<羅針盤>世界の文化に癒される=弱者にやさしい海外の美術館―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年6月10日(日) 5時10分

拡大

かつて経済団体が主催する調査団や国際会議で海外へ出る機会が多かった。多忙なスケジュールの合間を縫ってその地の文化に触れることは、一服の清涼剤となって疲れを取ってくれる。

かつて経済団体が主催する調査団や国際会議で海外へ出る機会が多かった。多忙なスケジュールの合間を縫ってその地の文化に触れることは、一服の清涼剤となって疲れを取ってくれる。前回のコラムで世界各地で音楽の素晴らしさを味わったことを書いたが、美術の世界も同じである。

ニユーヨークではメトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、パリのルーブル美術館、オルセー美術館等々、何度行っても、いい場所である。

このような場所でいつも感心させられるのは先生に引率された小学生、中学生、高校生が、観光客に交じって実に多いことである。時として長蛇の列の時もある。外で待っている時には生徒たちはふざけたり大声で話をしたりとにぎやかなことこのうえないが、いったん入場すると別人のように私語もなく、静かに絵の前に集まって先生や説明員の説明を聴き、メモを取っている。名所、旧跡にもバスを連ねて来ている。

 

もう一つ感心することは、すべてが障害者に優しい施設になっていることである。車いすによる施設へのアクセスの容易さはもとより、施設自身に障害者用の特別の入り口や多くの座席が設けられており、一般の人たちより優先的に誘導し、専門の付添人がかいがいしく世話をしている。これが障害者に心の負担を感じさせないかのように、ごく自然に当たり前のことのように行われていることがすばらしい。

日本でも社会的弱者に対しての配慮が必要ということで都庁、県庁、市庁舎などでは、競い合うように障害者を配慮した立派な建物が造られているが、一歩外に出ると近隣のビル街、道路、交通機関等は残念ながら十分配慮されていない。すなわち障害者が動ける範囲が点だけで、線にも面にも広がっていないのである。

人はその行動範囲を広く持つことで心の豊かさを感ずるとすれば、障害者の行動範囲を面にまで広げる街づくりを早急に進めることが必要であろう。今、世界では多様性を重んじる考え方が広まっている。これは街づくりだけでなく企業経営にも共通することであろう。

<羅針盤篇28>

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携