Record China 2018年5月30日(水) 13時30分
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中国各地でこのところ、当局が「老頼(ラオライ)」と呼ばれる「債務踏み倒し」の取り締まりを実施したとの報道が増えている。習近平政権の意向が反映されていると考えられる。資料写真。
中国各地でこのところ、当局が「老頼(ラオライ)」と呼ばれる「債務踏み倒し」の取り締まりを実施したとの報道が増えている。習近平政権の意向が反映されていると考えられる。
「老頼」は法律用語で「失信被執行人」と呼ばれる。「信用を失い、公務執行の対象になる者」の意だ。その定義は「法律が認める文書で義務が確定しており、かつ履行の能力があるのに履行しない者」「偽造した証拠、暴力、威嚇などにより履行を拒むもの」「虚偽にもとづく訴訟、仲裁依頼、あるいは隠匿などにより財産を隠し、履行を回避する者」などとされている。不動産物件の不法占拠も「老頼」とみなされる。
山東省では17日、裁判所や警察による「老頼」の一斉摘発が行われた。省内各地で「老頼」がいる会社や商店、住居などが急襲され、20人以上が拘束された。摘発の様子はインターネットで動画中継され約1800万人が視聴したという。
江蘇省メディアの楊子晩報は29日、同省常州市中級人民法院(裁判所)が同日、記者会見を行って市内の各裁判所が2018年になり「老頼に厳しい打撃を与える」行動を集中して続けていると発表したと報じた。これまでに2万3475件の被害解決申請を受理し、8932件について法執行を実施、16億6000万元(約281億円)を正当な権利者のために取り戻したという。
「老頼」に指定された場合、「ぜいたく」とみなされる行為が禁止される。「航空機利用、列車移動での軟臥(一等寝台)の利用」「高級ホテル・飲食店、ナイトクラブ、ゴルフ場の利用」「不動産購入や改築」「高級オフィスなどの利用」「経営に必要ない自動車の購入」「旅行」「高額な金融商品の購入」などだ。中国ではこれらの取り引きに際して公安(警察)が発行する身分証の提示が求められる。氏名や身分証番号が「ブラックリスト」に記載されていれば、取り引きが拒否されることになる。
「老頼」に指定されれば、「子女を学費の高い私立学校で学ばせる」ことも禁止される。受験を拒否され、何らかの「漏れ」があり入学してから発覚したり、在校生の親が「老頼」に指定された場合には退学処分になるという。陝西省メディアの華商網は21日、自分の子の進学に影響するとの理由で、債務を返済した「老頼」がいたと報じた。裁判所が債務返済を確認し、「老頼」の指定を解除したという。
「老頼」の取り締まりは習近平政権の意向が反映されていると考えられる。共産党機関紙の人民日報は8日、「信用建設にデジタル化の翼を付け加える」と題する論説を掲載した。同論説はまず、貴州省の取り組みを紹介。税務署が納税者の「信用クラウド」を構築し、政府各部門や金融機関、企業などが共有することにより、個人の信用評価に要した作業量を激減させたという。
同論説は習近平共産党総書記(国家主席)による「デジタル化、ネット化、スマート化を深く発展させ、経済と社会の発展と国家の統治体系と統治能力の現代化を推進する」との言葉を引用。「信用クラウド」はデジタル化、ネット化、スマート化と結びついたものであり、「法と信用を守る者には褒賞を、法に違反して信用を失ったものには懲罰を与えるシステム」と論じた。
習近平政権の国内政治における基本方針は「共産党による管理強化」と理解してよい。注目を集めてきた「腐敗撲滅」も、権力闘争の側面を別にすれば、共産党員や社会の上層部の「勝手な振る舞い」は絶対に容認しないとの決意を具体化したものと理解できる。また、言論や報道はもちろん、映画作品のような娯楽分野でも統制が強まった。街頭に監視カメラを大量に設置し、顔認識の技術などを含め、当局が個人の行動を察知する能力も大いに高められた。
「老頼」の取り締まり強化が「身勝手な行動は許さない」との点で、政権の方針に合致しているのは明らかだ。また、「被害者救済」の報道の増加は「政権が実績を上げている」との印象に結びつき、庶民による支持を高めるためにも効果があると考えられる。(翻訳・編集/如月隼人)
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