木口 政樹 2018年6月13日(水) 19時40分
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歴史的な米朝首脳会談が6月12日、予定通りシンガポールのカペラホテルで行なわれた。必ずしも順調な流れではなかったが、2人の握手で米朝首脳が単独で会ったことは感慨深いものがある。写真は米朝首脳会談の関連報道。
歴史的な米朝首脳会談が6月12日、予定通りシンガポールのカペラホテルで行なわれた。3月に米朝首脳会談の予定が発表され、5月24日にトランプ氏の「やらない」発言があったあと、金正恩委員長の「なんとかお願いします」発言があるなど、必ずしも順調な流れではなかったが、2人の握手で米朝首脳が単独で会ったことは感慨深いものがある。
2人だけ(通訳者込み)の会談のあとすぐ拡大会談が1時間以上継続し、それから午餐。これも1時間ほどで終えトランプ氏と金正恩氏は2人、ホテルの敷地内を散策する。板門店のときは「首脳散策」が30分にも及んだが、今回は50メートルほどをゆっくりとくつろぎながら歩く。なにやら話をかわしているが芝生のことについての対話のように思えた。
そのとき記者団に「共同声明に署名する」と言及した。それからトランプ氏の防弾車を金氏にご披露。たぶん、金氏が見たいと言ったんだと思う。20センチのドアの分厚さに感嘆の表情。2人の行動は一部始終なごやかなものだった。現地時間14時40分ごろ共同声明が署名された。
トランプ氏は予想以上の成果だったと語るが、声明の内容に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言はなかった。代わりに朝鮮半島における完全な非核化に努力するという文言が盛り込まれた。
前日ポンペイオ国務長官が言っていたんじゃなかったか。CVIDが盛り込まれなければ会談は不成功だと。この発言はどうなったのか。自然に無視されたような状況だ。誰も(本人も)あまりそのことには触れてはいない。
筆者も、CVIDがなければなんの意味もないんじゃないのという気持ちもあるが、ここは百歩譲って、これからの協議でなんとかやっていくのだろうと理解した。とりあえず、今回は米朝が会うだけでも大きな成果だと思えるからだ。一代目の金日成、二代目の金正日、そして今回三代目の金正恩になってはじめて米朝がまともに会ったのだ。その意味が大きいことは間違いない。
2005年あたりにも、金正日が非核化を進めるといったジェスチャーを見せたものの、ジェスチャーのみに終わり、あのあと核開発の大飛躍を遂げた。再度の核実験プラス弾道ミサイルの度重なる発射実験。北は裏切りを容易にやってしまう国、というイメージが完全にできあがってしまった。
しかし今回の金正恩氏の決意は、これまでとは違っていると筆者は考える。独裁は独裁だし、金日成から流れてきている白頭血統(ペクトゥヒョルトン)には変化はないものの、国民が生き残れない限り自分も生き残れないと、6年に及ぶスイス留学経験者はクールに考えているものと思われるのだ。
北が今のままずっと行ったら、最後はルーマニアのあのチャウシェスクの如くになってしまうのは目に見えている。現在の金正恩氏は、その恐怖だけではなく、国民を生かしたいと本気で考えている部分が感じられる。トランプも、金正恩氏を評して、「国民を本気で愛している人」だと言っていた。
これまで散々「血の粛清」を重ねては来たものの、何の理由もなく粛清しているわけではないであろう。もちろん、北の粛清文化は絶対に容認できるものではないけれど、虫けらを殺すように人を殺してきたわけではないだろうと筆者は思いたい。先日のバス事故で多くの中国人が命を失ったとき、即座に関係者数人が粛清されたと聞く。またかとは思ったが、ある意味、それだけ気をはって仕事をしろとハッパをかけているわけだからそれなりに彼のやりかたには一貫性があるわけだ。
非核化を実現して、北も世の中の他の国々のようにまともに生活できる国をつくる。それが金正恩氏の本音であり本気であると思う。これからの道のりは、遠くはるかだけれど、周辺の国々の協力を得ながら、朝鮮半島からの非核化が少しずつでも前に進んでいくものと確信する。北は、非核化を進めない限り制裁が解かれないのだから、必ずや非核化の道を歩んでいく。間違いない。
あの晴れ晴れとした握手と共同声明への署名があったあとの今現在も、北への制裁は依然として何の変化もない。さすがはトランプ氏だ。北が非核化への具体的な何らかの歩みを見せたところではじめて制裁の一部が解かれてゆくのであろう。
日本も静かに見守りながら北朝鮮の非核化の動きになんらかのプラスの発言、プラスの対応でやっていってもらいたい。北と米と韓国が仲良くなることに対して、常にイヤミなことばかり言っているとあとあと日本だけ蚊帳の外においやられ、本当にガラパゴスになってしまう。米朝会談の前にも、安倍首相は北にもっと圧力を加えるべきだとかなんとかいって順調な成功を腹の底から願うという姿勢に大きく欠けていた。アメリカの腰巾着のような不甲斐ない態度でいてほしくない。
男は黙ってサッポロビールというああいう風采のあがる絵がなぜ描けないのか。朝鮮半島からシベリア鉄道や中国側のシルクロードを経てヨーロッパに繋がる時代になることは時間の問題。日本が朝鮮半島の平和に何らかのお手伝いをしてはじめてあなたも来てくださいと言ってもらえるものと思う。イヤミばっかり言っていたら、あとで困るのは日本だ。そうならないでほしい。日本がヨーロッパに繋がるには、朝鮮半島を通すしかないのだから。
■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年~現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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