<羅針盤>AI・高齢化時代が到来、さらに輝く生(なま)音の魅力―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2017年9月24日(日) 4時50分

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先日都内のホテルで「日本オペラ振興会ファンの集い」が開催された。この会は藤原歌劇団・日本オペラ協会主催で形成している日本オペラ振興会の主催。若手からベテラン70数人が出席、多くのファンを前に、オペラの主要アリアなどを歌った。

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先日都内のホテルで「日本オペラ振興会ファンの集い」が開催された。この会は藤原歌劇団・日本オペラ協会で構成されている公益財団法人日本オペラ振興会主催で年に一度開催されている。振興会所属の歌手1000人余のうちから若手からベテランまで幅広く70数人が出席、多くのファンを前に、オペラの主要アリアなどを歌った。

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新進気鋭の音楽家と愛好者たちが温かい雰囲気の中で交歓し、「カルメン」「椿姫」「セビリアの理髪師」「夕鶴」などのおなじみのアリアや重唱が次々と披露された。曲の合間に歌手と聴衆の当意即妙の掛け合いが爆笑を誘い、楽しいひと時であった。

私は日本オペラ振興会の常務理事として以前からお手伝いしているので以下のように挨拶した。

近年AI(人工知能)とロボット技術の世界は目覚ましい進歩を遂げており、AIが将棋や碁の世界で一流プロを凌駕するケースも出ています。今後10〜20年で、今存在するさまざまな仕事が自動化され、人間の仕事の領域が狭まるとも考えられています。

音楽の世界でも、音響技術が急速に進歩し、臨場感のある大迫力スピーカーだけではありません。最近AIスピーカーなるものまで登場しています。これはインターネットに常時接続され、話しかけることでAIの音声アシスタントと対話できるというから驚きです。

しかし、何ごとも生(なま)の迫力に勝るものはないでしょう。ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンなどの朗々とした声や、ピアノ、ヴァイオリン、フルートなどの繊細な音色も、直接劇場で聴いてこそ心に迫り、感動を呼ぶのです。

話は変わりますが、厚生労働省によると、日本で100歳以上の高齢者が9月1日現在で、昨年に比べて2132人増加し6万7824人となり史上最多を更新しました。今後ますます増え続けるとのことです。

日本では世界に例を見ない速さで高齢化が進行しています。2025年には、いわゆる団塊の世代すべてが75歳以上となり、後期高齢者が全人口の5人に1人を占めるようになるとのことです。1人ひとりの健康寿命を延ばしていく必要があります。このことは、よく言われているように、余生も長くなるということです。

この点、音楽は人々の心を豊かにします。老化予防に効果があるとされ、人々の生きがいを向上させることができます。

AIやロボットが活躍する世界が到来しても、人間が紡ぐ歌や音楽に置き換わることはできません。高齢化社会なればなるほど、生の音(おと)が貴重なものになることでしょう。

AIやロボットが主役で人間が脇役になる世界は人間の尊厳を否定することになりかねないだけに、人間のみが持つ感性を生かして音楽、舞踊、演劇、美術や文学など芸術を自らつくり楽しむことで、長い余生を過ごすことが必要ではないでしょうか。

<羅針盤篇20>

  

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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