<このごろチャイナ・アート&A>前衛芸術と現代の水墨画―中国・コラム

Record China    2008年11月7日(金) 9時55分

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「このごろチャイナ・アート&A」は最近の中華圏における「アートそしてアーキオロジー(考古学)」に関する動きを、レコードチャイナの写真ニュースを軸にして紹介。不定期配信。今回は「前衛芸術と水墨画」について。写真は海容天天氏のパフォーマンス。

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2008年11月

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■前衛芸術の製作・パフォーマンスに活気〜大衆は「わいせつ」に過敏

近年、中国でも西洋的な前衛芸術の製作・パフォーマンスが活気を帯びている。

レコードチャイナでは、過激なパフォーマンスアートの海容天天(ハイロンティエンティエン)氏による全裸パフォーマンス(2008年10月)、也夫(イエフー)氏による美術館の外壁上の鉄製カプセル内生活を半年間公開する「人間ミノムシ」(08年3月)、著名芸術家・田太権(ティエン・タイチュエン)氏がプロデュースした四川美術学院の前衛芸術展示会(テーマ「注目・行為」、07年7月)などを紹介してきた。

このうち海容天天さんのパフォーマンスには地元で非難が殺到する一方で、「中国の一般大衆は『わいせつ』に対してあまりにも敏感。それが法律や道徳に触れない限り、寛容の精神で見てほしい」と理解を示す著名な芸術評論家のコメントも寄せられた。

日本でもそうだが、「エロか芸術か」という古くて新しい論争が中国でも続いている。隠すからいやらしく感じるわけで、つい先日、日本のテレビで報道していたある南洋の島における生活では女性もみな上半身裸でふつうに生活しており、バストトップなども全然わいせつには感じなかった。前衛アートの性的な面ばかり注目するのはメディア側、ひいては一般の視点を反映しているが、前出の田氏は「前衛芸術は人々の注目をひけば成功」とコメントしており、そんなおおらかさがいい。

 あまり前衛ものに縁がなかったが、中国アートでは、日本のアニメキャラを使ったようなコスプレ実写フィルムに仕立てたアジアハウス(ロンドン、1996年に設立、http://www.asiahouse.org)でのある小規模な展示(06年)が印象深かった。「日本のアニメが嫌日感情の強い中国の若いアーティストに受け入れられ、遠く欧州でこうした形でアジア関係者に公開されているんだ」という感慨があった。

文化・芸術に敏感なフランスでも日本のアニメ、マンガは一定の評価を得ているというが、ロンドンでも一般書店で日本の漫画の英訳版が結構高い値段で売られていた。世界でもオタクやアーティストは仲間だな、とその一体感をほほ笑ましく思った。

 横道にそれるが、英国ではアジア関係で中国ウィークなどというイベントがあって大々的に展示会などを展開するほか、ロンドン大学のSOASなどではよく無料で専門家らによる小講演などを行っている。日本関連でもジャパンファウンデーションがアート系のイベントを行っており、これは日本資本のひも付きという偏りはあるが、欧州で日本やアジアがどう見られているのか、という視点を確認するにはいい。旅行の際でも時間があれば立ち寄ってみてもいいかも。

■現代水墨画への再評価〜「裸婦のいる水墨画」「日記や私小説のように」

「前衛」に分類するのが適当ではないかもしれないが、中国画の世界に「現代女性ならではの視点と極めて私的な感覚や閃き」を盛り込んだという画家ジン・ウェイホン([革斤]衛紅)の新鮮な作品が、レコードチャイナの「週末美術館」で紹介されている。

「洗練された技巧を拠り所に、伝統芸術の世界に新境地を切り開き」、現代水墨画への再評価を導いた、という。ジンさんの作品に厳しい内容が多かった日本のウェッブ上の感想の一つは「水彩画にみえる」と指摘していたが、一般に白黒ではない着彩のものも水墨画に分類可能だから、新しさは別のところにある。

 もう一人「まるで日記や私小説のように日常生活に潜む抑圧や焦燥感を描く現代水墨画家」とされる李津さんの作品もとてもおもしろい。

 

約千年前に生まれた「華北の雄大な自然に根ざした新しい山水表現」(奈良市の大和文華館のホームページから)とも形容される伝統的な水墨画と、見比べると両者との違いは嫌というほどわかろう。まず山水ではなく人物主体(しかも「裸婦のいる水墨画」!)だが、風景の一部として調和する印象が強い伝統的なそれと異なり、ジンさんの作品は西洋式の裸婦、中でもムンク的印象を与える描写だ。

(ちょうど大和文華館では08年10月11日〜11月16日、巨匠・李成の「喬松平遠図」から、清代にいたるまでの中国山水の名品を「特別展 崇高なる山水 中国・朝鮮、李郭系山水画の系譜 」で展示中)

もっとも日本における水墨画の評価は、本場中国のそれと少しずれる場合があるので、あまり日本人的な評価・感性を絶対と思わない方がいい。大ヒットした日本の美術コミック「ギャラリーフェイク」シリーズの中のあるパートを読んだ時も驚いたが、「牧谿(もっけい)、梁楷、玉澗などは中国本国よりも日本で評価の高い画家である」(フリー百科事典ウィキペディアの「水墨画」の項)という。どちらが世界基準かは分らないが、日中はそれほど評価の基準が違う。(文/Kinta)

■プロフィール Kinta:大学で「中国」を専攻。1990年代、香港に4年間駐在。06年、アジアアートに関する大英博物館とロンドン大学のコラボによるpostgraduateコース(1年間)を修了。08年「このごろチャイナ」を主体とした個人ブログ「キンタの大冒険」をスタート。

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