト最大手「百度」と合弁で平成22年10月に開設した「楽酷天」ネット通販サービスを今年5月末に閉鎖した。どちらも開設から2年足らずでの市場撤退である。

 ネット上で様々に報道されている関連報道を整理分析すると、その原因として以下の三点が浮かび上がってくる。

1、中国語と日本語の「言葉のカベ」

中国のネット通販サイトでは、中国語会話チャットを利用して利用者と出店者が直接、値段交渉等をする習慣がある。そのほか、品質や規格、性能、アフターサービス、メンテナンス等の説明やりとりについても同様に中国語でのチャットを利用するのが一般的であるが、今回のケースでは自動翻訳システムの精度が低かったことから、中国の利用者が急速に離れて行った。利用者からの中国語チャットによる問い合わせは、機械翻訳に掛けられてから日本の出店側に送られ、それに対する店舗側からの回答も同様だが、もともと自動翻訳システムのケベルでは両者の意思が正確かつ迅速にうまく伝わらなかったのである。店舗側の説明責任も迅速な対応も果たせず、利用者のニーズに応えることができなかった。

ここには国内販売とは異なり、中国語と日本語という大きな「言葉の壁」が存在したのである。

2、日中間の「国際物流のカベ」

中国IT時報によると、ヤフーショッピングが中国内に開設した「淘日本」モールでは、中国の消費者が日本の商品を直接ネット注文して買うことができるが、送料が商品代を上回るという逆転現象が当初から多発していた。例えば、177元の抱き枕の送料は本体価格を上回る200元という具合である(「RecordChina」2010年7月6日付)。

これほど送料が高くなった理由は、日本国内の集荷と発送にかかる物流費や倉庫管理費、輸出通関費用などに加えて、2010年7月2日付「中国税関法」第43号通達により、従来500元以下は免税扱いとされてきた個人輸入郵送物が、一件当たり輸入金額50元(約600円相当)を超えるものは一律課税となったため、商品価格にさらに中国の輸入関税20〜40%と増値税(中国の消費税)17%が上乗せとなったためである。中国国内のネット販売注文で、中国内の郵便局で商品を受け取る国内感覚の中国人利用者にとって、本体価格を上回る「法外な送料」は納得できるものではなかった。

また「淘日本」モールは、商品到着後に代金を支払う中国国内ネットショップと異なり、商品到着前の注文時に代金を先払いするルールになっていたが、これが個人クレジットカードも持たず、先払いシステムに慣れていない一般中国消費者の不信を買ったことも否定できないだろう。

中には20日たっても注文者に商品が届かず、問い合わせをしても話がかみ合わない、内陸部では商品の物流追跡もできない、目的の都市までは届いても市内の宅配便が手配できない等のクレームもあったという。

さらに、中国税関は化粧水のような液体物、あるいは輸入許可が必要な化粧品・健康食品・薬品類等の個人郵便輸入を認めず、販売目的の個人輸入も無許可では通関を認めず、本来企業輸入のものを個人名義で輸入することも認めないため、中国での輸入通関ができないという例も多発。たとえ輸入通関できた場合でも、中国内で商品が届かず、ネットで問い合わせても話がかみあわない、通関後の商品が追跡できない、目的の都市までは届いても市内宅配便が手配できない等といった中国内の物流システムの問題もあったようだ。

 国内配送とは異なる、日本と中国の「通関」、国際物流の壁が存在したのである。

「<中国ビジネス「時流自在」9■中国富裕層の落とし方(3)ネット通販の光と陰<下>コピー商品のカベ」に続く。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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