<コラム>中国問題で揺れるオーストラリア(1/2)発端は南シナ海問題、豪首相が中国の「世論工作」を批判

如月隼人    2017年12月22日(金) 19時0分

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中豪関係が険悪化している。中国からオーストラリア政界に対する献金問題が発端となり双方が批判を応酬。オーストラリアのターンブル首相は、故毛沢東主席の建国宣言をパロディーのように使って、中国を批判した。資料写真。

中国とオーストラリアの関係が険悪化している。最初の兆候は、オーストラリアが11月23日に14年ぶりに発表した外交白書だった。

同白書は、中国による自国の鉱物・エネルギー資源への需要が自国経済や国民生活の向上につながることなどを認める一方で、南シナ海問題などでは「中国は米国の地位に挑戦している」「中国は彼らの主義に基づいた地域の秩序を強化しつつある」などと中国に対する警戒を示した。

中国とベトナムやフィリピンが対立している南シナ海の島について、オーストラリアは領有権を主張していない。したがって「中立」の立場だ。しかし、中国の「現状変更」については警戒する姿勢を続けている。その意味で、「白書」に新たな主張を盛り込んだわけではないが、「オーストラリアが政府白書で中国に警戒を示した」として注目されることになった。

中国外交部の陸慷(ルー・カン)報道官は同日の記者会見で、白書全体としては中国の発展と中豪関係を積極的に評価していると述べた上で、「南シナ海の問題で無責任な言論をやめるよう促す」などと不快感を示した。

次の大きな出来事は、オーストラリア政府が12月になり「外国勢力」が自国政治に影響を与えることを阻止する動きを本格化させたことだった。ターンブル首相は5日、「外国勢力が(オーストラリアの)政治プロセスに影響を与えようとして、これまで前例のない、ますます巧妙な工作を行っている」「中国の影響について懸念すべき報告がある」と指摘した。

中国外交部の耿爽(グン・シュアン)報道官は5日の定例記者会見などで、「オーストラリアの関連する人々に偏見を捨てることを督促する」「中国側にオーストラリアの内政に干渉する考えはない。政治献金を通じてオーストラリアの国内政治に影響を与える考えもない」と反発した。

耿報道官は8日の定例記者会見で、ターンブル首相の発言と同発言を支持したオーストラリア議会を「一部メディアの無責任な報道に、無原則に迎合するもの。中国に対する偏見に満ちている」などと批判。

するとターンブル首相は9日、故毛沢東主席の建国宣言のひとつをパロディーのように用いて「澳大利亜人民站起来了(オーストラリア人民は立ち上がった)」と中国語で述べ、中国の自国政治への影響力行使を阻止するのは、自国の主権問題との考えを示した。

同発言を受け、陸慷報道官は11日の記者会見で「中国はオーストラリアの指導者の発言に関心を持っている。オーストラリア側の一部の人に対して、自らのイメージと中豪関係を損ねるような発表はやめるようお勧めする」などと反発した。

中国でも毛沢東主席に対しては、1950年代の大躍進で大量の餓死者を出し、60〜70年代の文化大革命で国を大混乱させたなどとして批判はある。共産党自身も、文化大革命について「毛沢東が誤って発動」などと認めている(1981年、「建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」)。

しかし中国共産党は毛沢東の生涯全般については、新中国を成立させた「功績が第一」であり、その後の失敗についての「誤りは第二」との見解だ。毛沢東の建国宣言をパロディーのように使われたのでは、建国そのものが侮辱されたようにも感じるだろう。まして、中国人自らが毛沢東を批判するのと、外から茶化されるのでは、受けとめる感情は違ってきて当然だ。陸報道官の「自らのイメージを損ねるような発表」の言い方には、ターンブル首相の発言に対するいら立ちが感じられる。(続く)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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