Record China 2018年2月5日(月) 7時30分
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朝鮮半島情勢に詳しい木村幹神戸大教授が「文在寅政権下の日韓関係」と題して日本記者クラブで講演した。文政権の外交は「二の次」かつ「場当たり的」と分析。日韓合意見直しは文政権が自ら解決する姿勢を示したものでなく、日本に解決策を考えさせるものと指摘した。
2018年2月1日、朝鮮半島情勢に詳しい木村幹神戸大教授が「文在寅政権下の日韓関係−国際環境の変化とその影響」と題して日本記者クラブで講演した。文在寅政権の「慰安婦合意見直し」を巡って日本の報道では「文在寅は支持率の底上げのために、慰安婦問題を提起した」と、明らかに間違った通俗的な説明がなされたと批判。昨年12月末から1月初旬の段階での文在寅の支持率は極めて高く「支持率底上げ」の必要はないと指摘し、韓国民の大きな関心は国内問題であり、「対日関係の問題提起で支持率はほとんど動かない」と強調した。
また文在寅政権の外交は「二の次」かつ「場当たり的」と分析。日韓合意見直しは文政権が自ら解決する姿勢を示したものでなく、日本に解決策を考えさせるものであると指摘した。その上で、「相手が深い思惑を持っていると考える日韓関係は終わり、一喜一憂しないことが大事」と提言。韓国政府は対米、対中外交を重視しており、「韓国は日本を重要視している」との前提は通用しないと強調した。木村教授の発言要旨は次の通り。
<慰安婦合意を巡る問題>
文在寅政権の慰安婦合意見直しを巡って日本の報道では「文在寅は支持率の底上げのために、慰安婦問題を提起した」との明らかに間違った通俗的な説明がなされた。昨年12月末から1月初旬の段階での文在寅の支持率は極めて高く、「支持率底上げ」の必要はない。そもそも対日関係の問題提起で支持率はほとんど動かない。
文在寅大統領は今年の新年記者会見で「基本的に慰安婦問題は、真実と正義の原則によって解決されるしかないと考える。日本がその真実を認め、また、被害者のハルモニ(おばあさん)たちに対して心を尽くして謝罪し、またそれを教訓にしつつ、二度と同じことが繰り返されないように、国際社会と努力していく。そうして初めてハルモニたちも自らが受けた被害に対し許しを与え、日本を許すことができる。それこそが真の完全な慰安婦問題の解決だと考える」と言明した。この発言には(1)政府としては再交渉を要求しない(2)しかし、この合意では慰安婦問題は解決しない(3)その解決とは元慰安婦が謝罪を受け入れることである(4)ゆえに日本が「自主的に」その為の努力を行う事が重要であると期待する―という「明確なロジック」がある。
1月9日に韓国政府が発表した日韓慰安婦合意に関する新方針は2015年末の日韓合意について、「日本が自ら国際的な普遍的基準に基づいて真実をありのまま認め、被害者の名誉・尊厳回復と心の傷の治療のための努力を続けてくれることを期待。被害者が望んでいるのは自発的かつ真の謝罪だ」と指摘している。
文政権が自ら解決する姿勢を示したものでなく、日本に解決策を考えさせるものである。相手が深い思惑を持っていると考える日韓関係は終わり、一喜一憂しないことが大事である。
<南北対話と平昌五輪>
通俗的説明として、文在寅政権は「(北朝鮮に従う)従北左派」と言われるが、北朝鮮よりも遥かに対話に前向き。北朝鮮との対話は「アメリカの意思に反する」との見方があるが、実際には、文在寅政権は対話に向けて、米国からの了承は何度も取り付けている。
文在寅政権にとっての南北対話は「米朝対立下での戦争回避の為の手段」であり、「進歩派のアイデンティティ」でもある。10年間の保守政権時に失われた北朝鮮との対話のチャンネルを作り直すことを目指し、韓国の進歩派民族主義者として、民族の問題に関わる主導権を民族の手に取り戻すことを志向している。問題は国民が期待通りに「乗って」こないことである。
南北対話と北朝鮮の平昌五輪参加は韓国国民に歓迎され支持率はアップしたが、南北合同チームには反対意見が強い。努力してきた選手たちが出場できなくなるのはかわいそうという世論が強い。
文在寅政権の外交の前提としての二つの「教訓」を持つ。すなわち(1)盧武鉉政権期に米国と対立した経緯から米国から見放されるかもしれない、という恐怖、(2)朴槿恵政権期の外交的破綻=国力を過信した結果、米中両国からの強い圧力を受けたこと―である。この結果、対米、対中外交を重視。「米国との慎重なセットアップ」と「中国への拙速な接近の自重」が、外交全般の「慎重姿勢」につながっており、(親北朝鮮融和策を一方的に進めた)盧武鉉政権との違いと言える。
<文在寅政権にとっての日本>
李明博政権のころから、韓国で日本の重要性が低下、「韓国は日本を重要視している」との前提はもう通用しない。韓国貿易における日本のシェアの低下や軍事費の規模が日本に近づいてきたことなどが影響している。日本が持つ米政府への影響力は外交上のカードになりうる。
韓国国民の圧倒的関心は国内事象であり、外交は二の次。「外交の基本方針」を明らかにしていない文在寅政権はよく言えば柔軟だが、「場当たり的」とも言える。(八牧浩行)
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