八牧浩行 2010年4月9日(金) 7時17分
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近年の日中交流の深まりとともに、来日する外国人のなかで中国人の観光客が増加の一途。日本では「今年の外国人観光客1000万人」達成を目標に官民一体となった観光キャンペーンが展開されている。写真は東京・秋葉原の家電量販店に掲げられた中国語案内板。
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近年の日中交流の深まりとともに、来日する外国人のなかで中国人の観光客が増加の一途。日本では「Visit Japan Year 2010」のキャッチフレーズの下、「今年の外国人観光客1000万人」達成を目標に官民一体となった観光キャンペーンが展開されている。世界的な経済不況で外国人観光客が減少するなか、中国人観光客だけが増加しており、日本各地の売り込みも熱を帯びている。
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東京・銀座の目抜き通りに観光バスが次から次に停車し、中国からの観光客がデパートやブランドショップに吸い込まれていく。どの客も両手に大きな買い物バッグを抱えてバスに戻ってくる。秋葉原の家電量販店も大賑わい。カメラや炊飯器が人気で、100万円分をまとめ買いするケースもあるという。
行政と民間が一体となって取り組み工夫すれば飛躍的な伸びにつながる。千葉県木更津市では中国からのホテル宿泊客は2004年にわずか100人規模だったのが08年に1万人を突破、09年には3万人近くに急増した。ここ数年、同市は北京、上海で観光キャンペーンを展開、「木更津の宿泊費は都内に比べかなり安い。都心や成田空港や羽田空港にも近く日本全国に行くのが便利」とアピールしたのが功を奏したという。北海道・知床でも09年の中国人観光客は前年の3倍に達した。
日本人の愛好者減少にあえぐゴルフ場やスキー場も中国富裕層に目を向ける。九州の福岡、長崎などの港では、中国発の東シナ海クルーズ船の誘致に懸命だ。赤字を抱える全国各地の地方空港も中国からの観光客を狙った路線開設やチャーター便運航に力を入れる。中国国内ドラマのロケ地になると、中国人観光客の人気スポットとなり観光地としてアピールできるので、全国各地の自治体がドラマ制作会社に積極的な売り込みを図っている。
数十万円の人間ドック費用もいとわない富裕中国人
中国の富裕層をターゲットにしたビジネスはとどまるところを知らない。各地の医療施設では、メディカル・ツーリズムの振興に躍起となっている。豪華旅館やホテルとタイアップし、「人間ドック」ツアーを展開、MRI(磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する検査。病巣を発見しやすい)やPET(陽電子検出を利用したコンピューター断層撮影技術。がんの診断をする)などの最新機器を使用する。これら機器は高額なので運営コストがかかるのが難点だが、空いた時間帯に活用してもらえば安定経営に寄与すると期待されている。中国の格差社会を背景に生まれた富裕層は数十万円の費用もいとわず、水準の高い日本の病院施設での検診を望んでいるという。
政府は観光庁まで創設し、「2010年に訪日外国人1000万人」を目標にしているが、世界景気の低迷もあって昨年は700万人の大台も割り込んだ。韓国人や台湾人が前年比3割前後も減少している中、中国からの観光客だけが100万人と増加した。このため日本政府は中国人に的を絞り官民挙げた誘致キャンペーンを展開。2020年には訪日中国人が600万人に上ると期待している。
中国では高度成長が続き、富裕層が急増していることに加え、日本政府が昨年7月に個人客にも条件付きで日本への観光ビザ発行を開始したため出国しやすくなったことも要因だが、中国人にターゲットを絞った各地域の官民が熱心な誘客を行っていることも寄与しているようだ。日本の10倍もの13億人の人口を有する中国からの観光客争奪戦は日本だけでなく欧米地域も加わって激しさを増すばかりだ。(筆者・八牧浩行) <巨象を探る・その4>
<「巨象を探る」はジャーナリスト・八牧浩行(株式会社Record China社長)によるコラム記事。=Record China>
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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