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<コラム>日本ではすっかり影が薄くなった行事、中国では非常に重要

曽賀 善雄    2017年9月23日(土) 18時0分

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暑かった夏がようやく過ぎたと思ったら、もうすぐ中秋の名月。旧暦の8月15日(ちなみに2017年は10月4日)は、十五夜の名月を愛でながら秋の豊作を祝う行事です。写真は月餅。

暑かった夏がようやく過ぎたと思ったら、もうすぐ中秋の名月。旧暦の8月15日(ちなみに2017年は10月4日)は、十五夜の名月を愛でながら秋の豊作を祝う行事です。日本ではすっかり影が薄くなった行事ですが、中国では春節(旧正月)や端午節(旧暦の5月5日)などと並んでとても重要な行事で、国家祝日にもなっています。

この日には普段は離れて暮らしている家族も実家に集まり、円形の食卓を囲んで、久々の一家団欒を楽しむそうです。家族を大事にする中国人にとって、一家円満の喜びを満喫するおめでたい伝統行事ということでしょうね。

中秋節を祝う習慣は3000年以上の歴史があり、中国にいるとその深さに圧倒されます。この時に食べる「月餅」も丸い形をしていて、満月と同じ「円満」を意味します。元々は素朴で日持ちのするお菓子であったのですが、経済成長と共に中にアワビなどが入ったものなど年々豪華になってきたようです。

ということは、長い歴史の中で続けられてきた中秋節も、現代中国では大事な人脈への付け届けをする恰好の行事として活用(?)されるようになりました。近年は、ひと月以上も前から月餅のプロモーションが始まり、会社でも社員贈呈用と顧客に贈呈するやや高級のものを注文し、それぞれに配るのが恒例となっていて、季節感を感じることができます。

社員に配るといってもあまりに安物では会社のメンツに影響します。「そこそこ」の月餅に決めても、社員が200人、300人となると経費も馬鹿になりません。また、税務当局から課税対象にするといった動きもあり、伝統行事もずいぶん世知辛くなったものです。

また、特にお世話になった顧客には、少し高級の月餅を贈ります。ただ、中国は個人主義ですから、実際には、お世話になった得意先の担当者や役職者の方など個人に贈ることになります。

ある年のことです、「あの人がもらって、何故私にはないのか!」というクレームをつけられたことがありました。昨年はもらったのになぜ今年はないのか、など、よくよく注意しないと、せっかくの気持ちが仇になってしまうことになってしまいます。たかが月餅、されど月餅、といったところでしょうか。

ところで、この季節になると、私が中国で仕事を始めて何年か経過したある年の中秋節の直前に、地方政府の方と食事をしたことを思い出します。

彼は最初のあいさつで「今日は双喜臨門だ」と言うのです。いわく「まもなくおめでたい中秋節で、なお且つ今日はあなた(私のことです)にお会いでき、共に食事をすることができました。二つの喜ばしいことが同時にやってきた」と。なんとまあ、歯の浮くようなお世辞です。ことほど左様に中秋節はとても大事な伝統行事ということですね。

人々の間では、会社から、親戚、知人から…と色んな人から月餅をもらいます。と同時に他所からもらった月餅をお返しに持って行ったりしますので、この中秋節前の1カ月ほどは月餅が人と人の間を次々に回っているのです。たくさんもらっても、そんなに食べられるわけではないので、家族で食べる分を残してそれ以外は他の人に回すという庶民感覚ですね。

中秋節は別名「団円節(だんえんせつ)」、まん丸でどこも欠けていない満月は「円満・完璧」の象徴と考えらえているそうです。中国での普段の生活や仕事の中では、ある場合はテキトーであり、ある場合は歪んでいたり、完璧なものなど求めるべくもありません。だからこそ、人は「円満」を求めるのかもしれませんね、3000年も昔から。

意のままにならない中国ビジネスが、少しでも「円満に」推移してくれれば、という願いを込めて中秋の満月を愛でたいと思います。中秋節快楽!(中秋節、おめでとう!)。

■筆者プロフィール:曽賀善雄

1949年和歌山県生まれ。1971年大手セキュリティサービス会社に入社。1998年6月、中国・上海のグループ現地法人の総経理(社長)として勤務。2000年4月から13年近くにわたり中国・大連の現法で総経理(社長)として勤務。2013年1月に帰国、本社勤務を経て2014年7月リタイア。

■筆者プロフィール:曽賀 善雄

1949年和歌山県生まれ。1971年大手セキュリティサービス会社に入社。1998年6月、中国・上海のグループ現地法人の総経理(社長)として勤務。2000年4月から13年近くにわたり中国・大連の現法で総経理(社長)として勤務。2013年1月に帰国、本社勤務を経て2014年7月リタイア。

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