浦上 早苗 2018年3月14日(水) 22時30分
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写真は、東京大学構内の柑橘類の木。これを見て、現在日本の地方企業で働く中国人女性王さんは、「なぜ日本は果物がとても高いのに、こうやって道端になっている木の果物を取らないんですか」と聞いてきた。
日本に留学に来ている中国人から、時々「日本人は〇〇ですね」という発見を聞かされることがある。その言葉に、まさに両国の文化の違いが凝縮されているので、いくつか紹介したい。
<道端の果物をなぜ取らないの?>
先日、新疆・ウイグル自治区出身の20代の女性、王さんと食事をした。彼女は大学3年時に日本に留学し、就職活動を経て、今は日本の地方企業で働いている。留学時代から、日本人のコミュニティーに積極的に参加し、日本社会にかなり溶け込んでいる彼女だが、東京の大学構内を歩いていたとき、柑橘類がなっている木の前で足を止め、写真を撮った。
彼女は私にこう聞いた。「なぜ日本は果物がとても高いのに、こうやって道端になっている木の果物を取らないんですか」。「これは、木が生えている家の人のものだからじゃないの?」そう答えたが、王さんはなお食い下がる。
「でも、木から落ちて道路に転がっているものも、誰も取りませんよ。落ちたらもう誰が拾ってもいいでしょう」。私はうまく返答できなかった。確かに多くの中国人は果物が大好きで、日本の果物の高さによく不満を言っている。道端に果物が落ちていてもそのまま通りすぎる日本人は、中国人から見ると、お札が落ちていても通り過ぎるような感覚なんだろうか。
<日本人の「高くて買えない」はうそ>
iPhone8とiPhoneXの発売が発表された昨秋、ガジェットマニアの孫くん(24)に「買うの?」と聞いてみた。1年間の日本留学中だった孫くんは、親戚からのお年玉やバイト代の大半を、スマホやパソコン、アップルウオッチなど最新ガジェットにつぎ込んでいた。孫くんは「iPhoneXは10万円以上するので今は買えません。バイトしてお金をためます」と話し、私にも「買いますか?」と聞いてきた。
私は2年前に買った中国ブランドファーウェイのスマホがまだ健在だし、スマホに10万円近くを払おうとは思えない。なので、「いや〜、高くて買えないよ」と答えると、孫くんが「日本に来て気づいたんですが、日本人の『高い』と中国人の『高い』は違うんですよ」と言った。
孫くんいわく、中国人が「高くて買えない」という時は、文字通り、それを買うのにお金が足りないことを指す。つまり、お金があるなら買うという。今の彼にとって、iPhoneXはそういう存在だ。
しかし孫くんから見て、日本人が「高くて買えない」というとき、「お金があるかないか」は関係ないことが多いという。むしろ、「それを手に入れるのに見合った金額かどうか」が判断基準になっていると、孫くんは日本生活で日本人と接し、発見したのだった。
そういえば、中国留学時代、かつて日本を訪れたことのある中国語の教師が「日本では大きな家の車庫に軽自動車が置いてあって、こんなに環境に気を使う民族なんだと感心した」と話していた。おそらく、その軽自動車の持ち主は、環境ではなく、コスパを考えて軽自動車を買ったのではないかと私は思ったのだが、中国人教師からみると、「(大きい家に住める)経済的に余裕がある人が、軽自動車を買う」というのは、自国ではあまり遭遇しない行為であるため、深読みせずにはいられなかったのかもしれない。
<安いものを買うのも迷う>
今年の春節期間、友人に頼まれて東京の家電量販店のスーツケース売り場で働いた郭さん(37)。日本の大学院で学び、その後は中国で日本語教師をしている日本通だが、売り場で不特定多数の日本人客と接し、「高くない買い物なのに、何であんなに慎重なの」と驚いた。
「サムソナイトとか高級ブランドだったら、迷うのも分かるんだけど、ノーブランドの格安商品を買うかどうかで、何度も店に来るの。しかも来る度に商品知識が増えてるから、家で色々調べてるんだよね。中国人は、ブランド品じゃない物を買うのに、そこまで考えない」。この話を聞いて、前述の孫くんの「日本人の『高い』と中国人の『高い』は違う」という指摘を思い出した。日本人は、安いか高いかを判断するとき、自分の経済力だけでなく、ほかの商品と比較して考える傾向が確かにある。
中国はまだ、「高ければ良いもの、安ければ悪いもの」という感覚が残っている(20代の若者の価値観はそれなりに変わってきているが)。一方、日本はデフレ社会の中でダイソー、ニトリ、ユニクロなどが「安くて良いもの」という価値観をつくり出した。高い商品だけでなく、安い商品にも良品がたくさんあり、しのぎを削っている国だから、手の届く商品でもあれこれ迷ってしまうのだろう。
■筆者プロフィール:浦上早苗
大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。
■筆者プロフィール:浦上 早苗
1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。SNS:WeChat「sanadi37」、Facebookはこちら(※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。)ブログはこちら
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