大規模な「放生」が続発=信者から金集め、動物を自然に放して生態混乱―海南省

Record China    2018年2月16日(金) 20時30分

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海南省で大規模な「放生(ほうじょう)」が続いている。捕らえられた動物を自然に放すことで功徳を積む行為だが、実際には生態系を混乱させている。僧侶と称するグループが信者から金を集める手段にもなっているという。写真はカメ。

中国メディアの澎湃新聞は14日、海南省で大規模な「放生(ほうじょう)」が続いていると報じた。捕らえられた動物を自然に放せば功徳を積めるとする仏教信者による行為だが、実際には生態系を混乱させている。僧侶と称するグループが信者から金を集める手段にもなっているという。

記事によると、「南海福慧放生供僧群」の名で、インターネットを通じて放生の実施が通知されていたことが分かった。同通知には「善行は難しくないが続けることは難しい」「3年間堅持すれば、諸悪が消える」「放生が、仏を念ずる助けになる」などとして、「無上の殊勝な功徳により、西方の極楽世界に向かうことになる」などと書かれていた。

南海福慧放生供僧群は公式ブログを開設しているが、15日午前8時(日本時間)に確認したところ、特定のメンバーしか閲覧できない状態だった。

澎湃新聞によると、海南省海口市のボランティア関係者は、同市で最近、大規模な放生が違法に実施されていると述べた。放されている動物には、国家2級保護動物に指定されているマイタイなど、各種のウミガメも含まれている。放生はほとんど毎日実施されているとの証言もある。

2月8日の放生では実行メンバー約20人が「南海福慧」と書かれている船2隻に分乗して沖合いに出た。武装警察はいったん、停船を命じて調査したが、放生を阻止することはなかったという。メンバーは海中に生き物を投じたが、すでに死んでいる場合もあったという。同日には、それ以外にも放生を行うグループがあり、水生生物1000匹ほどが海中に投じられたとみられている。

放生に用いる動物は、何らかのルートで購入してきたものだ。信者は「自分の功徳として放生する分」として、金銭を拠出する。澎湃新聞は、南海福慧放生供僧群が作成したとみられる2015年6月3日から6日までの「放生記録表」を入手。放生した動物の種類、数量、さらに単価や売上高が記載されている。

最も高いのは「中型海亀」で単価は3500元(約5万9000円)。売上高が最も多かった6月5日は52万2785元(約880万円)と記載されている。澎湃新聞は放生が盛んに行われている背景に、利益を取得するための「産業チェーン」が形成されていると論じた。

澎湃新聞はさらに、南海福慧放生供僧群の記録表に記載されている動物には人工繁殖ができないものがあることから、放生には捕獲された野生動物が用いられているとの見方を示した。だとすれば放生は、「野生動物を捕獲する」ことを促す行為ということになる。しかも、捕らえられて死んでしまう動物も多く、本来の生息場所とは異なる場所に放つので生態を混乱させている。

放生が生態環境に悪影響を与えているとの声はかなり前から存在し、2017年1月1日に施行された改正「野生動物保護法」は「野生動物を野外環境に放生する場合には、放生場所で野外に生存する現地の生物種に適合する選択をせねばならない」(第38条)と定めた。しかし実際には、「問題ある放生」は続発している。

中国では、宋代(960−1279年)には放生が盛んに行われるようになったとされる。北京市でも戦前は放生用の魚を売る店や、放生するための専用の池もあった。共産党政権になってから放生は行われなくなったが、仏教信者や信仰活動の増加と同時に、2000年ごろからは改めて盛んになった。2017年9月には、湖南省長沙市内の公園で毒蛇のコブラを放生したとして、男1人が処罰された。

日本でも、亡命系チベット人僧侶や中国人信者からなるグループが時おり、放生の活動を行っている。(翻訳・編集/如月隼人

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