<直言!日本と世界の未来>外国人労働をめぐる課題=社会インフラの整備が急務―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年3月18日(日) 5時0分

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年間1700万人以上の日本人が海外に行き、2400万人以上の外国人が日本に入国している。人の往来という意味では日本は今や閉鎖的とは言えないが、外国人の労働や定住を受け入れるという観点ではまだまだ課題が残る。

日本人の閉鎖性は解消されてはきたが日本は島国であるということから、日本人は外国人に対して閉鎖性の強い国民であると言われるが、現実には入国管理局の2016年の統計によれば、年間1700万人以上の日本人が海外に行き、2400万人以上の外国人が日本に入国してきている。特に外国人入国者は5年間で4倍と急増している。人の往来という意味では日本は今や閉鎖的とは言えない。しかし、外国人の定住を受け入れるという観点ではまだまだ課題が残る。

人口が現実に減少し、少子高齢化に直面している日本人が、外国人や外国人労働者をどのように受け入れるのか、日本固有の価値観が転機を迎えていると言っても過言ではない。高度な技術や知識を持った外国人労働者を積極的に受け入れ、経済活力とすることが、人口減少が実際に進行している日本では不可避であることは議論を待たない。

技術者や専門知識者を海外から積極的に受け入れ、日本で不足する技術者の補完や国際的な業務を高めて経済成長に役立てるという考え方を経済界でも提唱してきている。

また、高齢化で不足している看護士、介護福祉士などの海外からの受け入れは、高齢者のクオリティーオブーライフを改善する意味からも必要であり、積極的に推進すべきだと思う。問題は専門知識や技術をもたない単純労働者をどうするかということである。単純労働に近い分野での受け入れについては慎重であるべきだと私は考えている。

というのも、確かに日本の活力を高めるために外国人労働者の受け入れには柔軟であるべきだが、その一方で不法入国する外国人や、期限が過ぎてもそのまま日本に滞在する、いわゆる不法滞在外国人の問題がよく報道される。最近は不法就労者、不法滞在行の出入凶管理が厳しくなり、その数は減少してきているようだが、不法滞在で正規の職に就けず、過酷な労働や低賃金での労働を強いられる外国人労働者、また、医療保険が付保されておらず、傷病でNPOが救済の手を差し延べているという話も耳にする。

このように、少子高齢化で外国人労働者の受け入れと活用が重要なテーマとなり、そのニーズが高まっている中で、これまで外国人を受け入れる社会的、法的なインフラが充分整備されてこなかったことから、無秩序に受け入れると将来的に社会不安を誘発することにもなりかねない。

また日本では、移民制度そのものに対する国民感情が、移民政策を経済成長の根源と考える米国オーストラリアなどの国々とは大きく異なる。

日本での永住者の数は年々増加してはいるか、基本的に日本では、外国人はいつか本国に帰国する人たちという意識があるのではないだろうか。外国人が一時的ではなく、そのまま日本に永住し、さらに親族を呼び寄せて家族が増え、場合によっては日本国籍を取得して日本人になるという考え方が、まだ日本人の認識には乏しいと感じる。そのため、居住環境や子弟教育、社会保障サービスなどの受け入れ体制も十分ではない。日本が外国人にも魅力ある国となるために、外国人受け入れの法的枠組みや社会インフラの整備が急務と思われる。

<直言篇43>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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