Record China 2009年10月22日(木) 10時7分
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09年10月、台北市にある国立故宮博物院で、中台60年の歴史の中で初めて北京側の収蔵品を台湾に貸し出して清朝皇帝「雍正帝」の特別展が合同開催されている。写真は入り口の案内表示。
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2009年10月、台北市にある国立故宮博物院で、中台60年の歴史の中で初めて、北京側の収蔵品を台湾に貸し出した清朝皇帝「雍正帝」の特別展が合同開催されている。14日、十数年ぶりに台湾を再訪し同展を見てきた。
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▼十数年ぶりの再訪でレストランの特別メニューに興奮
美術品数60万点以上、すべての所蔵品を見るには何年もかかるという台北の故宮は07年2月に新装オープンしてまだ3年に満たない。
特別展以外の所蔵品にも目移りするのだが、特に目玉である二つの清代の翡翠、「翠玉白菜(白菜の形)」と「肉形石(紅焼肉の形)」には興奮し、隣接の新しいレストランで似た形に調理した特別メニューを注文し記念撮影したほどだ。
さて目的の特別展は、メディアによって「台湾海峡両岸初の合同展」として大々的に紹介されてきた。だが、いざ現地に行ってみると、政治的に微妙なことを避けたものか、ポスターにも入り口にも特にその点に関する大々的な紹介文はない。個々の展示品にも大陸からの出展を強調した解説はなく、「普通に他館の所蔵品であることが記載されている」(インフォメーションデスク)だけだった。
しかし、普段から同博物館に通っている旧知の台北市民は「そんなもの書いてなくても分かるから、今回は大陸から出展された品だけを見に行った」と語り、別に大げさに強調しなくても構わないという落ち着いた反応だった。
にぎやかな様子が目に飛び込んできたのはむしろ、このほど解禁された大陸からのツアー客たち。車寄せには団体バスが横付けされ、ガイドと一緒に大人数が館内をめぐりミュージアムショップでお土産購入に励んでいた。
特別展のために北京の故宮から来た品目では、日本の漆器に刺激を受けて中国で作られたらしい、薄い風呂敷で包んだように見える金彩の品が面白かった。中台合作展における思わぬ「日本」の登場で、日本からの観光客も現地ガイドの案内に、「面白いね」と足を止めて見入っていた。
かつて国民党が大陸を去るに当たり、厳選して持ち出した皇帝に伝わる名品ぞろいだけに、台北故宮の所蔵品の質は高い。日本や英仏などでみたものにもかつて紫禁城から略奪された名品が含まれていたはずだが、やはり台北のものは総じて細やかな造作が丁寧に作り込まれ、保存状態も極めて良いように見受けた。
日本語のオーディオガイドを聞きながら半日いても見飽きぬ量と質で、心を残しながら台北を後にした。
▼殺到する大陸からの観光客、台湾の人民元獲得源にも
新装なった台北故宮は、平日でも大陸からの観光客だけではなく小中学生なども含め大勢の入館者の活気にあふれていた。週末には無料入館日も設定されており、多くの来館者を受け入れようという姿勢はロンドンの大英博をも彷彿とさせる。展示品の照明も、薄暗くてよく見えない一部の日本の国立博物館とは違って、見やすい十分な明かるさが保たれていた。4階にある軽食・喫茶レストラン「茶芸館・三希堂」は中華風の清潔で落ち着いた内装で、周囲も360度見渡すことができ、週末には楽器演奏もあるなど、少しでも来館者を引き込もうという館の姿勢が伝わってくる。
9割が皇帝の所蔵品だった質の高さに支えられ、中台の関係が安定していれば今後とも大陸からの観光客は増え、台湾にとって貴重な人民元獲得源としても期待できそうだ。ちなみに桃園空港に故宮の出店があったのはそうした外貨収入源としての期待の表れだろう。
条件が整えば、次は「世界の4大博物館」ともいわれる台北の故宮が貸し出す名品を使って、「世界文化遺産」である北京の故宮において開かれる合同展を見るのが楽しみだ。まだ先かもしれないが、その時、台湾海峡にある要塞・金門島と並んで中台の分裂を象徴する存在である「二つの故宮」が中台関係改善の象徴的な存在となろう。
以前にも紹介した通り、「二つの故宮」はそれぞれ、英語ばかりか日本語版の解説もホームページで展開し日本の観光客への対応にも努めている。現地の日本語ガイドには故宮の専門家もいるので、台北を訪問する機会があれば、ゆっくりと「二つの故宮」の名品を鑑賞することをお勧めする。(文章:Kinta)
■プロフィール Kinta:大学で「中国」を専攻。1990年代、香港に4年間駐在。2006年、アジアアートに関する大英博物館とロンドン大学のコラボによるpostgraduateコース(1年間)を修了。08年「このごろチャイナ」を主体とした個人ブログ「キンタの大冒険」をスタート。
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