<中国ビジネス「時流自在」>7■中国富裕層の落とし方(1)インバウンド観光―右肩上がりの新市場

Record China    2012年7月2日(月) 7時10分

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日本政府観光局によれば、2010年に日本を訪れた中国人観光客は141万人、前年比で40.5%増え、韓国人観光客に次いで第2位となった。その背景には、日本政府による中国人個人観光客へのビザ発給の緩和政策がある。写真は東京・銀座の中国人観光客。

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日本政府観光局によれば、2010年に日本を訪れた中国人観光客は141万人、前年比で40.5%増え、韓国人観光客に次いで第2位となった。その背景には、日本政府による中国人個人観光客へのビザ発給の緩和政策がある。

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当初、外務省は2000年9月から中国人団体観光客に対する訪日観光ビザの発給を開始、09年7月には個人観光ビザ発給もスタート。翌年7月には、「一定の経済力を有する個人」に対し1回の滞在期間を15日から30日に延長するなどして、中国人富裕層・中間層の日本訪問と長期滞在の積極的誘致を図ったのである。その後、昨年3月に発生した東日本大震災により中国人観光客が激減したこともあり、昨年7月から「沖縄数次ビザ」を新たに導入し、さらに今年7月からは「東北三県数次ビザ」の発給も始まった。

「沖縄数次ビザ」、「東北三県数次ビザ」とは、個人で沖縄県あるいは宮城県、岩手県、福島県の東北三県を一泊以上訪問する中国人観光客に対し、以後3年間有効の数次(マルチ)ビザ(1回の滞在期間90日以内、2回目以降は何度でも、どこにでも3年間にわたり日本に観光入国が可能)を発給するというもの。その効果もあって、訪日中国人観光客は昨年末から急速に復活した。しかし、このせっかっくの回復も今年前半の新たな日中関係の摩擦発生により5月以降、伸び悩んでいる。

観光庁「訪日外国人消費動向調査」によれば、今年1〜3月期の訪日中国人観光客の1人当たり平均ツアー費用は8万5900円。それに日本滞在費と買物支出17万1800円が加わり、一人当たり総額25万7700円の平均支出額となっている。これは欧米人観光客の4倍に相当する支出額といい、この中国人観光客の「使いっぷりの良さ」が、日本の旅行業界と小売業界の景気をおおいに活気づけているわけだ。

彼らの日本訪問の主要な目的は、まさに買い物。訪日前から狙いを定めた「メイド・イン・ジャパン」、高級一眼デジカメなど日本でしか手に入らない高額な「オンリー・ワン」や、有名ブランド商品が人気。他方で、ドラッグストアなどで売られている廉価な日用品、医薬品、雑貨類も、中国では手に入らないものが大人気。彼らがはるばる日本まで買い物にやってくる人気の秘密は「日本で買えば、不良品、ニセモノの心配がなく安心、しかも価格が中国より安い」から。迎える日本企業側としても、日本の土俵の中で商売ができるため、条件面、費用面、環境面、安全面などでやりやすく、また有利と言える。

彼らのグルメ振りも有名で、神戸牛などの高級ステーキ、タラバガニ、マグロのトロなど、初めて食する日本の高級食材に眼がない。伝統中華料理には存在しない日本のラーメン文化も非常に高く評価されている。

他方、観光地として人気なのは東京ディズニーランド、銀座、富士山、北海道、箱根など各地の有名温泉。今回はスカイツリーも人気スポットに加わった。

受け入れ側も、中国語の話せる店員・係員を多数育成・配置し、中国の暦や生活習慣に合わせた歓迎体制とキャンペーンを組み、中国銀聯カードの取り扱いも始めるなど、対応に余念がない。最近では空港でのスマートホンの無料貸し出しや、電話による通訳案内サービスなども実施されている。

かたや中国本土内でも、「レコードジャパン」のような中国内サーバーのインターネットサイトの場を借りて、日本の旅行会社が日本ツアーの宣伝広告や募集販売を展開したり、日本のメーカーや販売会社が中国内ネットショップを展開し、また「新浪微博」や「優酷」など中国のインターネット人気ブログ、動画サイトにも中国の人気モデルやタレント、利用者の声も活用して、商品・サービスの紹介や案内等の関連各種情報を投稿するなど、中国本土内での「日本セールス」営業推進の取り組みも始まっている。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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