<日本人が見た中国>事前準備したがる慎重派の日本人、事後対応に自信ある楽観的な中国人

Record China    2012年7月11日(水) 17時56分

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ひと括りでは言いきれないかもしれないが、「日本人は慎重で、それゆえに、不運な事態を事前に防ぐことに心を砕く」「中国人は楽観的で、それゆえに、不運な事態をも幸運に転じる心構えがある」と感じる。

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ひと括りでは言いきれないかもしれないが、「日本人は慎重で、それゆえに、不運な事態を事前に防ぐことに心を砕く」「中国人は楽観的で、それゆえに、不運な事態をも幸運に転じる心構えがある」と感じる。日本人は特に東日本大震災以降、“一寸先は闇”という意識を強くしているのではないか。“万一”のために、常に備えを怠らない。“油断するな”“手綱をしめろ”と、間断なく自らを戒めるのだ。少なくとも私はそうだ。

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日本人のこうした気質を象徴するようなある野球の試合がある。1989年、巨人対近鉄の日本シリーズ。先に4勝したチームが優勝という年間最高の野球の祭典で、思わぬ展開が起こった。当初の予想では巨人有利という声が多かったが、ふたを開けてみると、第1戦から第3戦まで近鉄が3連勝し、優勝に王手をかけた。第3戦終了後、勝利したK投手がヒーローインタビューで、「巨人はたいしたことなかった、明日にも優勝は決まるだろう」といった内容の発言を行った。

この発言は後に伝説の言葉となった。なぜなら第4戦目以降、第6戦まで巨人が3連勝したのだ。あのK投手の発言が、巨人の選手達を怒らせたのだ。そして最後の第7戦、巨人の勢いは止まることなく、見事に逆転優勝を果たした。マスコミは奇跡の大逆転劇を報じる中、このような結果になった理由として、第3戦で勝利したK投手の暴言を挙げた。「いかなる状況においても楽観視してはならない」「最後の最後まで何が起こるかわからない」当時、試合中継を見ていた多くの日本人がそのような教訓を得たはずだ。

いっぽう、中国人の楽観的な気質を体感したこんなできごとがあった。ある日、タクシーの車中で携帯電話を紛失してしまった。すぐに気づいてなくした携帯電話に電話を入れると、運転手が応答した。しかし、その後はなしのつぶて。おそらく電話は運転手がいただいてしまったものと思われる。

仕事上の連絡に必要なので、友人の携帯を借りて事務所のスタッフに携帯紛失の件を伝えた。すると、スタッフからの返信メールにびっくり!「ははは、悪いことが出つくせば、そのあとは良いことしか起こらないよ」。人の不幸をこのような言い方で励ますことができる中国人。いやいや面白い。不運な経験があたかも、良いことのようにすら思えてくる。物事は本当に考えの持ちようだ。

ほかにも、中国にはこんな習慣がある。宴会の席でグラスを落として割ると、周囲の人は必ず「歳歳平安!」と声をかける。これは“割れる”という意味の「砕(スイ)」と、“年”を表す「歳(スイ)」をかけた言葉だ。「歳歳平安」とは、「年々無事を願います」という意味になる。悪いできごとを幸運に転じさせる中国語の言葉遊び。このような言い回しに励まされ、勇気づけられる時が私にはある。誰の人生にも等しく幸、不幸が訪れるものだ。それに対して危機感を持つもよし、楽観視するもよし。肝心なのは、それらを次へ向け、未来に進むうえで自身の妨げにしないことだ。

矢野浩二(やの・こうじ)

バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。

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