洲良はるき 2018年5月7日(月) 23時40分
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近年の中国海軍の圧倒的な艦船建造能力などと比べ、現状を悲観的に見るアメリカ海軍関係者の発言について書かれた2018年4月23日付のニューズウィーク(英語版)の記事が、多くの中国語メディアで紹介されている。写真は空母・遼寧。
近年の中国海軍の圧倒的な艦船建造能力などと比べ、現状を悲観的に見るアメリカ海軍関係者の発言について書かれた2018年4月23日付のニューズウィーク(英語版)の記事が、多くの中国語メディアで紹介されている。
ニューズウィークの記事では、中国の1隻目の空母遼寧と、2隻目の空母001A型を比べて「空母遼寧のような古いソ連の空母の改装と、リバースエンジニアリングの助けを借りているとしても、完全に最初から建造するのはまったく別のことだ」とワシントンD.C.のシンクタンクCSIS研究員マシュー・ファニオリの発言を掲載し、中国の空母建造技術が着実に進歩していることを伝え、一流の艦船ではないにせよ中国はおおよそ6〜10隻の空母を配備したがっているようだとしている。
同記事では、テレンス・エドワード・マックナイト海軍少将(退役)が、アメリカは中国より強力な海軍を持っているが、その差は日々縮まっているとし、「アメリカは今では中国の建造速度に追いつけなくなった」とする発言を掲載している。さらにマックナイトは、(より遠い所への)戦力の投射は自国付近で戦うより難しいとして、中国はカリフォルニア沿岸では米海軍に決して勝てないであろうことは知っているが、(アメリカが)南シナ海で中国の大量の戦力と戦うのには大きな問題があるとしている。
ニューズウィークの記事では、中国の戦力の伸張と既成事実形成の絶望的な状況を「中国の裏庭(南シナ海のこと)で中国に挑戦するのはすでに遅い」と表現し、抗議したにもかかわらず係争中の南シナ海の人工島を中国が効果的に要塞化することを止めることも遅らせることもできなかったとして、「この10年中東でアメリカ軍の若い兵士たちが激しく戦って死んだが、中国は1人の兵士も失うことなく南シナ海を支配している」とするマックナイト少将(退役)の発言を載せている。
今年3月、南シナ海で空母遼寧を含む40隻以上の中国海軍艦艇が二列に隊列を組んで航行する衛星写真が報道された。南シナ海で行われた海軍閲兵式では習近平が強固な海軍の建造が急務だと強調している。
4月18日には中国海軍が台湾海峡で実弾演習を行ったと人民網が伝えており、さらに空母遼寧を含む中国艦隊は南シナ海、東シナ海、西太平洋に展開し訓練を行っている。ただし空母遼寧は台湾海峡の演習には参加していない。これについて中国新聞網(4月25日付)では北京シンクタンク遠望(Foresight)の研究員・王強の発言として、「台湾海峡の幅はわずか200キロメートル前後しかなく、中国本土沿岸の陸上基地からの航空部隊によってすぐに制空権を奪取できる」「台湾海峡の狭い水域では空母は自由に活動することができず、たやすく潜水艦の待ち伏せ攻撃に遭遇する」としている。
中国は驚異的な速度で艦船の建造を進めている。22型ミサイル艇(紅稗型)をはじめ、052C型駆逐艦(蘭州級)、054A型ミサイル・フリゲート(江凱II型)の建造速度は世界を驚かせた。
中国の造船所に休日はない。日曜も祝日も8時間シフトの三交代制で作業が進められており、休業を要求するような組合もない。中国の大型船の大部分の建造にはモジュールが使用され、複数の造船所で建造されたモジュールを1カ所に集めて船の基本構造を造る。そのため建造に必要となる膨大な時間を短縮できる。
中国は長期的な海軍艦船建造計画を公表していないが、アンドリュー・エリクソン編集『中国海軍艦船建造』によれば、現在の動向が維持されるなら、最大見積もりで中国海軍は2030年までに432隻の水上艦と99隻の潜水艦を持つことになるとしている。これに対するアメリカ海軍の艦船は350隻程度である。
現在、中国で就役している空母は遼寧の1隻だけだ。遼寧は元はソ連の未完成空母であり、ソ連が崩壊した後ウクライナで放置されていたもので、中国が手を加え空母として使用できる状態にまでした。現在中国では遼寧に続き2隻目の空母である001A型の建造が終わろうとしている。001A型空母は艦橋や格納庫の配置などが違っているが、基本的な形は遼寧を踏襲しており、スキージャンプ式通常動力空母となる。
001A型が遼寧と決定的に違っているのが、中国が一から建造している点であり、中国が着実に空母の建造技術を進歩させていることがわかる。ここ数日で、多くのメディアが001A型空母の公試運転が近いであろうことを報道している。
さらに中国は2017年から上海造船所で3隻目の空母002型の建造を始めているとされる。この空母は噂によればカタパルトを採用した通常動力型空母と言われており、もしも事実ならスキージャンプ式よりはるかに能力の高い有力な空母となるだろう。
人民網(4月25日付)の記事では、軍事専門家杜文龍の発言として、中国海軍は成長しているが、一流海軍と比べるとまだ多くの面での迅速な飛躍が必要で、たとえば空母の数や大きさ(排水量)にはまだ増大する余地があり、海上補給能力と調和した進歩があってはじめて遠く離れた海域の支配能力を大きく伸ばせるとしている。中国の2018年度の国防予算は前年度に比べて8.1%増えている。
■筆者プロフィール:洲良はるき
大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。
大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。twitterはこちら
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